シニアはスマートフォンをどのように使いこなしているかNo.3
データクリーンルームで可視化!シニア×スマホのクラスタ分類
2022/11/25
電通シニアラボが実施した各種調査を基に、現代のシニアのスマートフォン(スマホ)利用状況や、それによって生活がどのように変わったかをひもといていく本連載。今回はスマホ利用の実態データをもとに、シニアのクラスタリング(タイプ別分類)を試みます。
電通シニアラボとは
「超高齢社会における社会課題解決」をテーマにシニアに関する知見の研究を通じてさまざまなインサイト・ソリューション開発を行う電通の社内横断プロジェクト。
ホームページ:https://www.projects.dentsu.jp/seniorlab/
スマホ利用実態による「クラスタリング」が、シニア向けマーケティングでのカギ
企業のマーケティング活動において、スマートフォンは極めて重要な存在になっていますが、それはシニア向けマーケティングにおいても例外ではありません。
第1回でもご紹介した通り、シニアのスマホ普及が進むにつれて、決済アプリを使いこなす人も現れています。一方でほとんどアプリを使いこなせず、通話のみに使用しているシニアもいます。
このようにシニアといってもひとくくりにはできません。マーケティング戦略を考える上では、スマホの利用実態に即してクラスタ分けをすること、つまり「クラスタリング」が求められます。そこで、電通シニアラボでは、スマホユーザーをアプリの利用状況で分類し、各クラスタの特性(年代構成/各種アプリの起動日数/位置情報による移動データ/意識価値観など)を可視化しました。
データクリーンルーム「dds」を使って、シニアを4クラスタに分類
昨今、ECやQRコード決済などのショッピング関連アプリを使用するシニアや、ニュース/天気予報などの情報系アプリを利用するシニアが増えました。しかしその中には、日常的に使用している人もいれば、数回使っただけという人もいます。
そこで、アスキング調査(※1)だけでは把握しにくい「シニアの真のスマホ利用実態」を探るべく、データクリーンルーム(※2)「dds(docomo data square※3)」を駆使して分析しました。シニアも多く利用するNTTドコモの膨大なデータ基盤を使うことによって、シニアのクラスタリングを実現しています。
「dds」ではアカウント識別子や広告識別子などユーザーに付与された任意のID群(ユーザーの名前、住所、電話番号、電子メールアドレスなどの個人情報は含まれない)にさまざまなサービスのデータを紐づけ、プライバシーを保護した状態で分析がされます。
※1 = アスキング調査
調査票を使ったり、インタビューなどの形で行われる調査。利用実態や顕在意識の把握、効果検証などの際によく用いられる。
※2 = データクリーンルームとは
※3 = dds(docomo data square)
NTTドコモが提供するデータクリーンルーム。国内初(※4)の取り組みとして、テレビCM、ウェブ広告、デジタルOOH広告の接触から商品購買までのID単位(※5)の効果測定がプライバシーが保全された環境で分析可能となっている。
詳しくはこちら:https://dentsu-ho.com/articles/7972
※4 = 2020年8月3日、ドコモ調べ。
※5 = IDとは、アカウント識別子や広告識別子などユーザーに付与された任意の識別番号のこと。ID自体にユーザーの名前、住所、電話番号、電子メールアドレスなどの個人情報は含まれない。
クラスタはスマホリテラシーの高い層から順に、以下の4つに大別できました。
①ECやコード決済を日常的に使いこなす「EC・決済層(22.6%)」
②情報系アプリなどで知りたい情報に自らアクセスしている「情報収集層(22.7%)」
③LINEやメールが主な用途のメッセンジャー層(21.5%)』
④ガラケーと同じ使い方にとどまっている「通話層(33.2%)」
各クラスタの年代構成は、①EC・決済層が相対的に最も若く、②情報収集層、③メッセンジャー層と続き、④通話層においては70代以上が約7割を占めています。このことから、スマホのリテラシーや使用状況は、年代に相関していることが確認できました。ここから各クラスタの特徴を見ていきます。
アクティブで新商品に敏感な「EC・決済層」、交流ツールをよく利用する「メッセンジャー層」。4つのクラスタの特徴を紹介
①「EC・決済層」の特徴
4クラスタの中で最も若いクラスタで、60~69歳が6割以上を占めています。情報感度が高く、YouTube、SNS、キャッシュレス決済、ECなどを幅広く利用。アプリ起動頻度も高く、スマホアプリを上手に生活に取り入れています。
新商品への興味関心も高く、買い物にはレビューや口コミも参考にしているようです。また、移動データから見てみると、観光やゴルフに行くなどアクティブに活動している様子も分かりました。「シニアだから」といった特別視は不要な層といえます。
②「情報収集層」の特徴
60~69歳が56.7%と半数以上を占めます。スマホの利用は情報収集がメインで、ポータルアプリやニュースアプリの利用率が高めです。YouTubeも定期的に利用しています。
一方で、ECやスマホ決済にはまだあまり手が出ていないことから、ある程度スマホを使いこなしつつも、スマホでの決済には不安が残っている人が多く含まれていそうです。また、サイトのレビューや口コミはあまり参考にしていないようです。
③「メッセンジャー層」の特徴
65~74歳が約半数を占めており、唯一女性の方が多いクラスタです。LINE等のメッセンジャーツールの利用率が高く、友人や家族と連絡を取り合っている様子がうかがえます。スマホ利用の主目的は、友人や家族とのコミュニケーションと言えそうです。なお、「情報収集層」と同様に、ECやスマホ決済の利用は多くありません。
④「通話層」の特徴
4つの中で最も多く高年齢シニアを含むクラスタで、70代が約半数を占めています。情報感度が低く、なかなか新商品には手を出さない傾向にあります。1日のスマホ利用はごく短時間で、ニュースや天気の確認にとどまっています。アプリのダウンロード率は総じて低い傾向で、情報収集はマスメディアがメインとなっている層と推察されます。
クラスタ別の取り組みで、シニアマーケティングに進化を!
以上のように「シニア」といってもスマホの使用状況には個人差があります。しかし、スマホへの関与の仕方が異なるクラスタごとのアプローチ方法を検討し、アジャストすることで、効率的かつ効果的なマーケティングが可能になります。
次回は、データクリーンルーム「dds」を使った各クラスタへのアプローチ例とPDCAについてご紹介していきます。
急速なDX化によって“1億総スマホユーザー時代”に突入しようとしている今、シニア向けマーケティングの進化を通して「シニアにうれしい商品・サービス」が広く知れ渡る世の中になればと思っています。ご質問やご意見は、ぜひ電通シニアラボにお問い合せください。