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トレジャーデータと電通が駆動させる、DXのエンジンNo.2

データ活用が、広告クリエイティブの領域を拡張する

2020/11/12

DX(デジタルトランスフォーメーション)の適用範囲は多岐にわたります。例えば、生活者とのコミュニケーション手段である「クリエイティブ」においても、デジタルデータの活用は避けて通れません。

先日、電通・電通デジタルは、クライアントのDXを推進し、そのビジネスを加速するために、国内屈指のCDP (カスタマーデータプラットフォーム)である「Treasure Data CDP」を提供するトレジャーデータとの協業を開始しました。その理由はまさに、クリエイティブとデータの密接な関係にあります。

電通でデジタルクリエイティブを専門とする並河進氏、電通で事業変革支援を推進する三浦旭彦氏、トレジャーデータでマーケティングシニアディレクターを務める堀内健后氏に「クリエイティブにとって、データはどんな存在になり得るか?」を聞きました。

<目次>
「全部試そう」ではなくクリエイティブの軸を定めることが重要
クリエイティブの質は「データの量と質」で決まる
データ分析にもクリエイティブにも求められる「削ぎ落とす力」
データの活用で広がるクリエイティブの領域

「全部試そう」ではなくクリエイティブの軸を定めることが重要

──デジタルデバイスを通じて、企業と生活者が常につながっている時代になっています。そこに生まれるビッグデータをビジネスに使っていこうという話も普及してきました。こうした状況の中で、広告制作の「クリエイティブ」の現場では何が起きていくのでしょうか。

堀内:データ活用が進み、顧客個々人のニーズに合わせて細かなアプローチをしやすくなってきました。しかしその結果、「顧客ニーズに合わせてできるだけ多くのクリエイティブを試したい」という企業側の思惑から、現場のクリエイターが疲弊するようなことも起きています。明らかに需要が過多になっていて、例えば少し前には、クラウドソーシングでやたらと大量の広告バナーを発注しているケースが見受けられて、疑問を感じていました。

並河:データで細かく顧客ニーズを分析できるようになり、打ち手の選択肢が増えていくのはうれしいことですが、一方で、やることが無限に増える苦労もあるわけです。クライアントと話していると「全部試してみよう」という流れになって、クリエイティブの軸が定まらないケースもあります。

三浦:選択肢が増えたから、全ての打ち手をフラットにやるべきなのか?そこは検討すべき課題ですね。

並河:だからこそ、クリエイティブ以前に、大きな戦略の下でのディレクションが重要になってきています。そのためには、広告クリエイティブ以前に「誰でも分かるワードで戦略を言語化する」ことが必要です。戦略が言語化されることによって、クライアントも、広告会社も、「なら、こういうクリエイティブが必要だ」という「芯」を共有できます。

クリエイティブの質は「データの量と質」で決まる

堀内:芯になる部分がないと、いくらデータがあってもクリエイティブは難しいですよね。なぜこのビジネスをやっているのか、という「Why」の部分や、理念、ブランド、カルチャーがないと、CDPでデータを集めてさあ使おうとなっても、さて何をするんだっけとなります。

ですから、電通・電通デジタルと「クライアントのデータ活用支援」の分野で協業していく理由のひとつは、クライアントの理念やカルチャーを咀嚼した上でのアウトプットに、われわれが期待しているからです。並河さんの言う「誰でも分かるワードでの戦略の言語化」も、そうしたアウトプットを生むために必要な工程のひとつですね。

並河:はい。堀内さんのおっしゃるように、アウトプットとしてのクリエイティブの質は、クライアントの事業をどこまで理解できているかという「インプットの質」にすごく関わってきます。クライアントの経営課題、事業課題にまで踏み込んで一緒に考えさせていただくと、アウトプットが良くなります。

今回トレジャーデータと協業していくことの一番の意味は、このインプットの部分の質を上げられることだと思っています。つまり、従来のようなクリエイターの経験や勘だけでつくるやり方よりも、トレジャーデータと一緒に質の高いデータを見て提案した方が、アウトプットの質が上がるという期待です。

堀内:トレジャーデータは、データの「量」的な部分と、顧客個々人を理解するための「データバリエーション」を担保できます。それを分析して「質」に転換していくのは、当社と電通デジタルで行い、良質なインプットとして並河さんたち電通のクリエイターに渡して良いアウトプットを出してもらおう、ということですよね。

データ分析にもクリエイティブにも求められる「削ぎ落とす力」

──逆に「余計なインプットがない方が良いクリエイティブが生まれる」というケースもあるのでしょうか?

並河:僕は、インプットは絶対に多い方がいいと思っています。「クリエイターにこんなデータを見せると、逆に混乱するだろう」と気を使って、あえて見せてこないプロデューサーもいますが、僕はそれは違うと思うんです。

例えば、クライアントが「今月の売り上げはどうだったか」とか生々しいテーマの会議をしている場の端っこにいて、何も言わずにコピーを考えていると、情報が無意識に降ってきて、良いアイデアが浮かぶこともあります。

三浦:多分、プロデューサーが心配しているのは、クリエイターの頭にあまり情報を入れ過ぎちゃうと、発想の幅が狭まって、ありきたりな表現になってしまうのではないかということなんでしょうね。

並河:とはいえ、クライアントの課題にはいろいろなレイヤーがあるので、本当はあらゆる情報があった方がいいんですよ。「今この瞬間の課題」だけを渡されて、そこにフォーカスしてしまうと、本質的でない、対症療法的なアウトプットになってしまいます。

堀内:例えば、長い歴史のある会社で、直近の3年だけの情報を切り取っても、本質的ではありませんよね。創業期の創業者の思いだとか、どういう変革を遂げたのかという、そのブランドの根幹みたいなところを、並河さんたちが理解してくれた方が、良いクリエイティブができると僕も思います。

三浦:そのたくさんの情報の中から、求められている課題に対して、適切な情報を取捨選択できるか否かも重要ですよね。クリエイティブは「情報を削ぎ落とす」ということが根本にあるんです。同じようにデータ分析も、本当に必要な部分はどこかを見抜き、不要なデータを削ぎ落とせるかというところに、スキルが必要だと思いますね。

並河:「不要なデータを削ぎ落す」ということでいうと、少し話がずれるかもしれませんが、例えば「このクリエイティブならコンバージョン率が高い」というデータがあったとして、でもブランドのためにはやらない方がいいことってあるじゃないですか。言語化されていないけれど、その企業の中に漠然とカルチャーとしてあって、実はそこが強い競争力になっていることってありますよね。そこの判断は、データだけではできません。

クリエイティブをやる上で、歴史があるクライアントの哲学の深さみたいなものは、すごく難しいと思いながらいつもやっていますが、そういう部分にこそクリエイターが力を発揮できる余地があるんだろうなとも思っています。

データの活用で広がるクリエイティブの領域

──前回の鼎談では「DX時代のマーケティングにおいては、データ基盤と顧客体験の二つのエンジンが必須となる」というお話が出ていました。クリエイティブの観点からの「データ基盤×顧客体験」について教えてください。

並河:「データ基盤×顧客体験」といっても、ファネルの位置によっていろいろありますので、それぞれ分けて説明します。

まず、「新規顧客獲得」の領域です。以前は、「新規顧客獲得の領域」と「顧客になった人たちのLTV(※1)を最大化していく領域」で、取り組んでいることは完全に分かれていました。しかし今は、「新規獲得の段階から最終的なLTVが高い顧客を獲得していこう」という流れになっています。企業の持つファーストパーティーデータを活用して、LTVの高い既存顧客の傾向を分析し、そこに向けてクリエイティブをつくっていく取り組みです。

※1 LTV=Life Time Value、顧客生涯価値。ある顧客から将来的・長期的に得られるであろう利益を含めて考える指標。
 

次に「オンライン接客からCRM」の領域です。新型コロナウイルスの流行もあり、これまでオフラインの購買接点しかなかったクライアントも、オンライン接客の場づくりを始めています。その流れで、オンライン接客と既存のオフライン接客の場とをマージしていく、いわゆる「OMO」(※2)を、クリエイティブも含めて取り組んでいくお話が増えています。

※2 OMO=Online Merges with Offline。オフラインとオンラインの融合・包摂を示す概念。顧客接点や販売チャネルを「ネットとリアル」のように区別せず、あくまでも生活者の体験価値を中心に据える考え方で、ビジネス以外の領域でも浸透しつつある。

 
顧客体験(CX)とCDP

今後、どういうふうにオンラインとオフラインのつながりを膨らませて、しかもそれを顧客のカルテとしてデータ化し、Treasure Data CDPの中に蓄積していくかというところを、今まさにクライアントと話しているところです。OMOは、クリエイティブも含めて今盛り上がっている領域ですね。

堀内:今はコロナ禍で新規顧客獲得が難しい状況ですから、既存顧客に対してCRMをちゃんとやっていくことが大事です。そのためには、カスタマーサクセスにつながるDXをどう実現するかというのが、多くの企業の持つ課題ですよね。

並河:マス広告などと違って、CRMの領域では、顧客と1to1の世界になってくるじゃないですか。その領域のクリエイティブをどうしていくかというところは現在、試行錯誤しているところです。

一例として、電通デジタルが取り組んでいるコネクテッドカーのプロジェクトがあります。このプロジェクトでは、電通デジタルのクリエイティブメンバーがTreasure Data CDPを使い、顧客属性やさまざまな行動のパターンに応じて、「この日長距離ドライブした人たちにはこういうメッセージを出す」といった形で、さまざまなパターンのメッセージをつくり分けています。

一口にCRMと言っても、NPS(※3)向上、クロスセル、アップセル、目的はそれぞれですが、「1to1の顧客体験づくり」の設計は、こうしたデータ×クリエイティブの力でもっと高度化したいと思っています。

※3 NPS=Net Promoter Score。企業やブランドに対する顧客ロイヤルティー、および顧客の継続利用意向を示す指標で、「顧客推奨度」などと訳される。
 

堀内:CRMの中での顧客体験の高度化はやらなくてはならないし、そのためには「1to1」のクリエイティブが高度化されなければならないと、僕らも思っています。

三浦:データ×クリエイティブによる顧客体験の高度化、これは大きなテーマですね。資料請求をさせる、購入させるといった「点」だけを狙うコミュニケーションではなく、商品・サービスとの一連の顧客接点の体験で、「幸せ」をつくることを目指す。生活者ファーストでマーケティング支援をしてきた電通だからこそ実現できる、CXマネージメントではないでしょうか。

並河:また、既存顧客との日々のコミュニケーションを高度化していくことに加え、クロスセル、アップセルするようなサービス開発をやっていく必要もあります。

ちなみに、実は「サービス開発・事業デザイン」というのは国内電通グループが非常に力を入れている領域で、実際にクライアントの経営課題から一緒に構想を考えていくケースや、サービス化に向けた事業デザインを支援する仕事も増えています。

私も先日、あるクライアントから「社内に新しいDXの組織をつくることを考えている」と相談を頂きました。そこで、アジェンダの整理から、どうやってDXを推進していくべきかを一緒に推進する「組織支援」の提案をしようとしています。半年か1年後ぐらいにサービス化まで昇華できるのではないかと思っています。

今の話もそうですが、今後は従来の「広告会社のクリエイター」が取り組む仕事の領域はどんどん拡張されていくでしょう。いわば「クリエイティブ領域の拡張」ですね。マーケティングのデジタル化から始まって、CRMの体験自体も少しずつ変えていって、さらには事業のデザイン、そんな順番かもしれないですね。

堀内:データを活用することで、クリエイティブが「事業デザイン」の領域までを担えるという話は、クリエイティブ領域の再定義として、今回の鼎談で各企業に伝えたいメッセージですね。

並河:「表現すること」にずっと携わってきた広告クリエイターだからこそ持っている、「アウトプットのイメージをちゃんとつくれる」というスキルは、これからのデータ時代、1to1の時代にますます生きてくると思っています。そのスキルを「データ」と掛け合わせることで、CRMの高度化から事業デザインまで、幅広くクリエイティブ領域を拡張していきたいです。


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