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クリエイティビティーの過去、現在、そして未来No.3

2020/02/25

クリエイティビティーに今、なにが起きているのか?〜白土謙二、大いに吠える〜

白土謙二、大いに吠える

広告のコモディティー化が進む中、クリエイティビティーはどうあるべきか?

「クリエイティビティーの過去、現在、そして未来」と題した連載コラム。3回目の今回は、現在のクリエイティブを考察することで、クリエイティビティーの仕組みを明らかにしていこうと思います。

(編集部注:本コラムは、2019年8月5日に電通第3CRプランニング局で実施された白土氏の講演を再編集したものです)
 

広告は今、確実にコモディティー化してきている。つまり、同質化しすぎたために、差異化が困難になっているんです。

オリエンも、企画者も、表現も、すべてがそう。誤解を怖れずに言うならば、「業界そのものが、画一化、素人化している」ということなんです。

「その広告を見た(クライアントの)営業の人たちは、勇気が出ますか?」

これは、ソニー宣伝部におられた河野透さんに言われた言葉なんですが、ハッとさせられました。

競合他社と差異化できていない表現なんて、どれだけキレイに、どれだけ正しくできていようと営業ツールとして、さしたる価値はない。少なくとも、営業の現場の人たちに、勇気が届けられる代物ではない。

クリエイティビティーというものは、単なる表現のことじゃない。ビジネスツールとしてどのような価値があるのか、ということを突き詰める努力、そのプロセスもまた、クリエイティビティーなのだと、僕は思います。

クリエイティビティーは、ビジネスとなり得るのか?

ビジネスとしてのクリエイティビティー、僕が考えるプロセスはこうです。

  1. 課題の発見       〜 より広く、多角的に 〜
  2. 課題の定式化(仮説化) 〜 より深く、本質的に 〜
  3. 解決への発想      〜 より新しく、独創的に 〜
  4. 立案と実行       〜 より先を読んで、計画的に 〜

後半のほうが、いわゆるクリエイティブなプロセスのようですが、クリエイティビティーというものの本質は、この全部なんです。

その力を、いかに発揮するか。それには、ビジネスのメインパワーの変容を押さえておかなければなりません。

ビジネスにおけるメインパワーの変容ビジネスにおけるメインパワーの変容

詳しい話は端折りますが、図に示したとおり、ビジネスにおけるメインパワーは、現在「社会関係力」であって、近未来においては「ビッグデータ力」とか「AI力」といったものが台頭してくるにちがいない。

これらを統合的かつ戦略的にコントロールすることなしに、もはや、効果的マーケティングはできない、と僕は思っています。

組織構造を見極めてこその、クリエイティビティー

さらに言うと、企業組織における権力構造の変容にも注目すべき。

企業組織における「権力構造」と広告会社の「立ち位置」 1960~1985
企業組織における「権力構造」と広告会社の「立ち位置」 2003~2019

昔の宣伝部は、経営が直轄し、経営に直結する部署だった。いま、経営が直轄しているセクションの筆頭は、CSRだったりする。

ようするに時代、時代で変化していくクライアント内の権力構造(=意思決定の権限とプロセス)を見極め、「誰に、何を、提案すべきか」ということを考えないといけないということなのです。

素人が企画し、玄人が完成させる。それが、望ましきクリエイティビティーの姿

クリエイティビティーとは「問題を発見する力」と「その解決を考える力」と「それを実現する力」の総和なのですから、その力を求めている人に対して、ダイレクトにぶつけないかぎり、なんの意味もない。

僕は、技術者でもなければ、経営のプロでもない。はっきりいって素人です。あるジャンルを完成させるのは、もちろんその道のプロ(玄人)の役目ですが、あるジャンルに革新を起こすのは素人、むしろ素人であるべきだと僕は思うんですね。

つまり、素人が企画して、玄人が作り上げる。素人が、玄人の心を揺さぶれるか否か、で大切なことはだれにも負けない「好奇心」を持ち続けることだ思います。

「できます!」は、口が裂けても言いません

実は、クライアントからなにか相談されて、「できます!」と答えたことは僕の場合、ただの一度もないんです。

「やってみたいです! だから、なにがお困りなのか教えてください! 一緒に考えさせてください!」

これが、僕の流儀。

「できます!」なんてのは詐欺師が操る常套句ですし、そもそも、新商品で定番化するものは、データが示すとおり、わずか3%に過ぎないわけで、「できます!」などと、軽々しく口に出せるものではない。

でも、「やってみたいです!」「なぜなら、これだけの仮説があるのだから」ということは、責任をもって言える。相手も、興味を示してくれる。

そうしたお互いの「好奇心」を刺激し合うやりとりは、メディアが、技術が、社会がどのように変わろうとすぐれたクリエイティビティーを発揮する上で、最も大切、かつ、普遍的なことだと思います。