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セカイメガネNo.14

上海お見合い市

2013/08/21

毎週日曜日、上海人民広場の人民公園で不思議な市が催されている。市民が自発的に開くこの市は週を追うごとにますます盛況だ。

この日の人民公園は、いつもの3、4倍の人出だった。入り口付近は1000人以上の銀髪のお年寄りたちでにぎわっている。平均年齢は60代か。彼らは周到な準備を済ませてここにやって来た。

それぞれの手にはこの日のために作った独自の「ダイレクトメール」(DM)が握りしめられている。そのDMには年齢、収入、学歴、職種などが記され、まるで個人プロフィルだ。中には写真付きのものもある。何より大事な情報は相手に対する希望条件だ。例えば、「持ち家であること」「自動車を所有していること」。

ここは、結婚相手を探す「お見合い市」なのだ。参加するのは本人ではない。かわいいわが子のためにやって来た銀髪の父母たちだ。彼らの子どもは、「剰男剰女」である。中国の新語で結婚適齢期を過ぎた30代独身男女を意味する。

「剰男剰女」のほとんどが会社勤めのホワイトカラーだ。仕事が忙しいなどの理由で恋愛、お見合いの機会を疎(おろそ)かにし、生活を共にするパートナーをまだ見つけていない。

親とすれば、子どもが結婚する気になるまで待ってはいられない。毎週日曜、人民公園にやって来て、手にしたわが子のDMと無数の相手のDMを見比べる。わが子のユニークなセールスポイントをDMで強調し、独自性を競い合う。できるだけ早く理想の結婚相手を見つけてやれるよう、お見合い合戦に参戦する。そのにぎやかさが、市そのものなのだ。

ところで、私のオフィスにも仕事ができる「剰男剰女」たちがいる。彼らに「お見合い市」の話をすると、笑いが起こる。自分たちには関係ないというかのようだ。

ひとしきり笑った後で彼らはこう言う。「結婚の落ちこぼれも案外悪くないですよ。自由気ままに暮らせるし、子育てのプレッシャーもない。ただひとつ気がかりなのは、両親に顔向けできないことですね」

「剰男剰女」になることは、愛や結婚の意味を再認識する良い機会なのかもしれない。

(監修:電通イージス・ネットワーク事業局)