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クリエイティビティーの過去、現在、そして未来No.2

2020/02/10

クリエイティビティーの仕組みとは、なにか?〜白土謙二、手の内を明かす〜

白土謙二、手の内を明かす

「クリエイティビティー=思いつき」ではない

「クリエイティビティーの過去、現在、そして未来」と題した連載コラム。2回目の今回は、過去のクリエイティブを検証することでクリエイティビティーの仕組みを明らかにしていこうと思います。

(編集部注:本コラムは、2019年8月5日に電通第3CRプランニング局で実施された白土氏の講演を再編集したものです)

 

最近の若い人たちに少し不足しているなと思うのは、当然、やっていてしかるべき「表現のクオリティーマネジメント」。プロならぜひ、やってほしい。そのひとつが、「表現テリトリーのポジショニング」です。

たとえば、縦軸に「マジメ」「面白い」、横軸に「キレイ」「汚い」を置いてみると、ほとんどのCMは「マジメで、キレイ」にポジショニングされる。

意図的に「汚くて、面白い」というトリッキーなCMもあるけれど、「キレイなのに、面白い」というものは、ほとんどない。ならばそのポジション、僕がもらっちゃおうと考えるわけです、僕の場合。

表現テリトリーのポジショニング


企画の良し悪しを見定める方法とは?

次にお話ししたいのは、企画の良し悪しの判断方法です。

こないだ、アメリカの若い演出家と話をしたら、彼自身は、一切、企画をしないし、コンテすら見ない。企画した人間と会って、30秒くらい話をして、なんか面白そうだな、と自分が前のめりになったものは、絶対いいものになる、と言うんです。

では、世の中に流れているCMの善し悪しは、どうやって見分けるの?と質問したところ、

「それは、簡単。音声を切っても、その内容がわからないCMはダメ。音声に頼っているということは、それは説明であって、アイデアがないということだから。

日本に行くと、ホテルの部屋でずっとCMを流しているんだけど、その95%は、アイデアがない。ただ、ぺらぺらと説明しているだけ」

と言われてしまいました。

それでピンと来たことは、「差異化」というものを、特にインターネット世代の若い人たちに言えることだと思うのですが、昔と比べて考えなくなった。だから、結果として同じようなCMばかりが生まれるわけです。

いきなりコンテを描くな

僕自身、いま現在は企画の作業をしていませんが、企画をするときは、いきなりコンテなんかは書かない。決まってこんなマトリクスをつくるんです。

表現のマトリクス

横軸には、お芝居、ミュージカル、ビデオクリップ、童話、俳句、絵本、パントマイムといった具合に「表現ジャンル」を列挙する。

縦軸には、若者、シニア、ネコ、犬、といった具合に「表現者(演者)」を連ねる。

そのひとつひとつの組み合わせを、全部、つぶしてかかる。すると、表現なんてものは、無限に生まれる。このマトリクスに、「最重要法則」に従ってメッセージを当てはめる。

最重要法則とは、

  1. 伝えることは、一つに絞れ
  2. 他との「差異化」を、常に意識せよ

というもの。

表現の手法って、ビジュアルもコピーも、それほどの数はない。「入れ替える」「ズラす」「誇張する」「矮小化する」「減らす」「汚す」…大してないんです。あと三つほど加えて、十もあれば十分でしょう。

「思いつき」や「情報」ではなく、「型」に当てはめて表現をつくるひとは、確実に当てる。すなわち、表現のアウトプットに、外れがないんです。

外れがない。一定のクオリティーを保った上で、いくらでも量産ができる。それが、プロの仕事というものだと思います。

他人に頼るのも、ある種のクリエイティビティー

実はもう一つ、優れたクリエイティビティーを発揮する方法がある。

それは、「企画は他人につくらせる」というもの。

こういうタイプの人は自分には、企画をする能力が全くないことを自覚しているんですね。その代わりに、他人の仕事をよく見ている。自分のところに仕事が舞い込むと、この仕事ならこの人に企画させようというアンテナが瞬時に働いて、その人のところに取材にいくわけです。

こう説明すると、ただのお調子者のように思われるかもしれませんが、「企画に対するリスペクトを、誰よりも持っている」という観点からすると、見習うべき方法論と言えるのではないでしょうか?

「クリエイティビティーの過去、現在、そして未来」。2回目の今回は、クリエイティビティーの仕組み、その一端を、ご紹介しました。次回は、そうしたクリエイティビティーがいま現在、どんな状況にあるのか、についてお話しさせていただこうと思っています。