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NRF2024 ~リテール・コマース領域の最新&最前線レポートNo.7

【番外編】台湾のリテール・コマースシーンの“今”

2025/01/22

NRFのレポートを通して、欧米・ASEANのリテール・コマースシーンの最新トレンドをお伝えしている本連載。前回は2024年に開催されたNRF APACのレポートをお届けしました。それに続く【番外編】として、筆者が2024年11月に訪れた台湾のリテール・コマースシーンを概観していきたいと思います。

「4通」(交通・通信・通貨・流通)という視点のご紹介

プラットフォーマーという言葉が使われるようになって久しいですが、筆者がマーコム・販促領域の仕事に関わりながら、日本における“それ”は超大手IT企業(いわゆるGAFA)であると考えて本当によいのか?という疑問がよぎる瞬間がこれまで多くありました。

というのも、筆者は海外に赴くことが(NRFにかかわらず)多いのですが、目的地がどこであれ自分自身がいつも「特定領域」に対する準備を周到に行っているということに最近気付いたからです。それは、①空港についてからホテル他の目的地への移動➁あらゆる事態に備えるためのライフライン構築(近年はスマホによる通話とメッセージング&地図)③かの地に着いてからの消費活動に適応する決済④それらの結果としての購買行動です。

もう少しそれらを短く分かりやすいコトバで言い換えると、「①:交通」「➁:通信」「③:通貨」「④:流通」という4つであり、それらを総称した「4通」というキーワードこそ、日本人が特に意識してきた“社会プラットフォーム”ではないかということです。

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この視点にのっとって、NRF APACが行われた6月のシンガポールに続いて赴いた、11月の台湾の社会環境をひもとくと、以下のように整理ができます。

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①交通:公共移動手段としてはUberが強いものの、老若男女を問わず個人の移動手段として自動車以上に街中で幅を利かせていたのは、原動機付自転車やバイクでした。3車線以上の大通りでも爆音でカーブを切ってくる様子には驚きました。その裏返しでもあるのか、日本からは撤退したFood Pandaをよく見かけることがありました。

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➁通信:昭和の懐かしさすら感じる街並みに反し、モバイルを含めネット環境の整備が進んでいる台湾。個人宅でもPay per Viewの数百に及ぶ多チャンネル・CATV視聴環境があります。渡台した11月下旬には、世界野球プレミア12が、日本よりも盛り上がっていました。

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③通貨:街中にひしめく中小の飲食店では、現金決済を求められるところもまだまだ多いものの、クレジットカードが一般的。ただしインサート・スワイプ方式でなくタッチを求めてくるのは一貫していました。それ以上にドラッグストアなど若年顧客基盤がしっかりしている業態店舗での強さを感じたのはLINE Payでした。

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④流通:台湾に対する最も強い印象を持たせてくれたのは、間違いなくこの領域。街角で目に飛び込んでくるのは、日本以上に多種多様な店舗業態、商品・サービス、そこで日々の営みとして売り・買いをする人々の姿でした。生鮮3品(肉・魚・野菜)を中心に、単品メニュー勝負の飲食店など小規模・専門店の強さが際立っていました。

これらを踏まえると、先にレポートしたシンガポールと比べても台湾は“先進国トップクラスの、超高密度・過密集のリテール・コマース大国”と表現できるのではないでしょうか?

台湾を代表するリテーラー
 

ここからは業態別に台湾を代表するリテーラーを以下に紹介します。

(1)新光三越(DMS)
1991年に新光グループと三越グループ(43.4%出資)の共同出資により、台北に1号店開店。三越の強みである「老舗」「高級」に加え、「都会的」「若者向け」といったイメージを有し、顧客層も広く名実ともに台湾 NO.1&日本百貨店モデルとして海外成功している数少ないブランド。image
(2)全聯(SM)
1998年設立、買収合併を繰り返して台湾最大の流通小売業に成長。好立地、 CVS にも引けを取らない多店舗展開、良心価格を掲げるリテーラー。買物環境やサービスの質を年々向上させ、アプリ/ペイメント(PX Pay)/オンラインスーパー(小時達)などのリテールDXにも積極的。image
(3)大潤發(GMS)
1996年第1号店を桃園にオープンさせた流通小売りチェーン。大型店舗を郊外立地に構える純国産のGMSらしく、衣食住にまたがり数多くのSKUを扱い、徒歩商圏外からも自動車での来店で、にて多くの顧客を集める。2022年7月、RTマートはPXマートに買収され、台湾最大の流通小売業が誕生した。image
(4)萊爾富便利商店(CVS)
1989年設立、統一超商、全家便利商店、OK超商と共に、台湾における四大超商(CVS)と呼ばれている中で、唯一外資系ではない。2024年4月末時点で1,602店を構え、台湾第3位。2017年からアプリを使った「コーヒー寄杯」サービスを開始し、そこから「先払い~好きな時に受け取る」サービスへと進化させたユニークな企業。image
台湾で有力な4つの異なる小売業態:百貨店・スーパーマーケット・GMS・コンビニエンスストアを概観してきましたが、筆者が2020年から継続視察している米国 NRF(くしくもそれは、ポストコロナの消費社会環境の激変後)で見られたさまざまなリテール BX/DX 事例を、4業態ごとに時系列で整理したものが以下になります。

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上記以外の他業態、各ケーススタディに関しては、別途お問い合わせください。

上記にとどまらず他にも、ドラッグストア・コスメビューティ・アパレル・ホームセンター・家電量販・ペットショップに至るまで、リテール業態の裾野は広く多様で、マーケティング・プロモーション領域に関わる全ての人間にとって原点ともいうべき場所として、フィジカルな店舗はEC以上に圧倒的な可能性を秘めています。

21世紀に入ってから四半世紀、コロナ禍から5年という節目となる今年も、1月にNRF2025が開催されます。今年はアメリカに続き、シンガポール(2回目)はもちろん、9月にはフランスでの初開催も予定されている当該コンベンションからは、ますます目が離せません。

特に今回、台湾電通チームのメンバーの何人かが口にしていた「台湾の消費社会構造は日本の10年前のそれと一緒であり、日本のリテール・コマースシーンに見習うことがまだまだたくさんある。われわれはもっとそれを知りたい」という言葉が強く印象に残っています。

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2024年11月22日実施、台湾電通でのリテール・コマース勉強会の1コマ@台北

願わくば、このような電通グループとしてのビジネスへの取り組みの中から、世界に誇れる日本流、いやアジア流のリテール・コマースBX & DX 事例をNRF へ出展できることを心に描きながら、2025年も最新レポートを順次報告しています。
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