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オープンイノベーションの成功確率を上げる方法

デジタルソリューションを乗りこなせ! 新規事業開発との向き合い方No.4

2019/04/05

オープンイノベーションの成功確率を上げる方法

昨今、大企業の新規事業開発の現場では、オープンイノベーション(社外のパートナーの知識や技術を取り込んだビジネス開発手法)が非常に注目を集めています。

オープンイノベーションを有効活用できれば、自社の現業では日の目を見ていない資産を活かせたり、今までなかった発想や視点をパートナーからもらえることもあります。

また、事業成長という観点でもさまざまなメリットとポテンシャルがあります。
例えば「自社単体では参入できない魅力的な市場」に、「通常の生産活動の延長ではつくれなかったプロダクトやサービス」を生み出して参入することも考えられます。

今回は、筆者自身の経験から見いだした、オープンイノベーションの成功確率を上げる方法を一部ご紹介します。

<目次>
戦略整理で大切な五つの項目
電通のオープンイノベーションの取り組み事例

 

戦略整理で大切な五つの項目

オープンイノベーションは、これまで協業してこなかった社外との協業であり、なおかつ新規事業です。

それを実際に成果を出すレベルで取り組むためには、社内外の多くの人を動かし、協力を得る必要があります。

この社内外調整で大切なことは、説得力を持つこと。そこで、関係者(ステークホルダー)を説得するための基本的な方法をお伝えします。

まず、オープンイノベーションの一般的な流れは、以下のように整理できます。

① 戦略整理

②(承認)

③ パートナーとのマッチング

④ プロトタイピングやPoC (Proof of Concept=概念実証)

この流れの中で、説得力を持ち、事業を成功させるために圧倒的に重要なのは、①の戦略整理の部分です。

事業計画書に記載する事業戦略に必要な基本項目は、MBAや経営学の一般的な書籍・参考書に記載があるので割愛します。今回は特にオープンイノベーションで重要な「戦略整理」の5項目を共有します。

その項目は、①市場を狙う意義、②リソース状況の明示、③期待値の調整、④事業のオープン度合いの擦り合わせ、⑤文化の相互承認、の五つです。

戦略整理で重要な5項目

① 市場を狙う意義
・自社の経営理念やビジョンから、その市場および市場セグメントに参入することに、どういう意味があるか
・自社と市場の距離感はどのくらいか
・具体的に自社には何が欠けていて、どのようなシナジーがあるのか
・その製品やサービスはパートナーや消費者またはクライアントにとってどう魅力的なのか

② リソース状況の明示
・自社は何を資産として提供できて、逆にパートナーに何を提供してもらいたいのか。
・その製品やサービスがあると、自社にどういう競争力が生まれるのか

③ 期待値の調整    
・事業の各フェーズとゴールで、自社がどれくらいの経済的な便益と、どういうイグジット(投資資金回収手段)を狙っているか
・パートナーはどういう業務提携関係で、どういう商流で、どれくらいの経済規模をその提携に求めていそうか

④ 事業のオープン度合いの擦り合わせ
・他に良いパートナーや、入れたい会社が来た時に、追加参画やリプレースすることはありうるか
・パートナーにとっての競合避止を受け入れるか
・上記のような検討はどういう基準で行っていくか

⑤ 文化の相互承認
・自社の文化とパートナーの文化でコンフリクトはないか
・コンフリクトがあるならそれはどういう観点で、どういうリスクがあり、どんな対策ができるのか

成功確率を上げるポイントは、この5項目を全ステークホルダーに説明できる共通言語に変えていくことです。それによって、全関係者に自分ゴト化させることを目指していくのです。

そのためには、自社としての意思・目論見を持ちつつ、何を相手に価値提供できるかを徹底的に整理しながら考え抜く必要があります。

電通のオープンイノベーションの取り組み事例

最近、アジャイルな事業運営や新規事業立案スタイルも流行しており、それらも素晴らしい手法だと思います。しかし、オープンイノベーションに関しては、基本的にはパートナーがいる前提の仕組みです。OEMや知財購入、代理販売など既に全プロセスが定式化している枠組みを除き、立案に際して高度な戦略性が必要な手法であることが伝われば幸いです。

昨今、目的が十分に整理されていないアクセラレーションプログラムなど、手段が目的化した事例が散見されます。オープンイノベーションだからこそ、受け身であったり、ただ待っていたら良いアイデアが来て事業が作れるなどということはありえないのです。

精神論になってしまいますが、難易度とリスクがあることを自覚した上で、「新しい事業を自社に生み出すのだ」という強い決意や覚悟をマインドセットとして持っておくことは前提にあると思っています。

ちなみに、電通でも、プロジェクトチームをつくり、実施主体や最終目的/対象を変えて、さまざまなオープンイノベーションに関する取り組みを行っています。

電通グループのオープンイノベーション関連プロジェクト
(2019年3月現在)
BASE Q
大企業イントレプレナーの新規事業創出をオープンイノベーションで支援。イノベーション・ビルディングプログラムを展開する三井不動産とErnst&Young、電通の3社協業型プラットフォームビジネス

DENTSU JAM!
新事業や新産業の創発を支援する共創プロジェクト。外部パートナーと連携し、スタートアップ企業や異業種、競合関係にある企業など、複数の企業・団体を巻き込む「NtoN(多対多)モデル」での共創を推進する

GRASSHOPPER
スタートアップ企業の成長をクリエーティブ面を中心に支援。スタートアップと大企業との協業による事業共創など多角的に支援するアクセラレーションプログラム

NewsPicks Studios
NewsPicksと業務提携し、動画を中心としたポストテキストコンテンツの企画制作・プロデュース領域で協業

TANTEKI
スタートアップや大手企業の経営企画/事業開発を担当する方を対象に、「伝えたい事」を今まで伝えていなかった人にも「伝わる形」にデザインすることで、コラボレーションを支援するチーム

SPORTS TECH TOKYO
スポーツ×テクノロジーをテーマに、世界中から優れたスタートアップを募集。事業成長の支援と大手企業とのコラボレーションを促すプログラム。電通が主催する日本発のグローバル・オープン・イノベーション・プラットフォーム

オープンイノベーションラボ(イノラボ)
国内外の企業やベンチャー、大学などと共創し、さまざまな社会課題を解決すべく、技術シーズと世の中ニーズを組み合わせ、未来の都市や社会に実装を世界に先駆けて行う電通国際情報サービス(ISID)のテクノロジーブティック

共創イノベーションラボ
東京大学先端科学技術研究センターと電通デジタルによる、より良いオープンイノベーションの在り方を研究する共同組織

電通Bチーム
各分野で一流の“B面”を持った社員が集まり、正攻法“A面”では突破できない企業や組織のさまざまな課題や閉塞感を打破する方法=planBを提案する「オルタナティブアプローチ」チーム

電通グロースデザインユニット
スタートアップ企業向け事業成長支援サービスを体系化し、主にメディアやプラットフォーマー事業者向けの「360度事業支援サービス」を行う、事業成長支援の専門家からなる社内組織

電通グロースハックプロジェクト
事業設計からKPI/KGIのデザイン、運用に合った最適なツールやリソースの提供、ABテストなど細かい打ち手の分析・運用まで集客・課金・定着化といった内部改善をフルレイヤー/フルファネルで提供

電通ベンチャーズ
欧米・アジアなどの海外企業を中心にグローバルにベンチャー投資を行い、電通本体のリソースを活用したハンズオン支援・事業開発を通し、電通グループ自身のオープンイノベーションを推進するコーポレート・ベンチャーキャピタル・ファンド

※1:オープンイノベーションを目的として標榜していなかったり、メインソリューションではでないものでも、結果的に提供・実施しているものも含みます
 
※2:上記以外にクライアント企業に個別で受発注しているオープンイノベーション支援案件などは多数ありますが、それらは全て割愛しています


次回は、連載最終回。事業開発・ソリューション商品開発の現場や、オープンイノベーションの現場で役に立つ、デジタルテクノロジーの目利きを行うときに使えるフレームワークをご紹介します。