テレビCMとTwitterが連動しないなんて、もったいない!
2021/07/15
テレビとTwitterの新たな可能性を模索する本連載。今回はTwitter Japanと電通のウェビナーイベント「#Twitter4Dentsu2021」のパネルディスカッションをレポート。
Twitter Japan代表取締役・笹本裕氏、電通クリエーティブディレクター/CMプランナー・佐藤雄介氏、Twitterを軸にしたバズ解析ツール「バズウォッチ」を開発する、電通・谷内宏行氏、清水嶺氏が、「テレビCM×Twitter」をテーマに、双方の相乗効果で生み出されるバズの現在地と未来をひもときます。
パネリストの詳細は、スライド左下の<>をクリックしてご覧ください。
この10年でテレビ×Twitterの関係で変化した点
2008年に日本語版がリリースされたTwitterは、2011年の東日本大震災をきっかけに利用率が急増し、一気に社会に浸透しました。その後も利用率は伸び続け、近年はテレビを見ながらTwitterを楽しむ人、テレビの内容について同じ興味・関心を持つユーザーとつながる人も増えています。この変化に伴い、企業にとって重要なマーケティングチャネルであるテレビCMに関しても、Twitterと連動した施策が注目されるようになりました。
まずはこの10年を振り返り、テレビCMとTwitterの関係がどのように変化したのかを整理するところから、パネルディスカッションはスタート。
8年前にTwitter Japanに入社した笹本氏は、「入社当時、テレビとTwitterのつながりとして、テレビで放送される『天空の城ラピュタ』を見て、皆で一斉に『バルス』とつぶやくなどオーガニックのものはありました。ただ、テレビとTwitterを組み合わせた積極的なキャンペーンは皆無でした。しかし近年、ハッシュタグなどを介してテレビの内容がTwitterで話題になったり、逆にTwitterの話題がテレビに取り上げられたり、補完関係が生まれています」と述べました。
カップヌードル「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」、ポカリスエット「踊る修学旅行」などのCMを手がけてきた佐藤氏は、「自分が担当したCMで初めてハッシュタグを付けたのは2015年だったと思う」と振り返ります。
バズウォッチ(※)の開発に携わる清水氏も、「2016年ごろから、Twitterで話題になったトピックスをテレビ番組で取り上げる現象が起こり始めたように思います。2017年にバズったカップヌードルのCMも、Twitterで話題になったことをテレビが取り上げ、そこからさらにバズが起きるという流れでしたよね」と述べるように、2010年代後半からテレビとTwitterの関係はどんどん密接になっていったようです。
2015年からバズウォッチの研究・開発をスタートし、Twitterのバズを追い続けてきた谷内氏は、「バズウォッチは毎週バズランキングを更新しているのですが、2017〜2018年はカップヌードルとどん兵衛のツートップが独走状態でした。両者のCMに通じるのは、Twitterユーザーの“ツッコみたい”という欲求に応える仕掛けがあること、“ツッコまれ上手なCM”となっていることです。ひと昔前は単にトリッキーなことをするだけでバズが成立していましたが、ここ数年でバズの作法にも大きな変化が生まれています」と見解を述べました。
※バズウォッチ:日本における全ツイートから、CM、テレビ番組、トレンド情報を自動集計し、毎週ランキングでお知らせするバズ解析ツール。バズのデモグラ(性別・年代)構成や感情分析、代表ツイートの自動抽出、意味的クラスター分析など、バズの中身を深掘りする機能を備えている。詳しくはウェブ電通報の記事をご覧ください。
Twitterユーザーの“ツッコみたい”要望に応える仕掛けの一つとして佐藤氏は、キャンペーンのキャッチコピーに、ツイートのハッシュタグとしての機能を持たせることを挙げました。
例えば、自身が手がけたカップヌードル「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」のCM。これは人気アニメのキャラクターを現代の高校生として出現させ、パラレルワールドのような形で新しい青春群像劇を描いたものですが、キャッチコピーについて、「『青春』というコトバは使われすぎているので『アオハル』とし、語尾に『かよ。』とツッコミ的なニュアンスを加えた」と述べました。
また、「簡単に消費されない広告(あっという間に忘れ去られない広告)」を作るためにはテレビCMが何度もTwitterで話題になり、盛り上がる仕掛けが大事だと言います。
「ネットやSNSでは、CMについてそれぞれの人が自分なりの考察を発信して盛り上がる楽しみがあります。そこでCM制作では、たとえば短尺のCMをじっくり観察しなければわからないほど、細部にこだわったり、登場するキャラクターの数を異常に増やしてみたり、視聴者にも参加してもらえる企画を考えたり、Twitterで継続的にタイムラインをつくって話題をつくったり、あの手この手で視聴者に楽しんでもらえる仕掛けをしています。いまはCMをつくる側の熱量が伝わる時代。その熱量がTwitter上でファンを巻き込んでいくのだと思います」(佐藤氏)
マス化するバズとは、「分類と越境」
このようにテレビとTwitterの関係性が深まったことで、Twitterのバズがマスメディアで取り上げられる=“マス化”する現象が起きています。もともとTwitterはコミュニティーごとにバズが起こる傾向があったが、今後はバズをどのように捉えるべきでしょうか?
笹本氏は「そもそもTwitter自体はマスなのか、それともコミュニティーなのか、皆さんはどうお考えですか?」と問いを投げかけました。それに対して清水氏は、Twitterでの話題の広がりを図式化した「ネットワーク分析」を紹介しながら、Twitterのバズの構造を解説しました。
「Twitterでは基本的には左図のように、コミュニティーごとに話題が広がってバズが起こります。しかし近年は右図のとおり、複数のコミュニティーが重なり合ってバズが起きることも。つまり、Twitterは“分類”中心のメディアですが、“アオハルかよ。”のように複数のコミュニティーが連携してマス化するケースもあるのです。そう考えると、例えば“青春”が多くの人にとって関係のあるテーマであるように、コミュニティーを越えた“みんなの話題”をどのようにつくるかが重要な点であると考えられます」(清水氏)
佐藤氏は「CMでタレントやアーティストを起用すれば、そのファンの方々のコミュニティーで話題になることはある程度計算ができます。大切なのは、一次拡散の先にある二次拡散をどう起こすか。分かりやすく言えば、“越境すること”が重要なのです」とTwitterをマス化させるためのポイントを述べました。
谷内氏も「Twitterは友達同士で近況報告するところから始まったので、基本的にはコミュニティー中心のメディアだと思っています。その意味では、特定のコミュニティーに情報発信する目的でTwitterを活用するのも一つの手です。しかし、テレビCMの役割が幅広い層に関心を持ってもらうことだと考えると、特定のコミュニティーだけでバズって終わりではなく、そこから越境して広まるような仕掛けが求められます」と意見を重ねました。
with Twitter時代の広告プランニングとは?
ここまで、テレビとTwitterがいまや切っても切り離せない関係であること、そしてTwitterのバズをマス化させるために大切なことをディスカッションしてきました。それでは今後、Twitterとともに広告プランニングをどう考えていくべきか、未来への展望を語り合いました。
最初に見解を述べたのは佐藤氏。「僕が話してきたのはTwitterのシンプルな活用法ですが、Twitterにはもっといろいろな機能がありますし、今後も新しい仕組みや機能が拡充されると思います。そういった新しいものを広告に取り入れたら面白そうですよね。Twitterの進化とクリエイティブの進化、双方の掛け合わせには無限の可能性があると思うので、どんどんトライしていきたいです」
「2021年はTwitter Japanにとって第二の創成期だと捉えています。さまざまな機能拡充を予定していますので、ぜひクリエイティブに組み込んでいただけるとうれしいです」と笹本氏は答えました。
一方、Twitterのバズを観測し続ける立場である谷内氏は、「現代のクリエイティブはSNSウケするための新たな手法をどんどん発明していかなければならなくなっています。その新たなクリエイティブ手法が用いられた反応を、新しいレベルで観測可能にしたいのです」と述べた上で、すでにバズウォッチではバズを男女別や時系列などの細分化した軸でクロス集計できる段階まで来ていることを紹介しました。
「バズ解析の解像度が上がれば、ソーシャル上でのその表現手法への反応が、全量ベースで分かるようになります。そして、どんな層がいつ、どれぐらい話題(CMや番組など)に反応しているかだけでなく、狙ったとおりターゲットに届いているのか、幅広い層への二次拡散がどれくらい起きているのかもチェックできるようになります」(谷内氏)
別の視点で見解を披露したのは清水氏。同氏は新型コロナウイルスの流行が深刻化した2020年4月に、どんな文脈でコロナが語られていたのかをバズウォッチで細かく解析しました。すると、Twitterでは「コロナに負けるな!」「エッセンシャルワーカーたちに感謝と健康を願う」といったポジティブな文脈が存在感を示しており、「これは他のメディアにはない特徴だった」と指摘します。
「Twitterにあるポジティブな文脈に目を向けて、その人たちと一緒に企業活動を行うことが大切になるのではないでしょうか」と清水氏。
佐藤氏は、「今の話を聞いて、作り手の熱量が発信源となるようなものをつくりたいと思いました。制作サイドのスタッフがポジティブに携わり、本当に良いものが出来上がって、それぞれが個人のTwitterで作り手としての想いをつづる。そんなクリエイティブも素敵じゃないかと思うんです」と新しいアイデアを語りました。
「Twitterは単なる広告のプラットフォームではなく、生活者の本音が混じり合う場所。そこには当然、クリエイターの気持ちも含まれます。そういった想いをポジティブに生かせたら、新しいコミュニケーションのカタチが生まれるかもしれませんね」と笹本氏は述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。