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新型コロナがもたらす「リモコンライフ」No.3

2020/08/28

「新しい時間割」から生まれる、新しい家族のつながり。

お互いの距離は離れていても、テクノロジーを上手に使うことで、今までよりも近くに感じられる。ちょっとした発想の転換で、まったく新たなつながりが生まれる。新型コロナをきっかけにして始まりつつある新しいライフスタイルは「リモコンライフ」(Remote Connection Life)といえるものなのかもしれません。リモコンライフは、Remote Communication Lifeであり、Remote Comfortable Lifeも生み出していく。そうした離れながらつながっていくライフスタイルの「未来図」を、雑誌の編集長と電通のクリエイターが一緒に考えていく本連載。
3回目は「VERY」の編集長・今尾朝子さんに伺いました。


<目次>
【リモコンライフストーリー#03 新しい時間割】
新しい時間割から、新しい自由が生まれる
ママの「ひとり時間」が夜から早朝にシフトする
ポジティブママの新しい気づきが、新しい行動を生む
イケてるダンナは「シェアマインド」
会えないけど身近に感じられるコミュニケーションを大事にする

 

【リモコンライフストーリー#03 新しい時間割】

(カツミ アヤコ/メーカー勤務/33歳の場合)

新型コロナをきっかけにリモートワークの普及が進み、働くパパもママも家にいることが多くなりました。当然、家族のあり方や夫婦関係にも変化が起きているはずですが、「いちばん変わったのはそれぞれの『時間割』です」と「VERY」の今尾編集長は強調します。

「今まで働くママたちは会社が決めた『時間割』や子どもの学校の『時間割』にどうにか自分を当てはめて、なんとかやりくりしてきた。だから、リモートワークをきっかけに、今まで『できない』と思い込まされていたことが、『あ、時間の使い方さえ変えればできる!』と思った人が多かったようです」

そんな今尾編集長の示唆をもとに、新型コロナによって、「ママの時間」や「夫婦関係」「家族のつながり」はどう変化するのか?ちょっとしたストーリーにまとめてみました。 

野澤友宏(電通1CRP局)

リモコンライフイラスト
イラストレーション: 瓜生 太郎


早朝5時。駒沢公園からほど近いカフェのテラス席は、ランニングを終えたばかりの客で埋まっている。アヤコは店の中に入り、いちばん奥の壁際にあるテーブルを選んで座った。

「ハーブティーをお願いします」アヤコは注文を終えるとマスクを外して、カバンから本とノートを取り出した。リモートワークの日は、4時半に起き、このカフェで「ひとり時間」を過ごすことにしている。好きな本を読んで、思いついたことを書き留める。ただそれだけをする時間が、どうして今までとれなかったのだろう……。

会社から帰って夕食の準備をし、今年4歳になる娘を寝かせる。夫が帰ってくるまでの間に持ち帰った仕事を片付け、ヘトヘトになって就寝。朝は化粧をする余裕もないほどバタバタと子どもを保育園に送り出した後、出社。「自分の時間」というものが家族の時間割のどこにも存在しなかった。アヤコは、カフェで1時間を過ごした後、商店街の老舗ベーカリーへ向かった。公園のカフェが朝5時に開けるようになってから、商店街にも早くから開ける店が増えてきた。このベーカリーも朝6時には辺りに焼きたての香りを振りまいていた。

「今日は天気もいいし、テラスで食べようよ」帰宅したアヤコに、リビングでトレーニングを終えたばかりの夫が声をかけた。外出自粛期間中、夫が急にリビングで筋トレができるようにしたいと言いだした。リビングの真ん中を占めていたローテーブルを撤去してみると、意外にも体を動かすのに十分なスペースができた。朝は夫が使い、昼は子どもがダンスをし、夜はアヤがスローヨガをして活用している。リビングがスタジオ化したこともあって、食事などをテラスでとることが多くなった。テラスにキャンプ用のテーブルセットを置いただけだが、夫婦の会話も去年より増えた気がする。

「今日は出勤の予定だったんだけど……」と夫が厚めにカットされた食パンをかじりながら言った、「イッカイでやることにするよ」。「イッカイ」というのはマンションの1階にあるワークスペースで、それまで応接スペースだった場所がコロナをきっかけに改装され、今は住人が「在宅勤務」をできるスペースになっている。夫はそこを好んで使っているが、アヤコは家の中で仕事をした方が何かと気が休まるので、今まで寝室にあった“メイクスペース”(とは名ばかりのただの物置)だった場所を片付け、「ママ部屋」として使うことにしていた。

「多分、12時から2時間くらい空くからランチは僕が作るよ。何がいい?」アヤコが答えるより早く「パスタ!」と娘が声を張り上げる。「オッケー!じゃあ、行ってくるよ」と言って夫がTシャツに短パンスタイルのまま家を出た。結婚してから8年、時には「優柔不断」で「頼りない」と思ったこともあったが、最近ではその柔軟性に感謝することが多い。学生時代からの親友で絶賛婚活中のマキがいうには、イマドキの理想の男性像は「3柔」なのだという。「物腰が柔らかい。頭が柔らかい。働き方が柔らかい」のことらしい。たしかに夫婦揃って在宅勤務になってもストレスなくやっていけるのは、夫が「3柔」であるおかげだった。

11時。2件ほどリモート会議を終えたところでインターホンが鳴った。「お、きたぞきたぞ……」今夜は、新潟にいる夫の親戚たちとリモートディナーがある。今まで盆と正月の2回しか揃わなかった面々が、今では月1回のペースで顔を合わせている。米寿の祖母もひ孫と話せるのを毎回楽しみにしている。リモートディナーのちょっとしたコツは、みんなで食べるものを揃えること。アヤコは、以前お取り寄せをしておいしかった仙台の牛タンを再度注文し、それぞれの親戚の家に「お取り分け」しておいた。そして、きっと、新潟からもおいしいものが……。

「クール便のお届けにあがりました」──海老かな?蟹かな?なんだろう……?アヤコは息を弾ませながら「はーい!」とインターホンに向かって声を張った。

(このストーリーはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません)

 

新しい時間割から、新しい自由が生まれる

上記の「リモコンライフストーリー」のヒントにさせていただいた「VERY」編集長・今尾朝子さんのインタビュー内容を、ぜひご覧ください。

リモート取材に応じていただいたVERY 今尾編集長(下段は、電通の「リモコンライフ」チームメンバー)
リモート取材に応じていただいたVERY 今尾編集長(下段は、電通の「リモコンライフ」チームメンバー)

雑誌「VERY」で大事にしているのは、とにかく読者の声に耳を傾けること。読者の声には、小さくても笑顔になれる、ポジティブに生きてみようと思えるヒントが、必ず隠れている。そんなヒントを丁寧に見つけて、読者にお届けしたい。それが、私たちの編集方針です。

ステイホーム期間以降、子どもが家にいて、夫も妻も狭いスペースでリモートワークとなるとカオスそのもの。多くは妻側の負担が大きく、子どもの勉強を見ながら仕事をし、都度食事を用意するのは相当ハードなこと。それでも働くママたちからよく聞かれるようになったのは「リモートワークっていいこともいっぱいある」という声。

私たち、とりわけ子育て中のママは、学校や企業や社会が定めた「時間割」に無理やり自分を押し込めて暮らしてきました。でも、リモートワークになってやっと従来の「時間割」から自由になるきっかけができた。「ステイホーム」という暮らしをする中で、一番の気づきはそこにあるような気がします。

VERYの読者は、とてもフレキシブルな発想で、もともと自由な時間を楽しんでいる方が多い。オシャレやお買い物も、自分らしく楽しむ。いたずらに流行りを追いかけるのではなく、機能的で心地いいものにセンスを見いだす。そうはいっても、知らず知らずのうちに誰かが決めた「時間割」に縛られていたのだ、ということに気づかされた。でも、考えようによっては、働くママにとっても、専業主婦にとっても、これはチャンスだと思うんです。私たちは、もっと自由に生きられる。もっと軽やかに生きられる、ということなのですから。

ママの「ひとり時間」が夜から早朝にシフトする

従来の「時間割」が変わった分かりやすい例として「早朝の時間」があります。ママたちにとって「ひとり時間」は、子どもが寝静まって夫が帰ってくるまでの時間くらいしかなかった。あったとしても、ダンナさんが早く帰ってきてバトンタッチしてくれて飲みに行くとか、週末に夫が子どもを公園に連れ出してくれるちょっとの時間とか、せいぜいそんなレベル。

でも、通勤時間が減って、子どもの送迎が減って、早朝の時間が「あ、こんなに豊かだったんだ」って気づいた人がたくさんいたみたいです。例えば、早朝に散歩に行ってそれまで意識していなかった鳥の声が耳に入ってくる。そんなことからいろんな気づきが生まれてくるようになり、生活全体が豊かに変わっていく気がします。

ポジティブママの新しい気づきが、新しい行動を生む

今までのママって忙しすぎて、おうちに構っていられなかった。それがこの外出自粛期間に、「子どもに運動させるには?」とか「家が小さいながらもどうすればリモートワークを上手くできるか?」とか真剣に考えるようになると、「リビングってどうあるべきなんだろう?」とか「テレビって本当はどこに置くべきなんだろう?」とか家への既成概念を取っ払わないと解決できないこともたくさん出てくる。

中には、「あ、テラスも家なんだ」というシンプルなことに気付き、 テラスを有効活用して居心地いい空間をつくったり。リビングで子どもと一緒にダンスやヨガを始めたという声もたくさん聞きました。ポジティブなママたちがちょっとした気付きをきっかけに行動を変え始めている兆しもたくさん見えてきています。 ステイホーム期間中は、発想の転換をする余裕とか想像力を発揮させる時間にもなったと思いますね。

イケてるダンナは「シェアマインド」

コロナをきっかけに「理想の夫」像も変わっていくかもしれません。簡単にいうと、「シェアマインド」を持っているか。一緒に「時間割」をつくれるかどうかがすごく大切になってくる気がします。コミュニケーション能力というと普通に聞こえてしまうけれど、新しい変化に直面したときは、お互いの役割やルールを話し合って更新して、また話し合って更新して、と地道に繰り返していくしかないはずなんです。

なので、そういう地道なコミュニケーションが得意な人かどうかは、結婚相手としてすごーい大事なんじゃないかと思います(笑)。お互いができること全部を可視化して、「じゃあ、これはどっちがやろうか?」とスムーズに話し合える能力が男性側に必要になってくる気がします。

夫だけじゃなくて、子どもにも「全体が見える力」が必要になってくるかもしれません。家事はもちろん、生活全体の中で「あれはママがやってたんだね」「でも、あれはパパがやってたんだ」って見えている子は、どんな状況になっても強いじゃないですか。社会全体を見渡したときにも「あ、これは誰がやってるんだろう」っていう想像力だったり、今まで当たり前にあったけど「これ、誰かがやってくれているんだよな」っていう気遣いだったり、そういうセンスを育てられるとホントにいいですね。

会えないけど身近に感じられるコミュニケーションを大事にする

オンライン飲み会じゃないですけど、遠方にいてなかなか会えない仲のいい友達同士でつながって食事をするとか、そういうものはずっと残していきたいですね。私の家でも、99歳のひいお婆ちゃんから3歳のひ孫までがオンラインでつながる親戚ディナーを毎週やってるんですけど、確実にコロナ前よりも「会う回数」が増えています(笑)。

「VERY」読者は、会えない中でも気持ちを伝えるコミュニケーションはすごく好きだし大事にしているので、お中元お歳暮っていうと言葉がカタいんですけれども、近場で手に入れたものお互い贈り合ったり、お取り寄せしておいしかったものをおすそ分けするとか、そういうコミュニケーションは今後ますます増えそうだなって感じています。

ステイホーム期間中は「思いの伝え方」をいろいろ考えた時期であって、「会えないけどすごく身近に感じる」ためにはどうしたらいいかっていう発想をいろいろ考えるきっかけにもなったのかなと思っています。


【リモコンライフチームメンバーより】

今尾編集長のお話の中から見えてきた、
リモコンライフをより楽しむためのキーワードはこちらです。

◉ 早朝消費 
◉ 朝5時オープン 
◉ リビング化するテラス 
◉ スタジオ化するリビング
◉ ママ部屋、パパ部屋、子ども部屋 
◉ マンションにコワーキングスペース
◉ 理想の男性は「3柔」  
◉ リモート帰省 
◉ オンラインディナー 
◉ ステイホームパーティー 
◉ お取り寄せ&お取り分け

新型コロナウイルスで、私たちのライフスタイルはどう変わるのか──人々の暮らしの中にまぎれたささいな変化や日々の心の変化に目を向け、身近な “新常態”を未来予測し、新たな価値創造を目指したい。この連載では「リモコンライフ」という切り口で、その可能性を探っていきます。

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