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「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」から「人」が生きがいを感じられる「社会」への道筋を探るNo.2

2021/06/17

「理想の働き方」と現状のギャップは大きい?

電通総研電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ調査2020」を、2020年11月に日本全国1万2000人を対象に実施しました。本調査は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として、2019年12月に第1回調査を実施。今後も毎年データを収集・蓄積していく予定です。

この連載では、調査から得られた主要なファインディングスから、社会に関する人びとの意識・価値観の現在地と、人が生きがいを感じられる社会の実現に向けた道筋を探ります。 

本調査では、人びとの社会に関する意識・価値観を「個人視点」「家族・コミュニティー視点」「社会視点」の3つの視点で調査しました。連載2回目は、「個人視点:個人の能動性・自律性」の視点から調査結果を紹介します。

<目次>
身体、心ともに6割程度が「健康」と回答 昨年との変化はわずか
生活者が求めている「理想の働き方」と現状とは乖離
デジタルを介したコミュニケーションへの低い期待
子どもに身に付けてほしいのは「思いやり・自立心」
よりよい人生のために、人びとは前向きで自律的であるか?
 





 

身体、心ともに6割程度が「健康」と回答 昨年との変化はわずか

まず、新型コロナウイルスの感染が広がる中で生活者の心身に関わるデータから見てみましょう 。 

心身の健康

身体の健康については61.6%が「健康」、心の健康は56.8%が「健康」と回答し、それぞれ19.0%、20.8%が「健康ではない」と回答しています。心身の健康度はほぼ同じ程度でした。2019、2020年末の二つの時点で数値がほとんど変化していません。ここには記載していませんが、性年齢別に見ても一年間でほとんど変化はありませんでした。人びとの心身の健康意識に関しては、コロナは大きな影響を与えていないようです。

生活者が求めている「理想の働き方」と現状とは乖離

次に働き方に関する意識を見てみましょう。下図は、「理想の仕事や働き方」と「現在の仕事の状況や働き方」について質問した結果です。

「理想の働き方」で求めるのは、上位から順に「雇用が安定している」63.7%、「自分にとって興味がある・好きな仕事ができる」51.7%、「希望に合った収入が得られる」50.7%、「言いたいことが言いやすい雰囲気がある」48.0%、「出産・育児・介護時に心置きなく休暇が取れる」43.4%など。

そして「現在の仕事や働き方」であてはまるのは「雇用が安定している」21.0%、「自分にとって興味がある・好きな仕事ができる」13.1%、「言いたいことが言いやすい雰囲気がある」12.8%、「副業・兼業ができる」10.9%、「事業に自分の能力を生かせる」10.4%が上位にあがりました。

理想の仕事や働き方

「希望に合った収入」の理想と現実の大きな乖離が目立ちますが、総じて見ても、人びとの仕事への期待に対して、働く場の現実が追いついていない現状がみてとれます。

なお、次の図は「仕事に関する能力開発」への取り組み状況について質問したものです。

仕事に関する能力開発
仕事に関わる能力開発については、50.7%の人が上記のいずれかの取り組みをしていると回答していますが、2019年に比べ約4%減少しています。半数以上の人が、仕事に関わる能力開発を行いつつも、コロナ禍によりややブレーキがかかってしまっているようです。

デジタルを介したコミュニケーションへの低い期待

続いて、暮らしや人間関係に関する質問の中から、デジタルを介した人間関係についての意識を紹介します。

「SNS(フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなど)での人付き合いは、表面的になりがち」と考える人は61.9%、対して「SNSでの人付き合いは、相手を深く知ることができる」と考える人は5.4%にとどまります。さらに「SNSで、新たな人とのつながりが広がる」と考える人28.4%、「SNSは、これまでの知人とのつながりを強める」と考えた人は、20.5%にとどまるのに対して、「どちらともいえない」と回答した人は51.1%にのぼります。

広く普及したSNSですが、人との関係性を深めたり、広げたりするツールとしてはあまり認識されていない現状が見て取れます。

また、テレビ電話、ビデオ通話や会議などは、実際に会うのと同じように意見疎通を「図れる」と答えた人は、23.8%にとどまるのに対して、「図れない」と答えた人は40.3%。実際に会ったことが無い人とテレビ電話、ビデオ通話やネット会議などで、顔を映して会話することには「抵抗は無い」と答えた人は23.3%、「抵抗がある」と答えた人は52.1%にのぼります。

コロナ禍で利用機会が増えたネットを介した遠隔コミュニケーションですが、利用には抵抗感がある人が多いようです。

暮らしや人間関係に関する意見



 

子どもに身に付けてほしいのは「思いやり・自立心」

続いて、下図「子どもに身に付けてほしいもの」をご覧ください。

子どもに身に付けてほしいもの

「相手を思いやる心」71.5%、「自立心」55.5%、「粘り強さ、努力する姿勢」55.5%、「協調性」53.6%、「ルールを順守すること」53.5%、「自分のやりたいことを見つける力」52.9%が上位に挙がりました。

数値が低かったものは、「競争心」19.1%、「リーダーシップ」19.1%でした。「競争心」など、相手に優越するための資質は最下位にとどまり、「思いやる心」といった、人と人が理解し合うための資質が最上位の結果となりました。

よりよい人生のために、人びとは前向きで自律的であるか?

以上、「個人視点:個人の能動性・自律性」から調査結果を紹介しました。

コロナ禍でも個人の主観的な心身の健康度は、データ上では大きな変動は見られませんでした。依然として予断を許さない感染状況の中、今後も引き続き人びとの心身の健康意識に注視していくべきと考えます。

仕事に関しては、人びとが前向きで自律的な働き方を求めている一方で、職場の現状はまだそれに応えられていないようです。個を支え、活かすために、働く場の改善や個人の能力開発を促す取り組みが重要だと考えられます。

昨今普及したデジタルを介してのコミュニケーションへの期待は必ずしも高くない現状が見てとれます。ニューノーマルの暮らしの中で、生身のコミュニケーション機会が減少する中、これも将来への懸念材料と言えるでしょう。

子どもに求めるのはリーダーシップや競争よりも、思いやりや自身の自立でした。子ども=未来と捉えるならば、人びとが期待する未来の人間像は、相手に優越しようとするのではなく、対等な関係で、人と人とが助け合いながら自己実現を図る個人と言えるのではないでしょうか。経済停滞の影響とも読み取れますが、将来の個人の学びや働き方を考える上で、注目すべき価値観変化の兆しと言えるでしょう。

次回は「社会集団の協調性・互助性 人びとは、よりよい人生のために、協力し合えているか?」の視点から人びとの意識の現在地と、社会の変化の兆しを紹介します。

※グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。
 

調査概要
タイトル:「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」
調査時期:第1回 2019年12月11日~18日、第2回 2020年11月11日~17日
調査手法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者:18歳~74歳の男女 12,000名
調査会社:株式会社電通マクロミルインサイト

 
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