拡張するクリエイティビティー 〜白土謙二、未来を語る〜
2020/03/09
拡張するクリエイティビティーとは、なにか?
「クリエイティビティーの過去、現在、そして未来」。4回目となる今回は、未来のクリエイティビティーについてお話しします。題して、拡張するクリエイティビティー。
(編集部注:本コラムは、2019年8月5日に電通第3CRプランニング局で実施された白土氏の講演を再編集したものです)
正直、このあたりはまだ私自身も未知数なのですが、大きな方向性としては「地域や社会の為のクリエイティビティー」ということだろうと思います。
世界では今、ESG(Environment, Social, Governance)というものが注目されています。日本では、SRIすなわち、「社会的責任投資」と呼ばれていますが、欧米では、道徳的な意味合いにとどまらず、ビジネスを加速させるという、より積極的な意味での投資と捉えられています。
そうした指標に配慮した、年間約3400兆円とも言われる世界の投資額(※2016年時点での推定額)と対峙するには、企業の評価の「古いモノサシ」を改めなければなりません。
たとえば、カカオについて考えてみる
たとえば、カカオってどうでしょう? ココア、チョコレートですね。ほっとする、幸せ。
でも、それを支えているのは、生産地の児童労働だったりするわけです。お菓子のメーカーであっても、そうした現実は、あまり知られていない。
ならば、NGOの人たちと現地へ一緒に行ってみましょうよ、と提案する。現場を目の当たりにすると、単なる感傷ではなく企業として、やるべきことのヒントが見えてくる。単なる支援とかそういうことではなく、自らのビジネスの成長やあるべき未来像が見えてくる、というわけです。
アパレル、クルマ、金融、どんな市場でも同じことが言えます。いま、世界で何が起きているのか。それを知り、企業としていかにコミットしていけばいいのかを考える。そこから、新たなビジネスの芽が生まれる。未来のクリエイティビティーのもつ本質的な価値や可能性は、まさに、そこにあるのだと思います。
その意味で、僕が今、一番心配しているのは「反知性主義」の台頭ですね。合理性とか客観性とかを無視して、自らの都合のいいように世界を解釈する、といった風潮。本当に危険だと思います。
多様性をもった人々が、互いをリスペクトしながら大きな課題こそ、みんなで力を合わせて、ビジネスという感覚も生かしながら解決していく。それも、スピーディーに。
気候変動等の大きな危機が迫る今、その取り組みは、まさに、待ったなしの状態だと思います。