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OMO時代のショッピング体験をアップデートするNo.5

2021/08/03

小売店が目指すべきは「おばあちゃんのためのDX」?

あらゆる業界でオンラインシフトが急速に進み、生活者の価値観や購買プロセスにも大きな変化が起こっている今、オンラインとオフラインがシームレスにつながった新しい購買体験が求められています。

国内電通グループは2021年2月より、OMO(オンラインとオフラインの融合)時代の新たな「ショッピング体験」をデザインするプロジェクト「dentsu SX(エスエックス)」(※1)をスタート。SXという名称には「Shopping Transformation」と「Shopping Experience」の両義が込められており、世界有数のデザインファームであるfrog design inc.との強力なパートナーシップのもと、テクノロジーとクリエイティビティを武器に、これからの時代に合わせた新たなショッピング体験を戦略・実装・運用までワンストップで支援します。

本連載では、「コスメ」「金融」「ファッション」「日用消費財」「家電品」の5つの業界で起きている変化を捉え、今後の展望を考察します。

連載第5回は、「日用消費財」で起きている変化と今後の展望について、電通テックの本間立平氏にお話しいただきました。

※1 dentsu SX
国内電通グループ7社による、OMO時代に沿ったオンオフ統合の購買体験を顧客目線でデザインし、リテール領域において企業の事業成長に貢献するプロジェクト。電通グループのこれまでの事業蓄積と、戦略パートナーとして参画するfrog design inc.の知見を統合。電通独自の顧客行動データや、AIやクラウドなどの最新テクノロジーを活用し、顧客インサイトを掴むクリエイティビティと掛け合わせることで、顧客視点に立ったブランド独自のショッピング体験を創出する。(詳しくはリリースを参照
 

店頭は「ペインポイントの塊」になってしまった

現在、スーパーやドラッグストアなどの小売店が抱えている課題は、なんといっても「非接触」です。新型コロナウイルスの影響で、店頭の問題点が浮き彫りになりました。そもそも店頭は、来店客で「密」になりやすい場であり、買い物カゴやタッチパネル、商品など、触れなければならない箇所がたくさんあります。レジでは、キャッシュレス払いやセルフレジの導入が進んでいますが、レジ待ちの行列はそれほど解消されていないようです。

その解決策として、例えば、下記のようなソリューションが期待されています。

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あらゆる業界で言われていることですが、新型コロナウイルスの影響で、各企業が計画していたDX(デジタル・トランスフォーメーション)のスピードは、いっそう加速しました。感染のリスクが減り、今まで以上に便利になるのは良いことです。しかしその半面、危ぶまれているのは、リアル店舗そのものの存続です。欧米では、コロナ禍以前からの閉店ラッシュに、さらに拍車がかかっています。買い物がECへシフトしていることは言わずもがなです。

ECがここまで伸長しているのには、他にも理由があります。Amazonの「アレクサ」などの音声アシスタントデバイスの利用が増えているのです。日本ではまだ実感が湧かないかもしれませんが、アメリカでは、家にいながらにして、声で商品を注文することは、日常的になりつつあります。デバイスを使うと、買い物の量も増える傾向があり、アレクサ利用者は、非利用者よりも「1.3倍」も多く買い物をしているというデータもあります。

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また、商品をリコメンドするAIも目覚ましく進化しており、個人の好みや買い物のタイミングを精度高く把握できるようになっています。近い将来、AIが心の中を見抜き、本人が発注しなくても、欲しかった商品が自動的に届くようになるかもしれません。

店頭は「購買地点」から、「情報発信地点」へ

小売店にとって悲観的なことばかり挙げてしまいましたが、リアルの店舗にもチャンスがあります。それは、スマートフォンとSNSの登場により、店頭が、単なる買い物スポットから「情報発信地点」になったことです。

近年、生活者の欲求は「商品」(モノ消費)から「思い出づくり」や「イベント」(コト消費)に移っているといわれます。そして最近は、SNSに発信したくなる「話題」(ネタ消費)を求める傾向が強くなっています。

情報感度の高い人は、常にリアルの世界でネタになることを探しています。もし、街の小売店に、珍しい商品、楽しい売場、心に刺さるメッセージなどがあれば、それらはSNSによって瞬く間に拡散されます。

従来は、テレビで商品を知り、ネットで調べ、お店で買う。という買い物が普通でした。しかし今では、リアルな店頭で起きたことが、ネットで拡散され、テレビがそれを取り上げる。といった逆の流れも生まれています。

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一例をあげましょう。スーパーの店頭で、幼児を連れた女性がお惣菜を選んでいました。すると、見知らぬ高齢の男性から

母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ

と言われてしまったそうです。

このエピソードがSNSでツイートされると、大きな波紋が広がりました。「ポテトサラダは、果たして簡単な料理なのか?」とか、「お惣菜は手抜きなのか?」などの議論が飛び交います。

その様子を見たテレビ局は、「ポテサラ論争が勃発!」と大きく取り上げました。

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このような時は、売り上げを伸ばすチャンスです。あるメーカーは、ポテトサラダを簡単に作れる調理器具を紹介しました。あるスーパーは、「お惣菜は手抜きじゃなくて“時短”です」という主旨のメッセージを売り場のPOPから発信しました。すると、その様子も再びSNSに投稿され、大きな共感を呼んで広がっていきました。

リアルとデジタルは、対立軸で語られることが多いと思いますが、このような事例にみるように、店頭は大きなSNS情報網の中にある、情報の着火点になりうるということです。まさに、オンラインがオフラインを包含している「OMO」的な状態を確認することができます。

SNSと店頭の図

ここでひとつ、小売店様に提案があります。店舗ごとに「SNSマーケター」を立ててはいかがでしょうか。お店の情報をSNSで発信するだけでなく、世の中に起きた「トレンド」をいち早く捉え、売場づくりや、キャンペーン企画に反映させていくのです。

きっと、
「いつ行っても“ニュース”があるお店」
として話題化し、継続的にファンを増やしていくことができると思います。


DXで、「顧客との会話」が失われてはならない

最後に、忘れられないエピソードをひとつ紹介します。

あるスーパーが、「モバイル会員限定」の割引キャンペーンを実施したのですが、それを店頭で知った常連のおばあちゃんが激怒したのです。

いつもの『かりんとう』が安く買えない!私は携帯電話を持っていないんだ!

最近は、キャンペーンもどんどんデジタルシフトしており、応募から抽選、賞品の受け渡しまですべてスマートフォンで完結するものも増えてきました。

しかし、忘れてはいけないのは、リアル店舗は、地域の人とつながる「コミュニケーション接点」であるということです。日頃から、お客様に接して、その買い物行動や、要望を把握していれば、もっと常連さんをケアしてあげることができたかもしれません。

今後、スマートレジの導入や、商品補充の自動化などで、必要なスタッフ数は減っていくでしょう。人件費の削減にはつながります。しかし、その結果、「お客様の顔が見えなくなった」では本末転倒です。

DXで作業から解放された「レジ係」は、解雇するのではなく、来店客にお声がけをして、さまざまな問題を解決する「総合買い物サポート係」へ配置転換すべきです。

デジタル化を進めた結果、それが、一部のリテラシーの高い人だけのものになっては失敗です。そういった意味で、日用消費財におけるDXは、どこまでいっても「おばあちゃんのためのDX」でなければならないと、最後に申し上げて締めくくりたいと思います。

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dentsu SXでは、企業の皆さまからのご相談やご質問を受け付けております。興味のある方は、ぜひ公式サイトからお問い合わせください。
 

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