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テレビ史のハザマで、テレビを語るNo.3

2020/01/08

テレビ史ハザマ世代論

フジテレビの敏腕プロデューサーとして名高い黒木さんと、電通でチーフ・ソリューション・ディレクターを務める北風さん。異なるようで近しいフィールドで活躍するお2人の対談では、同世代ならではの鋭い視点や葛藤も浮き彫りに! テレビや広告のミライは、“狭間の世代”にかかっているのかも…。お二人の日々の奮闘の様子や熱い思いがあふれる対談を全5回のシリーズでお送りする本企画。

第3回のテーマは、本企画の核心ともいうべき「テレビ史の“ハザマ世代”論」。その内容とは?

“狭間の世代”の葛藤

黒木:“民放連 五輪特別プロジェクト”という僕も含めて民放5局のバラエティーの制作者を中心に集まって、電通の澤本さんもご一緒しながら民放連でオリンピックを盛り上げるために「一緒にやろう2020」というプロジェクトを展開しています。ここでも実は「チームのノリ」が非常に大事で、できないことも含めて面白く話し合う「ノリ」がないと、チームお外の方々、もっと大勢の方々とも絶対につながれない。この場に参加しているみんながその辺すごく自覚的で、民放の文化祭委員をやっているような感じで盛り上がっています。このプロジェクトチーム発案の「思わず捨てたくなるゴミ箱選手権」も開催中ですので、ぜひとも注目してもらいたいです!

黒木彰一氏(フジテレビ)
黒木彰一氏(フジテレビ)

ただ一方で、若手世代の作り手や広告プランナーは、作り手になっちゃうとジレンマが働いてしまうのではないかという心配がありますよね。というのも、ウェブを中心にデータだとかマーケティング要素だとか、昔より断然精度があがっていて「いかに効率よくスピーディーに」ということが格段に重要になってきている。そんな中で自分が実際に作り手になったときに「何がおもしろいのかな」とか「決まった正解があるはず」と悩んだりしてしまいがちなのでは、と思っています。

そしてまた上の年代の人たちの「効率なんて知らねーよ」的な仕事の仕方に萎縮したりすることがあるかもしれないな…。これは僕のことですけど(笑)。この、下の世代をモチベートする方法について、同学年の北風さんにはぜひともお聞きしたいです!

北風:背中を見せるしかないと思います。みんないなくなっても最後まで私はやり抜くつもりだから「あなたもついてきなさい」くらいの気持ちで。インターフェースは優しく丁寧に柔らかく接していますけど、心の中はある意味では容赦ないというか。お客さんじゃないんだから、つまらないとか言っている場合じゃなくて、自分でおもしろおかしくさせなきゃダメでしょう?って。そういう意味では、私は一人でおもしろがって死んでいって、もう化石になる覚悟です(笑)。

黒木:すごい。

北風祐子氏(電通)
北風祐子氏(電通)

北風:だから、20代の子たちも大歓迎。気が引けちゃうなら、得意な部分だけでもやってみてほしいですね。ゴールに向けて全能である必要はないという主義なので、パーツで何かを出してくれればそれだけで十分すばらしい。私は自分自身もパーツだと思っていて、みんなのパーツがかみ合ったときに化学反応が起こるのを何回も経験しています。それを若い世代の人たちにも味わってほしいから、「パーツでいいからとにかくおいで!」という言い方をしています。

黒木:非常に共感します。糸井重里さんもひょうきん族も80年代のスターたちは最初の先生だったし、デジタルネイティブの20代は部下だし、ぼくらはちょうど“挟間の世代”なんですよね。僕らは「勝手にやれ」「見て盗め」と言われてやってきましたけど、下の世代は突き放すだけじゃダメですし。

北風:そうですね。だから私は、若い世代が私の知らないことをたくさん知っているということに対して、素直に尊敬しています。それらを0から勉強してやるくらいだったら、尊敬できる彼ら世代に入ってもらった方が100倍早いので、「一緒にやろうよ!」という感じです。

黒木:しんどいけど、逆におもしろいですよね。みんながみんな同じ考え方ではないし、どこかで断層は必ずあるんですけど。若い人たちはちゃんとしているし遠慮がちだけど、一方で承認欲求も高かったりして。“狭間の世代”のぼくらを、うまく使ってもらっている感じもしますよね。

北風:自分の中では“ゆきずりの上司”という言葉を当てはめています。言ってしまえば、人生そのものがゆきずりというか、ほんの一瞬一緒にいられるだけで、当然仕事の中で出会う人たちも、もしかしたら家族ですらゆきずりなのかもしれない。だったら相手に遠慮しないで、自分の思うように絡んでいきたいなって。

寂しい思いをすることもあると思うし、それじゃダメだって言われるかもしれないけど、それを怖がらずに絡んでいくと、破片でもかみ合うところがあるんですよね。それが何より面白いなと思うから、あきらめたり、遠慮したりするのはもったいないと感じていますし、若い人たちにもそう考えて仕事に邁進してほしいです。

黒木彰一氏(フジテレビ)と北風祐子氏(電通)

「何がおきるか分からない」を追い求める

黒木:北風さんが20代・30代の若手に対して「優れているな」と思うのは、具体的にどんなところですか?

北風:とにかく理解が早くて賢い。会社に長くいるつもりがない人も多いせいか、短い間にできるだけ多くのことを学びたいという意欲がありますよね。あとは、優しくて寛大。自分が若いときなんかより、よっぽど適応力があると思います。今の時代において、当然のように必要とされているデータ分析能力を発揮できるところも強い。そのようないいところがたくさんある半面、失敗に弱いところはあるかもしれません。

黒木:僕も、失敗に弱いし、諦めが早いというのは感じています。だから「無駄なことやダメなことをたくさんやってもいいんだよ」っていうメッセージを全身から発信するように(笑)心がけています。彼らが感じる「効率が悪い」考えに、どれくらい付き合ってもらえるか。例えば、あるタレントさんを番組にキャスティングしたいときに、企画書をメールで送ってマネージャーさんと電話してダメだったらすぐにあきらめる、というのではなくて、そこから作戦をたて始める、ということなんです。

北風:それをやってもダメかもしれないという結果まで想像して、やる前に「無駄だ」と判断してしまうんでしょうね。

黒木:ええ。うちのヒットメーカーで、木月という非常に優秀なディレクターがいます。その木月から「サブカルチャーの番組が減っているからやりたい」という相談があって、久保ミツロウ先生をぜひキャスティングしようという話になりました。

久保先生はテレビには出ないと言っていたけど、久保先生のオールナイトニッポンに木月がケーキを持って毎週通った結果、キャスティングが実現したんです。それが「久保みねヒャダこじらせナイト」の始まりです。

そういうことがあるから、失敗してもいいから、バカなことでもやってみることも必要なんだなって。そういうストーリーって、チームで共有できる昔話みたいな財産になるんですよ。だから、無駄かもと思う球をたくさん投げれば時には当たることもあるので、まぁ本当に当たらないムダな球ばかりたくさん投げてきた気もしますが(笑)。一生懸命伝えていかなきゃなって思っています。

北風:若い世代は、頭がいいだけに結果を先読みして、「これは無駄かもしれない」「やめておこう」という発想に行ってしまいがち。でも、7~8年で辞めると決めているあたりも、何が起きるか分からないという偶然のおもしろさみたいなものを、最初から捨てているのではと感じます。だから若いメンバーには、「一見つまらなそうに見えるけど、やったら実は面白い」といった仕事をわざとアサインしたりしています。

この対談の出典は、こちら

黒木彰一氏(フジテレビ)と北風祐子氏(電通)

編集部の視点 #03

お二人のテレビ愛、クリエイティブ愛の根底には「コンテンツとは、その時代を生きる全ての世代が、魂を込めて作り上げるものだ」という意識があるように思う。世代の真ん中にいる私たちが引っ張っていかなくちゃ、ではない。だからこそ、先達の仕事にも、若手の才能にも、そして世の中の人たちにも、同じ熱量のリスペクトを持って接することができるのだ。この対談のキモは、まさにそこにある。

過去のテレビ番組を心の底から愛し、テレビの未来にも希望を捨てない。捨てないどころか、ワクワクが止まらない。しかしながら、テレビの現状には不満がある。悲観もしている。猛烈な焦燥感がある。そんなお二人の「テレビ史のハザマに、私たちはいるんだ」という思いには、とても共感できるし、頼もしいな、と思う。決して、上から目線での感想ではない。どの年代でも、どんな職業であっても、その道を究めようするプロフェッショナルには、そうした「ハザマ意識」と仲間や他人へのリスペクトがある。その気概に、世の中は、ほだされるのだ。

「テレビのハザマで、テレビを語る」4回目となる次回のテーマは、「効率を追求することで、人は本当に幸せになれるのか?」です。ご期待ください。