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超高齢社会の課題解決ビジネスNo.2

超高齢社会の課題解決ビジネスの芽をいかに発見し、開発するか?

2020/01/16

「超高齢社会の課題解決ビジネス」連載の第1回では、超高齢社会の全体像と、ビジネスとして取り組む意義についてお話ししました。今回は、これをいかにビジネス化していくかについて紹介します。

課題解決ビジネスのシーズをいかに発見するか

超高齢社会における社会課題は多数存在しますが、それらの中で、まずどのテーマを対象とし、ビジネス化に取り組もうと考えるかが第一歩となります。テーマ選定に当たって重要なポイントは、自分の業種・業態もしくは関心領域にできるだけ近いテーマを選んだ方がよいという、ある意味では当たり前のように思えることです。

著書『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』では20社以上のベンチャー企業にヒアリングを行いましたが、彼らがビジネス発想の起点として口々に語ったのは、自分や自分の両親が直面した生活課題や、事業を進めている中で直面した顧客課題でした。机上の空論ではなく、自らが遭遇した課題であったことが、課題解決に向けた取り組みを本気にさせたのだ、といっていいかもしれません。その意味でまず探索すべきは、自らの業種・業態の周りを探索せよ、といえるでしょう。

とはいっても、技術シーズ先行で課題解決に取り組むというケースも当然あり得るでしょう。しかし技術シーズ先行で進める場合、後ほどお話しするように対象市場をきちんと理解することが重要になります。

課題解決ビジネス手法の考え方

課題テーマが決まったら、次は解決のための具体的な手法を考えていかなくてはなりません。課題が顕在しているということは、すなわちその問題はまだ解決できていないということを意味します。また解決方法は明確なのだけれども、何らかの理由がハザードとなり、解決できないということもあるでしょう。そこに横たわるのは、制度の問題、お金や人の問題、技術の問題などです。ハザードの中身を因数分解することで課題解決の糸口を見つけることができます。

解決の手法としては、いくつかのアプローチ方法が考えられます。

まず一つは、テクノロジーやイノベーションによる解決手法です。近年、著しい進化を遂げているIoT・センサーやAI、ロボットなどのテクノロジーを活用することで解決できる場合があるでしょう。

従来の課題解決手法の多くは、人手による解決が多数を占めていました(例えば、行方不明認知症者の発見は、認知症サポーターの養成や、地域のコンビニや郵便局と協定を結ぶ、など)。しかし、これには地域での協力体制の構築など、どうしても制約がかかります。それらを上手くテクノロジーを活用することで効率的に解決につなげるというアプローチです。このタイプの解決手法は、技術的知見が必要とされる、プロトタイピングにコストと時間がかかるなどのデメリットがある一方、海外での事業展開については大きな可能性が広がります。

2番目の手法は新しいビジネスモデルの開発です。例えば、介護業界サービスの多くは、2000年の介護保険導入以前からのサービスの在り方を踏襲しているところも多いのですが、この分野での新サービス開発は、まだまだ多くの余地が残されていると感じます。

最後のアプローチ方法は、地域社会ネットワークの組み替えで解決につなげるという方法です。高齢社会における社会課題の発生場所は、主に家庭内や地域が中心です。しかし地域においては高齢化とともに人口減少も進行しており、地域における共助の仕組みは崩壊寸前といってもいいでしょう。こうした失われつつある共助の仕組みをビジネスの一環として立て直すという試みは、社会関係資本の再興という視点からも意義深いテーマであるといえます。

課題解決ビジネス手法

課題解決ビジネスを失敗させないいくつかのポイント

シニアマーケットの過去の歴史を見ても、課題解決にチャレンジしてもうまくいかなかった事例は数多くあります。そうした過去の失敗に学びつつチャレンジしていく姿勢が重要です。

うまくいかなかった最も多い理由は、利用者本人の受容をあまり考えないまま開発を進めてしまったケースです。例えば、いくつかの「見守りサービス」がそうです。何らかのセンサーや通信技術を使うことで、遠く離れた親を見守るサービスは、数多くの企業がチャレンジしていますが、なかなかうまくいったケースを目にすることがありません。それは、子どもたちは見守りたいと思う一方、実は親は見守られたくないと感じているからです。こうした意識を理解しないままに、一方的に「シニアは…だ」という勘違いでビジネスを進めることは危険です。

これ以外にも、補助金・助成金ビジネスモデルから脱却する、介護保険制度に頼りすぎない、モノマネ文化から脱却する、実証実験サイクルをきちんと回す、などのポイントを挙げることができます。

事業を失敗させない五つのポイント

ビジネスモデルを検討する

課題解決方法が、経済メカニズムに乗らなければ、それはボランティアや社会貢献の範ちゅうであり、「ビジネス」ではありません。したがって、提供する商品やサービスを、いかに顧客から支持され、利益を生み出す商品として市場に提供できるかが問われてくるわけです。その際、最初に検討すべきは、「それは受益者が対価として払える金額になっているか」ということです。

実際の高齢者は、若い人々が一般的に考えるほど裕福ではありません。価格の問題は非常に重要です。例えば、個人世帯向けが難しいならば、業務需要ニーズを狙うというのも選択肢として考えるべきでしょう。

また、最も重要なポイントとして指摘できるのは、「そのサービス・商品が、高齢者自身や家族・ステークホルダーの喜びにつながっているか」、ということです。

単に課題が解決されるだけでなく、解決されることが、本人もしくは誰かの喜びやうれしさ楽しさにつながること。そこに人々は価値を見いだし、お金を払ってもいいと考えるようになるのです。そこを外さない形での商品、サービス開発が望まれます。