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相手の立場で、モノを言え!No.2

時代の「モヤモヤ感」を、サイエンスしてみましょう

2021/06/11

「人前に立つのが苦手」「緊張して、思っていることを上手に伝えきれない」誰でも、多かれ少なかれ、そうした悩みを抱えているのではないだろうか。この連載では、コミュニケーション戦略研究家にして、エグゼクティブ・スピーチコーチである岡本純子氏に「話し方」の極意を披露していただくことで、コミュニケーションというものの本質に迫っていこうと思う。

(ウェブ電通報編集部)


時代を「感」で語ること、もうやめませんか?

「閉塞感」「先行き不安感」「焦燥感」……コロナ禍で一気に加速した、ちまたにあふれるこの感情を端的に言うと「モヤモヤした感じ」ということになるのではないでしょうか?対人関係でも、そう。「ここまで言うと、パワハラになってしまうのかな?でも、ある程度は言っておきたい。でも、言えない」といったモヤモヤした気持ち。そうした誰もが感じている気持ちを「感」というワードで処理していては、なんの解決にもなりません。できることと言えば、今まで以上に空気を読んで、余計な行動を自粛するくらいです。

岡本純子氏:元読売新聞記者。記者時代にイギリス・ケンブリッジ大学院へ留学。米MIT客員研究員を経て、電通PRへ入社。アメリカでの研究を通じて、コミュニケーションのメカニズムを学ぶ。現在の肩書きは、「コミュニケーション戦略研究家」「エグゼクティブ・スピーチコーチ」。コンセプトやメッセージづくり、話し方の指導まで、社長やエクゼクティブのコミュニケーションをフルサポート。「アイドルなら秋元康」「社長なら岡本純子」を目指す「社長プロデューサー」でもある。これまでに、1000人を超える日本のトップ企業経営者・幹部に話し方を指導。その内容が、高く評価されている。近著に12万部のベストセラーになっている「世界最高の話し方」がある。http://www.glocomm.co.jp/
岡本純子氏:元読売新聞記者。記者時代にイギリス・ケンブリッジ大学院へ留学。米MIT客員研究員を経て、電通PRへ入社。アメリカでの研究を通じて、コミュニケーションのメカニズムを学ぶ。現在の肩書きは、「コミュニケーション戦略研究家」「エグゼクティブ・スピーチコーチ」。コンセプトやメッセージづくり、話し方の指導まで、社長やエクゼクティブのコミュニケーションをフルサポート。「アイドルなら秋元康」「社長なら岡本純子」を目指す「社長プロデューサー」でもある。これまでに、1000人を超える日本のトップ企業経営者・幹部に話し方を指導。その内容が、高く評価されている。近著に12万部のベストセラーになっている「世界最高の話し方」がある。http://www.glocomm.co.jp/

「モヤモヤ感」を、因数分解してみよう。

例えばなのですが、

〈モヤモヤ感 = 無知度 × 不透明度 × 不自由度〉

と定義してみてはどうでしょう?
言語化する方法を知らない。言葉を生き生きと表現する方法を知らない。伝えたいのに、伝わらない。そうした「無知」からくるイライラ感、ありますよね。そして、一歩先が見えない「視界が不良になっている状態」、つまり「不透明度」も気持ちをモヤつかせます。そして、何かが思い通りにはならない「不自由度」。

そのモヤモヤの根底にあるのが、日本の文化的な特殊性かもしれません。日本人は、いわゆる「村社会」の中で生きてきました。「村の掟」さえ守っていれば我が身や家族の安全が保証された。他人とのコミュニケーションも、わざわざ言語化する必要はなかった。あうんの呼吸とか、忖度といったもので、コミュニティーは成り立っていたのです。それがどういうことか。一言で言うなら「空気で人を動かすことができる」という妄想がはびこっている社会、ということになります。「ここはまあ、いい感じで」とか、「皆まで言わせるなよ、察しが悪いなあ」といった日本人特有の、前時代的な考え方は、グローバルには一切通用しません。それどころか、同じ日本人同士であっても、若い世代とのコミュニケーションですら、もはや成立しないのです。

この連載のタイトル「相手の立場で、モノを言え!」の意味が、徐々にお分かりいただけているのではないか、と思います。「察してくれよ」とか「それはまあ、昔からそういうものだから」といった考えは、要するに自分中心の「I(自分)発信」のコミュニケーションを相手に強要しているに過ぎません。

ニューヨークのアクティングスクールでの修業風景。ニューヨークには、コミュニケーションを学ぶ場が星の数ほどあります。 プレゼン、スピーチ、即興劇、ストーリーテリングからボディランゲージスクール、「恥ずかしがり屋研究所」まで、「人見知り」「プレゼン下手」を克服するために、ありとあらゆるクラスやワークショップに通いました。最も効果を感じたのが、アン・ハサウェイが通っていたというブロードウェーのアクティングスクール。そこで演劇や発声を学ぶうちに、自分をくるんでいた厚い殻がパカッと外れた気がします。写真は「あばずれ娼婦役」を演じたときのもの。「役になりきる」は自信をつける最短の方法です。
ニューヨークのアクティングスクールでの修業風景。ニューヨークには、コミュニケーションを学ぶ場が星の数ほどあります。プレゼン、スピーチ、即興劇、ストーリーテリングからボディランゲージスクール、「恥ずかしがり屋研究所」まで、「人見知り」「プレゼン下手」を克服するために、ありとあらゆるクラスやワークショップに通いました。最も効果を感じたのが、アン・ハサウェイが通っていたというブロードウェーのアクティングスクール。そこで演劇や発声を学ぶうちに、自分をくるんでいた厚い殻がパカッと外れた気がします。写真は「あばずれ娼婦役」を演じたときのもの。「役になりきる」は自信をつける最短の方法です。

サイエンスが、「モヤモヤ感」から解放してくれる

大事なことは、例えばモヤモヤした気持ちを「感」ではなく、数値化が可能な「度」の掛け算にすることで、それは「話し方をサイエンスする」ということに直結します。マーケティング用語で言うなら、定性的でなく定量的に物事を捉える、ということです。海外では、まさに、コミュニケーションの効果がしっかりと数値で測られ、効果のある「型」や「方程式」が確立しています。

例えば、一見すると「愛社精神」が高そうな日本人ですが、「エンプロイー・エンゲージメント」という指標(数値)で見ると、世界でも際立って低いというデータがあります。胸に手を当てて考えていただきたいのですが、上司から「自分が勤めている会社を愛するのは、当然のことである!」などと言われても、「うーん。本音を言えば、そこまで会社のこと、愛してないんだけどな」というのが、正直な気持ちではないですか?

エンゲージメントを高めるのに欠かせないのが、社内コミュニケーションですが、そのやり方は「原始時代」レベル。誰も何も分からないままに、なんとなく脈々と行われる「伝統芸」と化しています。そのやり方に科学的根拠は何もなく、多くはもはや、時代遅れ。しかし、硬直的な上下関係に基づいたヒエラルキー的、スポ根的、精神論的なコミュニケーション手法ではこの変化の早い時代についていけないのです。

コミュニケーションの常識を抜本的にアップデートしていく必要がある、ということです。そのためにぜひ、「コミュニケーションの科学」を活用してください。日本では、勘と慣習で行われる「カンミュニケーション」化していますが、海外では、人類学、心理学、行動経済学、脳科学、演劇学などさまざまな分野で集約され、まさに学問としての知見が積みあがっています。

トマス・ピケティさんと一緒に。かの地では、「知の巨人」たちにも多くを学びました。講演会や公演で、コミュニケーションの鉄人たちの話し方を直接学べるというのもニューヨーク修業の醍醐味なのです。
トマス・ピケティさんと一緒に。かの地では、「知の巨人」たちにも多くを学びました。講演会や公演で、コミュニケーションの鉄人たちの話し方を直接学べるというのもニューヨーク修業の醍醐味なのです。

ロジカルに「エモーション」や「直観」を分析する。第一印象、信頼、好感度、自信……。こういった全てのものが、実は科学的に解析でき、世の中の、皆さんの多くの問題がコミュニケーションの力で解決できることをもっと知っていただきたいと考えています。 

岡本純子氏のHPは、こちら