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【グローバル】加速するサステナビリティー&サーキュラーエコノミーNo.5

2021/06/11

資生堂に学ぶグローバル経営【CSVフォーラムレポート1】

CSVフォーラムレポート
電通公共関係顧問(北京)有限公司提供

この記事では、2021年4月17日に日本・中国合同で開催されたCSVフォーラム特別編イベントをレポートします。第1回は資生堂のグローバルでのダイバーシティー経営、第2回はパナソニックの中国事業、第3回は中国の若手起業家を交えたパネルディスカッションの様子を紹介します。

※CSV=Creating Shared Value(共有価値の創造)のこと。企業活動の経済効果と社会課題の解決を両立させるという経営モデル。2006年にマイケル・ポーターが提唱。

なぜCSV×グローバルに注目なのか?

CSVフォーラム特別編は、日本のCSVを推進する名和高司氏と、中国のCSVを推進する鄭燕氏との共同企画で、日本と中国をオンラインでつないで開催された。テーマは「人と社会のWell-being 実現を目指して~資生堂・パナソニックのサステナブル経営~」で、5名で3時間に及ぶ議論が交わされた。

登壇者
【登壇者】※登壇順(写真は左から)
名和高司氏(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授)
鄭 燕(テイ エン)氏(電通公共関係顧問北京有限公司 代表)
魚谷雅彦氏(株式会社資生堂 代表取締役社長 兼 CEO)
本間哲朗氏(パナソニック株式会社 副社長 兼 中国・北東アジア社社長)
姚 松喬(ヤオ ソンチャオ)氏(野声/Wild Bound 創立者)

冒頭、名和氏が「日本ではCSVフォーラムは今年で8年目、2014年から毎月企業が集まります。中国ではCSVをCCSV(Co-Creating Shared Value)と呼び、鄭さんが活動の発起人です。1年半前から活動をご一緒しています」と鄭氏を紹介。

鄭氏からは「中国では今年サステナビリティーが大きなテーマで、消費者も企業のSafety・Quality・Reputationに注目しています。電通の調査でも示された通り 、中国ではサステナビリティーへの消費者の関心が高く、発信もさかんなので、CSVのムーブメントは日本よりも早く浸透する可能性があります」と課題提起がなされた。

CSVは日系企業が早くから注目してきた領域であるが、中国市場では官民一体となったスピーディーな浸透が予想されるため、日系企業も中国市場の実例からサステナブル経営を学べると感じさせるオープニングとなった。

電通公共関係顧問(北京)有限公司代表 鄭燕氏
電通公共関係顧問(北京)有限公司代表 鄭燕氏

創業時からCSV精神があった資生堂

第一部は、魚谷氏が登壇し、2年前に資生堂のミッションを「Beauty Innovations for a better world(ビューティーイノベーションでより良い世界を)」に改めて、魚谷氏自身が監修したイメージフィルムを、世界の全社員に共有したと語った。

魚谷氏は「化粧品会社は、化粧品を売ることが目的ではありません。化粧によって元気になり、幸せな人生を送ってもらいたいという思いを込めています。フィルムに描かれた高齢の車いすの女性が化粧によって元気になり、立ち上がれるようになったというのは現実にあったエピソードです。それが私たちのミッションであり、名和先生のおっしゃるところでいうパーパスです」と力強く伝えた。

来年150周年を迎える資生堂。社名は中国の易経の「至哉坤元萬物資生」から由来し、自然から生まれるエネルギーを世の中に満たしていく、という思いが込められたことなどを紹介。社会的価値と事業を両立させるCSVの精神は創業時から宿っており、今も世界で資生堂はエシカルで誠実と評価されることが多いという。

株式会社資生堂 代表取締役社長 兼 CEO 魚谷雅彦氏
株式会社資生堂 代表取締役社長 兼 CEO 魚谷雅彦氏

サステナブル経営は、People Firstから

CSV経営を志す聴講者に向け、経営者である魚谷氏自身のエピソードも披露された。資生堂社長になる際、尊敬するメンターから「日本を代表する会社が元気になることは、日本が元気になることだ。君は日本を元気にする気はないのか」といわれ2つの覚悟を決めたという。

1つは「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーへ」、そしてもう1つは「100年先も輝き続ける資生堂をつくる」。株主からは短期的な利益構造を変えることを期待されたが、それを目的とはせず、長期存続の原型となる改革をすることを使命としたという。

魚谷氏は、経営改革に着手する際、海外含めのべ8万人以上の社員との対話を行った。「経営戦略も大事だが、B2Cビジネスでは商品を買っていただくトランザクション、ここがすべての源泉です。そこから社員の給与や株主やサプライヤーへの支払ができるのだから、まずお客さまとの接点が正しく機能しているかを見る。ビジネスの原点は現場にあるのです」と解説。

「現場から、なかなか意見が言いにくいかもしれない。そのような時は、むしろ笑いが重要。今なら気になることを言えそうという雰囲気をつくり、そこから出た現場の声の中に、重要な経営課題が隠されています。中央コントロールではなく、現場を信頼して関係をつくり、予算や権限を渡していく必要があります」と述べた。

「日本だけなく海外も、長く勤めているかどうかにかかわらず、会社をよくしたいという純粋な思いがある人がたくさんいますが、どうしていいか分からないといいます。問題は人ではなく仕組みで、どういろんな声やアイデアを出せる組織風土にしていくか、そして多様な人たちの多様な意見をどう1つの方向に向けていくかです。しかし、中央集権のマネジメントはしたくない。だから6つの地域に本社をつくり、地域ごとにCEOをおき、権限委譲しました。人は信頼されたときにオーナーシップをもって頑張ってくれるからです。国が違おうが、文化や言語が違おうが、このことは共通しています」と語った。

7年にわたる資生堂の経営で、魚谷氏が学んだことは、PEOPLE FIRSTの経営理念だ。「多様な社員が真ん中です。お客さまに価値のあるものを生み出していくのは社員です」と語る。資生堂は、ダイバーシティ&インクルージョンの一環として、英語を公用化し、女性管理職比率も高い水準で達成。さらに50%という高い目標を目指している。また1月から新しい試みとして、海外で活躍するサプライチェーン、デジタル、リーガルの専門家をエグゼクティブオフィサーとして迎えた。多様な意見が集まることで、経営会議も活性化したという。

最後に魚谷氏は「多様といっても、バラバラではありません。会社のミッション、パーパスに向かって価値観が共有され、はじめて多様性の力が1つの方向に発揮されます。年1回のグローバルカンファレンスで、今年の販売計画のような話はしません。私たちは何のために存在しているかを確認する場なのです」と締めくくった。

魚谷氏が2014年より着手した経営改革により、計画していた2020年より3年前倒しで売上1兆円を達成。4年で時価総額は4倍になった。その後2020年は新型コロナウイルス感染症の流行により利益が大きく落ち込んだが、投資家は「短期はいい。未来に、5年10年先にどう発展していくか、その議論をしたい」といい、長期に向けた対話ができる関係になっているという。

西洋の科学と東洋の叡智を融合し、先取気質にあふれた資生堂のダイバーシティー経営は、創業の志に根差しながらも、時代の先端をいくステークホルダー資本主義を体現している好例といえそうだ。

日本集約ではなく、地域本社で権限移譲する経営スタイルは、この後続くパナソニックにも共通している。
(パート2に続く)

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