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SDGs達成のヒントを探るNo.2

2020/04/10

SDGsを実現させる、持続可能な仲間づくり

本連載ではさまざまな有識者や実践者からお話を聞き、SDGs(国連の持続可能な開発目標)達成のためのヒントを探っていきます。

今回は、人と人とのつながりをデザインする“コミュニティデザイナー”、山崎亮さんに、SDGs達成に向けた“チームづくり”について聞きました。

地域や組織に関わる人たちを結び付け、持続可能な共創・協働のコミュニティをつくるにはどんなことに気を配ればよいのか?山崎さんの考えるSDGsとはどのようなものなのでしょうか?

山崎亮
studio-L代表取締役の山崎亮さん

「自ら考え課題を解決するコミュニティ」を約3年で育て上げる

――山崎さんは、今から20年ほど前、SDGsという概念もないような時代からコミュニティデザインを手掛けていらっしゃいます。2005年にコミュニティデザインに特化した会社「studio-L」を設立され、以降、代表兼コミュニティデザイナーとして、精力的に活動を続けているとのこと。まずは、コミュニティデザインとの出合い、これまでの歩みについてお聞かせください。

山崎氏:もともと僕は、公共施設を多く請け負う設計事務所でデザイナーとして働いていました。そのとき感じていたのが、「どうして公共施設って、使いにくいものが多いんだろう」という疑問。使う人の声を聞かずにつくられる、いわゆる“作品”のような公園、博物館、コンサートホールなどが多くあり、ずっと問題意識を持っていました。

そこで取り組み始めたのが、その施設を使うであろう方々に集まっていただき、声を聞きながら設計を行う共創型の建築デザインです。公共建築は住宅と違い、何万人という人の声をまとめなければなりません。まずは「どうしたら多くの人から意見を聞き出せるのだろう?」と考え、その手法について調べ始めました。

そのうちに、ワークショップという手法があることを知り、本などで勉強しながら、見よう見まねで実践するようになって。やっているうちに、設計よりもワークショップの部分が面白くなってきちゃったんですよね。それで、ワークショップの部分だけを行うstudio-Lという会社を立ち上げました。

つまり、「コミュニティデザインをやるぞ!」と思っていたわけではなくて、きちんと設計を行うために必要だと思うことをやっていたら、いつの間にかコミュニティデザインにたどり着いていた、という感じです。

――山崎さんが手がけるコミュニティデザインとは、どのようなものなのでしょうか?

山崎氏:ひとことで言うと“仲間づくり”かな。依頼される案件は、例えば「地域包括ケアの仕組みづくりをしてほしい」とか「食育計画をつくってほしい」とか、実にさまざまで。若手リーダーの育成や小学校の跡地を活用するための会議、離島地区の特産品づくりなどにも関わっています。そうした依頼に応じて、人と人とをつなぎ、そこに信頼関係が芽生えるようサポートして、最終的には自ら課題を解決するコミュニティに育てていくことを目指しています。

それぞれのプロジェクトに関わる際、強く心に決めているのが、「3年で抜ける」こと。だいたい最初のミーティングで、「僕たちは3年で抜けますからね」「状況を変えるためのサポートは全力で、真剣にやるけれど、変えるのは皆さん自身しかいないんですよ」ということをお話ししています。地域のことはその地域の人がいちばんよく分かっているし、われわれがいなくても活動が続くということがなにより大切だと思うんですよね。

周りの人からは「もっと長く関わったほうがお金になる」と言われることもあるんですけど(笑)。きちんと“自分ごと”になり、自走・継続するコミュニティをつくるということが、コミュニティデザインであると考えています。

山崎亮2

周到な事前準備で、参加者が楽しく打ち解けられる場をつくる

――3年間でどんなことを行うのか、具体的に教えてください。

山崎氏:1年目は主にリサーチとプランニングです。いろいろな関係者に話を聞き、状況や関係性を整理して、進め方を考えて…。1年目の最後ぐらいに、チラシやSNSでワークショップの告知を行います。1年目の準備期間にある程度、人とのつながりができているので、募集をすると100~150人ぐらいは集まってくれるんですよね。そうやって2年目以降は定期的にワークショップを実施していきます。

例えば墨田区の「食育計画策定プロジェクト」では、約10回ワークショップを行いました。その結果、ワークショップ発のアイデアである「すみだ食育ワークショップカード」が生まれました。これは、食に関するさまざまなキーワードが書かれた“議論のタネ”のようなもの。

すみだ食育ワークショップカード

ワークショップの参加者がカードを使って地域の学校などに向けてプチワークショップを行い、食育に関する共創を広げていくという目的で作成しました。実際に墨田区内で新たに食育に関する15の取り組みが生まれています。

――まさに自走・継続しているのですね。ワークショップではどんなことを行っているのでしょうか?こうしたコミュニティにつながるワークショップのコツやポイントなどはありますか?

山崎氏:基本となるのは、6人ぐらいのグループをつくって付箋と模造紙で課題を整理するような、一般的なワークショップです。ただし内容は、プロジェクトごとに、地域の風土や参加者を見てカスタマイズしています。

例えば、長めの時間を確保してたっぷり自己紹介をしてもらったり、大きな輪をつくって座って話し合ってもらったり。100種類ぐらいあるワークショップの手法をベースにしながら、オーダーメードのワークショップを行っています。

最近よくやるのが40分の自己紹介。2人1組のペアをつくってもらい、1人20分の自己紹介をするんです。いきなり「20分話してください」というのは難しいと思うので、まずは「となりの人を見てにこっと笑ってみて!」と促したり、「あとで“他己紹介”をしてもらうので、印象に残ったことをメモしておいて」と指示したりしています。それから、会話がスムーズに展開しやすいよう、事前に質問と時間配分が書かれたインタビューシートもお渡ししています。

こういう準備をして自己紹介に臨むと、最初は少しぎこちないのですが、その人の背景や意外な共通点、第一印象とのギャップや面白さが見えてくるとどんどん盛り上がります。40分が終わったころには親友のようになっていることも珍しくありません。「知ってはいけないことを知ってしまった秘密の関係」みたいなところもあって、すごくチーム感が出るんですよね。

つまり、ワークショップは始まる前に、ほとんど勝負がついているものです。事前にヒアリングを行い「この人たちはこういうことで盛り上がりそう」「こういう傾向があるな」という特徴を見極めて、しっかり想定と準備を行うこと。そしてうまくいかない場合は柔軟にプランを変えていくこと。これが、よいコミュニティにつながるワークショップのポイントだと思います。

山崎亮3

SDGsは目指すものではなく、あとから振り返り確認するもの

――話を伺って、コミュニティデザインってとてもSDGs的な活動で、取り組み全体がSDGsと言ってもよいぐらいだと感じました。山崎さんご自身はSDGsという言葉を意識していらっしゃるのでしょうか?

山崎氏:20年前から行っていることなので、特に意識はしていないかな…。SDGsの理念って、本来は、意識したり目指したりするようなものではないと思うんですよね。心から、真剣に、“やるべきこと”をやっていたら、たぶん自然に達成に近づいていくようなもので。なにか新しいことをするとき、SDGsの目標一覧を見ながら「この事業では、3番目と10番目の目標を目指そう」などと議論をしがちですが、そうではなくて、もっと本質的な部分に目を向けながら実現していくものだと思います。

自分たちが人として本気で正しいと思うことを行い、そのあとで、「ところで17個の目標のうちどのへんに貢献できているかな」と振り返る。そうやってチェックするものなんじゃないかなあと思うんですよね。

17個の目標はいったん忘れておいて、「今、社会で何が問題になっているか」や「本当に必要な事業はなにか」を考える。自然や社会を軸にして、正しいと思うことを追求する。そういう姿勢が必要でしょう。

「まずは自分をしっかり信頼して、やるべきだと思うことを考えるところから会議を始めませんか?」と。青っちょろいんだけど、そこから始めることが大切だと思います。

――山崎さんにとっては、やるべきだと思うことが「使う人の声を聞きながら建築の設計を行うこと」で、それを突き詰めていったらワークショップやコミュニティデザインになったということなのですね。

山崎氏:そうですね。僕らがワークショップやコミュニティデザインにこだわるのは、世界は変えられないけれど、10万人が住む地域の中の100人ぐらいは変わるかもしれないと思っているから。この100人が、さらに別の100人に人生を懸けてなにかを語れば、きっと1万人ぐらいの人たちがなにかに気付いてくれるはず。10万人のうち1万人の意識が変わると、地域が変わると思っています。

1割変われば、なにかが変わる。そう信じて、常に「深く考える100人をどうやってつくっていくか」ということを考え続けています。

SDGsに取り組むことって、決して難しいことではないと思うんです。まずは自分の中にある自然性や人間性…生まれ持っているピュアな感覚や正しさを信じてみてほしい。それを基点にしてものごとを考えて、身近なところから行動を変えていってほしいなと思います。そうするとビジネスや数字の拡大をよしとする思想から少しずつ解放され、そういう人が増えることで世の中が変わっていく。時間はかかると思いますが、SDGsは、そもそも効率よくできるものではありませんから。根気よく、真剣に、向き合い続けるしかないと思っています。

「それって正しい?」

まずはこの問いだけ覚えておけばOKです。これからSDGsに取り組もうと思っている方がいらっしゃったら、これを常に自分に問いかけて行動するところから始めてみてくださいね。

 

TeamSDGs

TeamSDGsは、SDGsに関わるさまざまなステークホルダーと連携し、SDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発などを行っています。

TeamSDGsのウェブサイトでは、ウェブ電通報とは違う切り口で山崎さんのインタビューを紹介。併せてご覧ください。