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SDGs達成のヒントを探るNo.7

2020/09/09

高齢化によるごみ問題って?ごみからSDGsを考える

京都大 地球環境学堂 准教授の浅利美鈴さんは、ごみに関する研究に取り組み続けている、いわば“ごみのスペシャリスト”です。「京大ゴミ部」を創設し、エコキャンパスに変える取り組みを推し進めたり、プラスチックごみや災害廃棄物を減らす地域活動に取り組んだり…。「ごみ」「環境」「SDGs」に関する研究と活動を精力的に行っています。

そんな浅利さんに、活動内容や、「ごみの今とこれから」についてお聞きしました。レジ袋有料化についてのご意見や、ごみを減らすためにできることなど、ごみにまつわるあれこれをたっぷり語っていただきます。

浅利美鈴氏
京都大 地球環境学堂 准教授の浅利美鈴氏。学内や地域の環境改善活動、SDGs活動を牽引している。
 

大学を変えるため「京大ゴミ部」を設立!ごみ研究の道へ

──浅利さんは、京大で教鞭を執りながら、SDGsに関するさまざまな活動を牽引していらっしゃいます。活動の原点は、学生時代に立ち上げた「京大ゴミ部」だったとか。まずは、「京大ゴミ部」設立の背景や活動内容についてお聞かせください。

浅利:私が入学した1996年当時の京大は、全体としては環境問題とはかけ離れた大学でした。さまざまな研究が行われていることもあって、24時間、煌々と、不夜城のように電気がついているのが当たり前。実験器具の清掃などに使う高価な紙ふきんをはじめとする消耗品も、バンバン使われては捨てられているという状態でした。この光景を目の当たりにして、とても驚き、衝撃を受け、「これはなんとかせなあかん」と思い、「京大ゴミ部」を立ち上げました。

「京大ゴミ部」では、主に、学内にISO14001(環境マネジメントシステムの国際規格)を導入するための調査・提言活動を行っていました。提言書を作成したり、当時の総長である長尾誠先生に直談判をしに行ったり…。他に、所属する研究室や新しくできた桂キャンパスで、テスト的にISO14001を運用するという取り組みも行っています。

こうした活動を後輩に引き継ぎながら、5年、10年と続けることで、少しずつ学内の空気が変わっていき、環境保全に取り組む土壌が出来上がっていきました。その後「京大ゴミ部」は、学内だけでなく地域の人たちとともに持続可能なキャンパスの実現を目指す「エコ~るど京大」というプロジェクトに発展し、現在も活動を続けています。

──在学中に始めた活動が今も続いているというところがすごいですね…。一方の“学問”についてはいかがでしょう?どんな研究室に所属され、研究をされていたのでしょうか。

浅利:学生時代は、ごみ研究の第一人者でいらっしゃる高月紘先生(現・京都大名誉教授、京エコロジーセンター館長)のもとで研究活動を行っていました。特にごみ問題に関心があったというわけではないのですが、「京大ゴミ部」を主宰していたこともあり、たまたま出会った高月先生が、私の取り組みやマインドにぴったりはまったのです。

ちなみに高月先生は、漫画家として活動しながらごみ研究をされているという、とてもユニークな先生なんですよ。高月先生と出会ったことで、ごみ研究の道に進むことになり、現在に至るまで、ごみを中心とした環境問題を扱い続けています。

今注目されているのは、「プラスチックごみ」と「高齢化によるごみ問題」

──課外活動と研究の両輪で、常に環境やごみというテーマと向き合い続けてきた浅利さん。浅利さんから見た「日本のごみ」は、今どのような状況にあるのでしょうか?トレンドやホットワード、課題などについてお聞かせください。

浅利:今、最も熱いのは、やはり「プラスチックごみ」ではないかと思います。「プラスチックごみ」については、レジ袋が有料化されたこともあり、一般消費者の関心度がかつてないほどに高まっていると感じています。

つい先日、「コンビニのレジ袋の辞退率が7割を超えた」というニュースが流れましたが、多くの方が、「減らせるな」と実感されているのではないでしょうか。ただ、レジ袋って、プラごみ全体に占める割合は、5、6%程度にしかすぎないんですよね。決して少ないとは言い切れませんが、多いとも言えません。ですから、これで終わってしまってはいけないのです。その他のプラスチック製品もレジ袋と同様に減らしていかなければならないと考えています。

レジ袋の次に減らさなければならないプラスチック製品は、なんといってもペットボトルでしょう。ペットボトルを減らすには、とにかく「身近にある水を飲めるようにする」ことが欠かせません。水道に浄水器をつけてみたり、マイボトルに水をくんで持ち歩いてみたり…。こうしたごくごく当たり前のことを、一人でも多くの人にやっていただけるとありがたいなと思います。個人のご家庭だけでなく企業にも、ぜひ浄水器や給水機を導入していただきたい。職場のインフラとして、水回りの環境を整備していただけるとうれしいですね。

──お客さまに対してペットボトルのお水を出す企業もまだまだ多いように思います。それが浄水器のお水やお茶に切り替わるだけで、プラスチックごみの大きな削減効果がありそうですね。

浅利:はい。そう思います。個人の活動も大切ですが、企業のインパクトの大きな動きというのも重要です。

もう一つ、避けては通れないのが、「高齢化によるごみ出し困難」の問題です。ここ数年で明らかにごみを出せずにため込んでしまう高齢者が増えました。また、ごみの内容も、例えば介護用の紙おむつや一人用のお惣菜パックなどが増えるなど変化しており、従来の回収の仕組みや処理設備では十分に対応できなくなることも予想されます。

これから日本は、諸外国が体験したことのないような未曾有の少子高齢社会を迎えます。高齢化によるごみ問題の変化も、そう遠くないうちに大きな問題になることでしょう。まさに待ったなしの状態で、真剣に考えなければならない時期にきていると思います。

自治体ばかりに頼るのではなく、個人、企業が立ち上がって、積極的に高齢者からごみを回収するための仕組みを考えなければなりません。自助公助のコミュニティーづくりや、高齢化に伴って増えてきたごみに適した回収・処理方法の整備などを、急いで進めなければならないと考えています。


「災害廃棄物」の処理問題にも向き合う必要がある

──浅利さんは、災害廃棄物の処理問題にも取り組んでいらっしゃいます。令和2年7月豪雨の際にも被災地に入り、支援活動をされていました。どんな活動を行っていたのでしょうか?

浅利:熊本県人吉市の災害廃棄物仮置場で、「事前にごみを分別し、品目ごとに回収する」という、全国初の取り組みを支援しました。台風や水害の被災地では、災害廃棄物を捨てるための渋滞が頻繁に起こります。

渋滞の主な原因は、被災者との情報共有がうまくいかず、受け入れ方法が伝わっていなかったり、トラックにさまざまな種類のごみを混載していて、積み下ろしに手間取ったりするから。荷下ろしの際に分別が発生するため時間がかかってしまい、後続の車が入れずに道がつかえてしまうんですよね。

そこで、リーフレットを配布するなどして「事前にごみを分別し、例えば、畳なら畳だけ、木材なら木材だけと、1品目のごみのみを搭載してきてほしい」ということをアナウンスし、また、仮置場での誘導などを行いました。

夏場に水害に遭い床上浸水をしてしまうと、濡れた畳をはじめ、いろいろなものが数日で悪臭を放ち始めます。泥水で湿ったごみは、細菌や害虫の温床にもなりかねません。ですから、少しでも早く、スムーズにごみを運び、処理をしなければならないのです。ただ、これがなかなか難しい。いろいろと試行錯誤してやり方を模索しているのですが、まだまだうまくいっているとはいえません。今後も研究と工夫を重ねなければならないと思っています。

──ごみの分別以外に、一般市民や企業ができることは何かあるのでしょうか?災害廃棄物の問題を見越した暮らし方などあれば教えてください。

浅利:平時から不要なものを溜め込まないようにしていただけるとよいと思います。まずはもの自体を減らすようにしてみてください。あとは大切なものを2階より上の階に運んでおくということも有効ですね。

もう一つ、意識していただきたいのが、「高齢化」のところでもお話ししたように自助公助の仕組みづくりに参加しておくことです。熊本の災害では、コロナの影響でボランティアの数が足りず、なかなか片付けが進まないということが発生しました。いつ何があるのか分からないのが災害です。複数の災害が発生したり、他県の助けを借りられないケースがあるかもしれません。そういうときのためにも、先に述べた高齢化に対応するためにも、これからますますご近所さんとの良好な関係を構築しておくことが重要になるのではないかと考えています。


足元から変わらなければなにも変わらない!直感を大切に行動しよう

──ごみ問題の解決に向けて、企業に対してアドバイスをお願いします。

浅利:これからは「シェア」がカギになるのではないかと思います。カーシェアや傘のシェア、シェアオフィスなど、既にさまざまなシェアサービスが存在していますが、この領域には、まだまだビジネスチャンスがあると思うのです。ぜひとも、積極的に、新しいシェアサービスを開発していただきたいですね。

併せて、職場でのシェアにも取り組んでいただけると幸いです。水だけでなく、文房具やエコバッグ、ワークスペースなど、あらゆるものをシェアする形でインフラ整備を進めていただけたらうれしいです。

──最後に、「情報の受け止め方」についてお聞かせください。SDGsや環境問題に関する情報は、ネットを検索すると山のように出てきます。中には不安をあおるような表現や、正誤の判断がつきにくい情報も。私たちは、多くの情報の中から、どのようにして正しい情報を受け取ったらよいのでしょうか?

浅利:これ、よく聞かれるんですが…。私はいつも「主観で判断してください」と回答しています。「これはいいやろ」とか「これはあかんやろ」とか、そういう直感のようなものを大切にしてほしいんですよね。余計な情報を入れ過ぎないようにして、自分の頭でちゃんと考え、そしてパッと判断する。そうやって掴んだ情報や判断は、正しいことが多いように思います。

頭でっかちにならず、しっかり考え、そしてできることから少しずつやっていけば、必ず何かが変わります。「ごみ問題を解決しなければならない」「SDGsを達成しなければならない」と難しく考えずに、まずは足元から行動を。動く人が増えることで、日本が、そして世界が、やがて持続可能なものへと変わっていくと思っています。

TeamSDGs

TeamSDGsは、SDGsに関わるさまざまなステークホルダーと連携し、SDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発などを行っています。

TeamSDGsのウェブサイトでは、ウェブ電通報とは違う切り口で浅利さんのインタビューを紹介。併せてご覧ください。

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