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未来の難題を、こう解いていく by Future Creative CenterNo.11

2021/08/04

ファンとセレブリティが感動の瞬間を共有できる“サインのDX”

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティーでサポートする70人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティー」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

コロナ禍でスポーツ観戦が制限される中、選手やチームとファンの新たな接点づくりが求められています。電通FCCでは、スポーツコンテンツのDXによって、新しい接点を生み出してきました。7月15日に発表された「LIVE Sign.(ライブサイン)」(特許出願中)もその一つです。
(公式Twitter=https://twitter.com/LIVESign_

キービジュアル

 

 

LIVE Sign.は、映像に直筆でサインを書ける、新しいサインの形です。映像に書き込まれたサインとともに、それを書く選手の姿やメッセージの動画を瞬時に生成。勝利の瞬間や記録達成の日など、かけがえのない「メモリアルモーメント(感動の瞬間)」をデジタルコンテンツとしてファンと共有することができます。

コロナ禍でファンとの交流が難しくなったスポーツやエンターテインメントにおいて、両者のエンゲージメントを高める全く新しいツール開発の背景や具体的な機能、新たに創造する価値について、電通FCCメンバーの富田奨氏(電通 コミュニケーションプランナー)と安渕哲平氏(電通 スポーツビジネスマネジメント室 ジェネラルマネージャー)が語りました。

富田氏と安渕氏
※この取材は、オンラインで行われました。

選手とファンの“つながり”のアップデート

富田:FCCでは、コロナ禍の前から、スポーツにおけるファン体験をアップデートすることに向き合ってきました。ファンとの接点で特に大きなものは「現地観戦」です。ただし現地観戦は、個の集積でスタジアムが熱気を帯びて、選手たちにそれが伝わる一方で、一人のファンの応援を選手まで届ける、個と個の強い“つながり”を作るすべはなかなかありませんでした。

もちろん、それでもファンは満足できていましたが、コロナ禍になり、無観客試合が増え、スタジアムやアリーナでの観戦がままならない状況が続き、リアルの場でのファンと選手のつながりを作ることがますます難しくなりました。

安渕:その中で、さまざまな実験的な試みがなされ、デジタルにおけるファンと選手の接点を見ると、SNSによってファンが選手と直接つながり、試合以外でもコミュニケーションが発生する環境が整ってきました。加えて、そのつながりから、新しいマーケティングが生まれる可能性も見えていた。ファンと選手が、個と個のつながりを求める傾向は現れていたといえます。

富田:そこで生まれたのが「LIVE Sign.(ライブサイン)」です。映像に直筆でサインを書けるもので、タブレットに書いた「サインの筆跡」とサインを書く「セレブリティの様子」を瞬時に合成。サイン動画とサインデータが生成されます。スポーツを中心とした、かけがえのない感動の瞬間や、セレブリティとファンがつながる瞬間を、特別なムービーコンテンツとして保存することができます。

安渕:これまでのサインと違うのは、動画とセットになることで「いつどこで、何の時に書かれたのか」が分かることです。名前のみのサインは、いつ書かれたものでも価値は大きく変わりません。または日付が書かれていても、その信憑性は薄かったでしょう。LIVE Sign.は、動画を通じて、優勝を決めた試合や記録達成の後など、かけがえのない「メモリアルモーメント(感動の瞬間)」を形に残せます。その日その時で表情やユニフォームも違うので、同じ選手のサインでも新しい価値がたくさん生まれます。

富田:歴史的な瞬間をファンとセレブリティが共有できますし、そのコンテンツを通じてファンにメッセージを送るなど、確かなつながりによって、より深いエンゲージメントを生み出せます。コロナ禍で難しくなったファンとの交流も安全にできるでしょう。これらは、先ほど話した課題「一人一人のファンと選手のつながりを生むすべがなかなかなかった」に対する解決になる。ファンの体験を拡張するツールといえると思います。

特殊なカメラや機材は必要なく、タブレット一つでできるので、タイミングや場所、人にかかわらず動画でサインを提供できるのが特徴です。

スケート選手
©︎JSF公式Twitterより、各スケート選手の「LIVE Sign.」の様子
羽生選手:https://twitter.com/skatingjapan/status/1344652027389886464?s=20 
髙木選手:https://twitter.com/skatingjapan/status/1344644482495614977?s=20
渡邊選手:https://twitter.com/skatingjapan/status/1351085166450491392?s=20

価値あるコンテンツが適切に流通していくことにもつながる

富田:さまざまな競技団体やチームの方とお話をさせていただく中で、最近は選手の方がサインに積極的でないことも伺いました。なぜかというと、好意で書いたはずのサインが、自分が全く感知していないところで転売されるケースが増えているというのです。

副次的ではありますが、LIVE Sign.は、このような課題を解決する存在にもしていきたい。そのために、将来的にはブロックチェーンを活用して、各サインの流通経路を可視化していくことも考えています。本物を担保することで価値を証明していきます。

安渕:選手のサインや着用したユニフォームといった記念品は「スポーツメモラビリア」と呼ばれますが、近年、市場としても盛り上がっている分野です。しかも最近は、選手のデジタルトレーディングカードも高額で売買されていますよね。これらには、「NFT(非代替性トークン)」と呼ばれるブロックチェーン技術が活用されており、コンテンツのオーナーを明確にすることで本物を見極められる。それが価値の担保になっているのです。

富田:リリース前には、いくつかのスポーツイベントで試合後の選手にご協力を頂き、実証実験も行ってきました。ファンの方の反応も好意的でしたし、いろいろな可能性が見えたと思います。

スポーツに限らず、アーティストやアイドルのサインにも活用できるでしょう。コロナ禍でサイン会などのイベントは減っていますが、ファンへのメッセージ動画と合成したサインはニーズが高いはず。オンラインのイベントやコンサートは、どうしてもリアルに比べて体験の現実性が劣ってしまうことが多く、思い出にはなりにくい。こういったサービスによって立ち会った証を形として残してあげられれば、コロナ禍以降でも、オンラインならではの価値として定着させられると考えています。

選手とファンが会話した後に、サインをプレゼントすることも可能に

安渕:今後は、サイン動画を提供するだけでなく、ファンと選手がデジタルを通じてコミュニケーションし、その中で書いてもらったサインをもらえるとうれしいですよね。

富田:そうですね。そういった試みもすでにスタートしています。FCCでは、「みんなで観戦ソリューションβ」や「Future Box Seatβ」といったスポーツ関連のサービスもローンチしてきました。「みんなで観戦ソリューションβ」は、ネット上でセレブリティとファンと一緒に試合やイベントを観戦できるライブ配信プラットフォームで、魅力的なセレブリティが、ファンと試合映像とつなぐポジションとして立ち、参加者とチャットコメントのやりとりをしながら、一緒に観戦できます。そして、「Future Box Seatβ」は、コロナ禍で現地観戦がしにくい中、観客席に専用のロボットを置き、ロボットについたカメラを通じて試合が観戦できる“リモート観戦席”です。

「Future Box Seatβ」
「Future Box Seatβ」

こういったソリューションと連携させて、ファンと選手の双方向なコミュニケーションを生み出していきたいですね。例えば、7月に行われたバスケットボール女子日本代表戦の「三井不動産カップ」では、「みんなで観戦ソリューションβ」を活用したリモート観戦企画の中で、ファン投票で選出された選手が、試合後、配信イベント独自のインタビューに応じ、見ているファンとLIVE Sign.を通して、勝利の喜びを共有し、記念品としてサイン動画をプレゼントしました。
こういった取り組みを通じて、スポーツとファンの接点をアップデートしていきたいです。

安渕:LIVE Sign.は、サインによって歴史的な瞬間を手元に残せるからこそ、サインを書くシチュエーションの設計が重要になると思います。どのタイミングでサインを書いてもらうか、それによりファンの興味は変わりますし、場所についても、試合直後のサインならコート内で書くなど、雰囲気が伝わる場所が好ましいはず。どうやってメモリアルな一瞬を切り取るかが重要で、私たちは、その設計や演出にも協力できればと思います。

富田:LIVE Sign.の開発時にこだわったのも、いかにその瞬間のライブ感やシズル感を表現できるかということです。例えばサインを書いている動画は、なるべく選手の表情やペンを持つ手が入るように。ファンが「自分に対して書いてくれている」と感じるように、カメラや画面を細かくチューニングしていきました。

なお、動画として保存するだけでなく、サインの筆跡もデジタルデータとして保存されるので、グッズなどにプリントするなどの活用も可能。ブロックチェーンで価値を管理しつつ、他のグッズに展開する形も考えています。

安渕:スポーツはこれまで、試合そのもののリアルな価値がマネタイズの源泉となっていましたが、新たな収益のアプローチとしてこの領域が持つ可能性は大きいと思います。今までは埋もれていた、サインの「いつどこで書かれたか」というポイントに光を当てて、価値を生む。それがスポーツとファンの新しい接点になるはずです。今後は、その価値を最大限に高められる体験を設計していきたいと思います。

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