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ビッグデータは、広告会社にとって敵なのか?味方なのか?No.2

広告会社にとってのセンサー由来データの可能性

2014/01/28

前回に続き、センサー由来データのマーケティング活用と、その可能性についてお話しします。

私はセンサーデータこそがビッグデータ時代の象徴となるデータだと考えています。“ビッグデータ”時代には様々な種類のデータがあるわけですが、「モノの動き」と「ヒトの動き」に関するデータが「大規模なパネルデータ」もしくは「全数データ」として存在しています。この“モノ”と“ヒト”の動きのデータを組み合わせた(統合した)ものがビッグデータであり、その組み合わせから得られる新たな発見こそがビッグデータの価値だと考えています。

POUデータと顧客経験価値マーケティング

その中でセンサーデータは、「全数ベースのヒトの動き」を示すデータと言えます。これまでもマーケティング分析において、全数ベースの重要なデータとして「商品販売(Points of Sales:POS)データ」がありました。しかし現在、商品販売データに加えて、モノに搭載されるセンサーからヒトがモノをどのように使用しているかを示す「商品使用データ(Points of Useage:POU)」を収集することが可能となってきています。

このデータを用いて、昨今注目される「顧客経験価値(カスタマーエクスペリエンス)」をリアルタイムに定量化し指標を明確にすれば、事業へのフィードバックが可能になるのではないかと考えています。ここでは顧客経験価値についての説明の詳細は省きますが、ガートナーの「消費者の89%は、顧客経験価値が低いと、その企業から離れていく」という調査結果からも、プロダクトやサービスを通じて顧客にどのような経験を提供できているかを、このPOUデータを用いて”見える”化する仕組みが今後重要になります。

そのような取り組みは決して目新しい話ではなく、ある食品メーカーでは10年前から、商品パッケージの裏蓋にQRコードをのせてスペシャルサイトへ誘導してアクセス時刻を計測することで、消費者が商品を、お昼に、おやつに、はたまた夜食に、どのようなタイミングで食す経験をしているのかというデータを収集し、商品開発などにフィードバックする取り組みを行っています。

現在、安価となったネットワーク接続機とセンサーを、耐久財を中心とした商品に搭載することで、顧客がどのような場所・時間・頻度・用途で商品を活用・経験しているかというデータを、24時間365日収集して業務にフィードバックすることが容易になってきています。すでに、睡眠状態データを取得できるベッドや、走行履歴を取得できるナビを搭載した自動車などが市場に登場しています。

更には収集されたデータを用いて、企業ドメインでの新たなサービス開発や第三者事業体へのデータ提供といった、新たなビジネス創造も広がりを見せつつあります。

なおセンサーデータを顧客経験価値としてどのように解釈するかの事例は、後日ご紹介していきたいと思います。

 

ビッグデータとクリエーティブ

では、センサーから生成されるPOUデータなどの顧客経験にまつわるデータを、広告会社はどのように乗りこなせば、付加価値を生むことができるのでしょうか?

もちろんPOUデータ自体の解析や、データ生成から事業へのフィードバックまでの顧客経験価値マネージメント設計のコンサル業務もあるかと思いますが、特に広告会社が強みを発揮できるのは、やはり“表現”の領域なのではないかと思います。

顧客経験に応じたコミュニケーションを設計する際に、よりパーソナル化する間合いで顧客と適切な距離感を保ち、“不快さ”を感じさせないためには、“表現”が重要なファクターです。

例えば、流通各社が取り組むオムニチャネル戦略の一環として、アプリを通じた商品のレコメンド施策を行う際に、顧客のパーソナルデバイスであるスマートフォンに対して過去の購買履歴から“機械的”におすすめ商品情報だけを配信し続けてうっとうしがられるよりも、時にこれまでの購買傾向とはかけ離れた商品情報を配信し“あえて外してみる”。あるいは、実際の店舗でも実験的に導入されている“ストレスフリーショッピングサービス”の一環として、「Just Looking」バッグチャームを着けた来店客に対しては商業施設特有の声掛け接客を控える“おもてなさない、おもてなし”をするなどが考えられます。

パーソナルな間合いで顧客に踏み込み、適切な距離感を演出するには、最後は“表現”というクリエーティブの力が必要になります。

次回「ITベンダーと広告会社の業務提携の潮流からみえてくること」でも、広告会社に求められていることとして、このあたりの考えを補足していきたいと思います。