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Youはどうしてニッポンコンテンツ好きなの?No.3

“kawaii”やオリジナリティーで、英米にも浸透!?〜グローバルコンテンツ調査イギリス・アメリカ編〜

2021/07/06

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ロンドン・ソーホー地区の路上で遭遇したピカチュウ(写真は2018年に撮影)。

日本発のキャラクター・コンテンツを活用し新たなビジネスチャンスのヒントを探るため、電通と電通マクロミルインサイトは共同で、2020年末から2021年始めにかけて「グローバルコンテンツ調査」を実施しました。

本連載では調査結果のご紹介とともに、電通グループ社員の世界各国駐在経験に基づいた声も交えながら、各国の文化の違いや日本のキャラクター・コンテンツが人気を集める背景などを掘り下げてきました。

第1回では調査全体と中国・韓国、第2回はASEANの結果と傾向についてご紹介してきました。最終回はイギリス・アメリカについて、筆者のロンドン駐在及びアメリカ在住経験も踏まえ、考察していきます。

映画、ファッション、音楽など、世界のエンタメを牽引してきたイギリスやアメリカで、ニッポンコンテンツはどのような存在感を示しているのでしょうか。

※本調査の概要はこちら

「ポケットモンスター」「マリオ」らは、アメリカのコンテンツに負けずトップレベルの存在感

【図表1】「アニメ・漫画」認知度ランキング
グローバルコンテンツ連載第3回図表1

今回の調査では、日本の人気コンテンツに加え海外の人気コンテンツも選択肢として用意し調査を行いました。その中でも「アニメ・漫画」カテゴリーでは、イギリス、アメリカともに、「スター・ウォーズ」や「アナと雪の女王」といったアメリカの超メジャーコンテンツを抑え、認知度で「ポケットモンスター」が1位となりました。また「ドラゴンボール」も、イギリスで5位、アメリカで4位と高い認知度を得ています。

「ポケットモンスター」は、1996年の初代ゲーム版発売以来、テレビアニメや映画も人気を博し、1998年にはアメリカはじめ世界進出を開始しました。2009年からは、世界ナンバーワンプレイヤーを決めるゲームの世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス」が開催されています。また、2016年にスマートフォン用の“位置ゲー”として一躍ブームとなった「Pokémon GO」の世界的なヒットも記憶に新しいかと思います。このような立体的かつグローバルな展開を通して、イギリス、アメリカを含む世界で身近に感じられるコンテンツになっていったと考えられます。

【図表2】「キャラクター」認知度ランキング

グローバルコンテンツ連載第3回図表2

「キャラクター」カテゴリーにおいても、「スパイダーマン」や「ミッキーマウス」などを抑え、「マリオ」の認知度がアメリカで1位、イギリスでも3位(10~20代では2位)に入るなど、ニッポンコンテンツが大きな存在感を示しています。4位以下を見ても、「ハローキティ」などはイギリス・アメリカ両国において、「くまのプーさん」や「スヌーピー」といったメジャーコンテンツに並ぶ形で高い認知を獲得しています。

なお、イギリス・アメリカではいずれも各カテゴリー1位の認知度は60~70%前後ですが、アジア各国では「ドラえもん」や「NARUTO」といったコンテンツが80~90%を超える認知度で1位を獲得しており、浸透度には差があります。

考えうる背景としては、アジアの国々ではアニメやキャラクターが、子どもから大人まで幅広く愛される「マスコンテンツ」化しているのに対して、イギリス・アメリカでは、一般的にまだまだ「子ども向け」か、ニッチな特定のグループ向けと捉えられがちなことなどが挙げられます。

アジアではテレビ放映などを通して子どもの頃から日本のアニメやキャラクターに接する機会が多く、長い時間をかけて幅広い年代に認知され支持される「マスコンテンツ化」していますが、イギリス・アメリカでは、ニッポンコンテンツに触れる機会がまだまだ限られているため、比較的「ニッチ」と捉えられているものと思われます。

また、アジアに比べ、イギリス・アメリカではそもそも、「アニメやマンガといったキャラクター・コンテンツは子ども向けのもの」と捉えられがちなことも、浸透度が低い理由のひとつかもしれません。例えば、メジャーコンテンツでいうと、ディズニーのアニメ作品は子ども向けのものがマジョリティです。

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ヨーロッパの雑貨屋さんで、地元のキャラに混じって売られるピカチュウのぬいぐるみ。メジャー化が進んでいます。

「マリオ」「ハローキティ」は既にグローバルメジャー。ニッポンコンテンツの「オリジナリティー」「スタイリッシュさ」も評価

次に、「キャラクター」カテゴリーを例に、ニッポンコンテンツが持つイメージのポジショニングを分析してみます。イギリス・アメリカともに、「マリオ」「ハローキティ」は、「世界中で人気・有名」というイメージとの相関が高く、すでにニッポンコンテンツの枠組みを超えた、グローバルメジャーなキャラクターとして捉えられています。

【図表3】コンテンツ・ポジショニング(キャラクター):イギリス

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※複数のブランド(コンテンツ)とイメージ項目の関係性を可視化する手法「コレスポンデンス分析」で解析。

【図表4】コンテンツ・ポジショニング(キャラクター):アメリカ  

グローバルコンテンツ連載第3回図表4
※複数のブランド(コンテンツ)とイメージ項目の関係性を可視化する手法「コレスポンデンス分析」で解析。

「マリオ」はグローバルメジャーな存在感を生かして、リオ五輪閉会式の演出で話題を呼んだことは皆様もご存じの通りです。2021年3月にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンにマリオの世界観をイメージしたエリアが新設され、コロナ終息後のインバウンド効果も期待されています。

「ハローキティ」については、レディー・ガガをはじめ、多くのセレブリティがファンであることを公言していたり、各国アパレルブランド、コスメブランド等とコラボレーションをしていたりと、ファッション文脈で人気を集めています。

なお、「ハローキティ」は海外のライセンス事業において、デザイン部分など現地パートナーに大きな裁量権を与えていることも、グローバルな広がりに寄与した要因かもしれません。セレブ人気やファッション文脈にうまく乗り、日本の“kawaii”カルチャーの代表と見られていることが、グローバルメジャー感につながっていると推察されます。

また、認知度はまだそこまで高くないものの、「ぐでたま」や「あつまれ どうぶつの森」シリーズは、イギリスでは「スタイリッシュ」、アメリカでは「独創的」な印象を持たれているようです。筆者のロンドナーの友人(日本カルチャー好き)は、「ぐでたま」の大ファンで、「キャラクターというと“Kawaii”のが普通だけど、『ぐでたま』はだらっとしたり愚痴っていたり、ダークなところも売りにしているのがユニークでCoolだ」と、熱く「ぐでたま」愛を語っていました。

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ロンドン・ソーホーの飲食店のウィンドウにも、唐突に「ぐでたま」が。

背景には、引き続きの「日本文化人気」も寄与

ここまで調査結果をご紹介してきた通り、ニッポンコンテンツはイギリス・アメリカでも大きな人気を持ちつつありますが、その背景には「日本文化人気」も根強くあるように思います。

ヨーロッパでは1867年のパリ万博出展をきっかけとするジャポニズムの流れがありましたが、それを脈々と受け継いでか、現代でも日本=洗練された文化、おしゃれ、という印象が、特に都市部では引き続き存在していると感じます。また、前述にてイギリス・アメリカでは、ニッポンコンテンツが比較的「ニッチ」だと説明しましたが、これも、ジャポニズム同様「なんだかエキゾチック」「変わっていてかっこいい!」と捉えられているという解釈もできます。

そのひとつの例として、筆者がロンドン駐在中に、現地友人が連れて行ってくれた人気の日本食レストラン・バーは、漫画やアニメがインテリアや世界観のテーマとして扱われていました。

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ロンドンの人気日本食レストラン・バー。壁一面に漫画や日本のポスターがコラージュされていました(写真は2017年に撮影)。

また、筆者が駐在中に、ウェス・アンダーソン監督の映画「犬ヶ島」のオープニングイベントが開催され、足を運びましたが、「日本」テーマの同イベントは、大変なにぎわいでした。そもそもスタイリッシュな映画で知られるウェス・アンダーソン監督が、架空の近未来日本を映画の世界観に選んでいること、その世界観と呼応するイベントに多くのロンドナーたちが集い、日本酒などを楽しんでいるという状況は、日本人としてちょっとうれしさを覚えました。

決して“ど真ん中”のカルチャーまでにはなっていないにせよ、トレンドに敏感な層や一部の人たちには「Coolだ」と日本文化やカルチャーが受け入れられていることは、イギリスやアメリカでのひとつの大きな流れとして存在しており、そのことがアニメやキャラクターなどニッポンコンテンツ人気のベースになっている部分もあるのではないかと考えられます。

それをふまえると、調査でも上位に上がった「ハローキティ」はポップカルチャーやファッション文脈で広がった事象でしたが、その他のニッポンコンテンツも光の当て方次第でさまざまな広がりを見せる可能性を秘めていると思います。

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ウェス・アンダーソン監督の映画、「犬ヶ島」のオープニング展示会イベント。映画の世界観(架空の近未来日本)をモチーフにしたイベントには多くのロンドナーが集まり、日本酒などを楽しんでいました(写真は2018年に撮影)。

また、違った角度から考察すると、文化の差が大きいイギリス、アメリカで受け入れられるニッポンコンテンツは、シンプルでローコンテクストのものが中心になっているとも感じます。

例えば「ドラえもん」や「キャプテン翼」のように、ストーリーが日本の生活習慣や日常と密接した内容のハイコンテクストなコンテンツは、アジアでは人気ですが、イギリス、アメリカでは上位に挙がってきません。イギリス、アメリカで上位に挙がる、「ポケットモンスター」「マリオ」「ハローキティ」などは、架空(が多い)世界を舞台とする、そして比較的ローコンテクストでシンプルなキャラクターたちです。

アジアでの広く深い浸透とはまた違う形ですが、イギリス、アメリカでの「日本」人気も肌では感じていたものの、今回調査を通して、定量的にもトップレベルの存在感をニッポンコンテンツが持ちつつあることがわかったのは、良い発見でした。今後もユニークさや“kawaii”といった特徴を生かして、世界にビジネスチャンスを広げる可能性はたくさんあると感じています。

<調査概要>
タイトル:グローバルコンテンツ調査
調査手法:インターネット調査
調査時期:[日本]2020年12月17日~24日
     [米国][中国]2021年1月4日~13日
     [韓国][タイ]2021年1月5日~14日
     [ベトナム][インドネシア]2021年1月6日~16日
     [マレーシア][英国] 2021年1月8日~18日
対象者:各国10代~40代男女
    コンテンツ日常接触者(対象コンテンツ:漫画、アニメ、各種ゲーム)
調査内容:日本を中心としたコンテンツ(漫画・アニメ)、ゲーム、キャラクターのパワーの把握。
     日本や日本企業に対する期待度、各国消費者の価値観など。
調査機関:電通マクロミルインサイト、電通
※日本の人気コンテンツに加え、海外の人気コンテンツも一部選択肢として用意し、認知度やイメージといった項目に分けてアンケートを実施し、分析しています。

 

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