テレワーク時代の発想法 “オンラインブレスト”の七つのコツとは?
2020/04/28
現在、多くの企業でテレワークが実施されていますが、国境をまたぐプロジェクトを行う時は必然的にテレワークと同様の仕事環境になります。例えばイギリスとのミーティングにインドのスタッフも参加するなど、3カ国以上またがっての会議も日常的に発生します。
アメリカは国土が広いため、昔から直接対面しなくてもよいビジネススタイルが発達してきました。そのノウハウを基に広告業界もオフショア(海外への業務委託)による効率化や、グローバル規模でのビジネス展開を広げてきました。今回は、われわれのグローバルネットワークで培った、テレワークをスムーズに行うためのノウハウの一部を紹介します。
ビデオ会議?電話会議? ~情報伝達の次元を上げる~
「情報を伝える」という点では、対面でなくても電話やメールなどさまざまな伝達方法が発達しており、時差以外で距離を感じることは少なくなりました。では、距離があることでのデメリットはどんな点でしょうか。
技術の発展で世界は小さくなり、情報量もスピードも上がったものの、リアルに対面でディスカッションをするのと同じかというと、そうではないのが現実です。何が足りないかというと、阿吽の呼吸のような空気感や、感情・思いのような要素が伝わりきらないことです。このような要素が必要とされる場、例えばブレーンストーミング(ブレスト)のような創発作業は、テレワーク環境では不向きな傾向があります。
テレワークという働き方が広がり、個々人が集中してアイデアをつくり出すには良い環境になりました。一方で、個人の限界を広げてくれるブレストも有用な手法といえます。
あなたは会議するときにカメラのスイッチを入れていますか?
ブレストのような創発的な作業の時にはビデオ会議にすることをお勧めします。ジェスチャーのような非言語がコミュニケーションにおいて人に影響を与える割合が9割という説があります。情報の経路(次元)を増やして、この9割をいかに再現してコミュニケーション効率を上げ、お互いの発想を広げれられるかが、オンラインブレストの肝になります。
オンラインブレストを上手く行う七つのポイント
では実際に、オンラインブレストを上手く行う方法をポイントごとに解説します。
①ビデオのスイッチをオンにする
会社で会議をするときはビデオをオンにしていても、自宅からのビデオ会議ではオンにできない人も多いです。これはプライバシーの公開に対する心理的なハードルが大きいでしょう。特に日本の家の作りは背景にしやすい壁が多くない傾向があり、家の私物が映ることを避けたい気持ちはよく分かります。私自身も良い背景がある場所がなく、クライアントから「倉庫みたいですね」と言われたことがあります。
海外のメンバーとビデオ会議をする場合、相手の場所はリビングのソファや台所の机などさまざまです。日本ほど映り込みを気にする人は少ないように感じます。映り込みを気にする場合は、ビデオ会議システムの背景をぼかす機能や、自分で用意した背景を使える機能を積極的に使うとよいでしょう。
②モデレーター(進行役)を指名する
オンラインブレストにおいてモデレーターはとても重要なポジションです。現段階でのビデオ会議システムでは、音声情報は残念ながら単線の線路と同じ。つまり、同時には一人しか発言できません。そうなるとメンバーの中に話が長い人がいると時間がなくなってしまい、せっかくの他の人の発想が埋没してしまう可能性が高くなります。そのため、モデレーターが議論の流れを整理し、より多くの発想を引き出すことが肝要です。
また、事前の議題共有を行い参加者が可能な限り事前の準備をした上で参加してもらい、参加者全員に議題を忘れさせないようにモデレートすることで、効果・効率的な議論を進めることができます。
ブレインストーミングの最後にとりまとめを行い、ネクストステップを明確にすることもモデレーターの重要な役割の一つです。
③アイスブレーキングをする
ブレストをしていると、発想やアイデアが立て続けに広がっていくのを感じたことがあるのではないでしょうか。いかに早い段階でこの状態に持っていくかがブレストを効率よく成功に導くコツです。
グローバルでのブレストとなると、いろいろな国と地域からメンバーが参加しており、時間が限られることがほとんどです。その為、短時間でこの状態に導くためにアイスブレーキング(打ち解けた雰囲気を作ること)が重要視されます。事前に何名かをアイスブレーカーに指名しておくという手段も取られます。
④ グループを小分けにする
大人数の会議になると発言が活発になりにくくなるのは対面でのブレストでもオンラインでも同じです。ブレストの初期の段階から最大4~5人の小さなグループに一旦分けて、各個人の発言を促すという方法も効果的です。前項のアイスブレーキングにもつながります。この小さなグループで出たアイデアを共有し合い、全体での活性化につなげていきます。
⑤ チャットを活用
ビデオ会議において音声情報は単線の線路と同じと述べましたが、それを補足する手段があります。それが近年ビデオ会議システム上で組み込まれているチャット機能です。その場で音声として発言できなくても、出てきたアイデアをすぐにチャットに載せることで、アイデアが埋もれることを防ぎます。
モデレーターはチャットで流れるアイデアも拾い上げ、会話にフィードバックすることでそこからさらに深めることもできます。これは従来のビデオ会議システムにはなかった機能で、オンラインでのビデオ会議だからこそ可能になった手段です。
⑥ アイデアの可視化を行う
書記を決めて会議内容を常に共有しておき、だれでも書き直せるようにすることで生み出したアイデアを埋もれさせないようにすることができます。会議を録音/録画する機能が使えるシステムであれば、このシステムを使うことも有効です。
また、情報を可視化する方法として、オンラインでのマインドマップを作る機能を同時に使用することで視覚的な刺激を与えることができます。
⑦ 静寂の時間を作る(クワイエット・ストーミング)
「静寂」の時間もアイデアを生み出す源になります。沸騰させた頭に一度差し水をして再度沸騰させると、気づかなかった新しい世界が広がります。例えば5分間休憩を取ってその間に参加者それぞれにアイデアを書き出してもらい、その後に見せ合うという手法です。
これまでの会議の方法をビデオで再現するという考え方ではなく、新たな手段として、最新の機能を生かしながら進化させていくことがスタンダードになっていくと感じています。
いつかは、情報の経路(次元)がもっと増え、自分の体感や感情までも電子情報で遠くに伝えることができるようになる可能性もあります。テクノロジーの進化は新たな発想法を生み出すことでしょう。