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まだ間に合う!中国インバウンド&越境EC入門No.3

コロナ禍の今こそ「中国越境EC」を始めよう!スモールスタートも可能に

2021/08/11

コロナ禍でインバウンド需要が途絶え、多くの企業が苦戦しています。そんな中でもピンチをチャンスに変えられる可能性を秘めたビジネス、それが「中国越境EC」。

今回は、選択肢が増えてより始めやすくなった中国越境ECの最新事情と各種ソリューションを、電通の中国ビジネス専門チーム「CXC」の桜庭真紀が解説します。

<目次>
インバウンドが難しい時でも「越境EC」で大きな市場にアクセスできる!
越境EC+実店舗から日本在住KOLの活用まで、ソリューションあの手この手
おすすめはソーシャルコマース。越境ECは大戦略よりスモールスタートとトライ&エラー!
CXC(シーバイシー、China Xover Center)は、インバウンド、越境EC、In-Out(日本企業の中国市場進出)Out-In(中国企業の日本市場進出)などを推進する、電通の中国ビジネス専門チーム。
CXC(シーバイシー、China Xover Center)は、インバウンド、越境EC、In-Out(日本企業の中国市場進出)、Out-In(中国企業の日本市場進出)などを推進する、電通の中国ビジネス専門チーム。

インバウンドが難しい時でも「越境EC」で大きな市場にアクセスできる!

銀座の大通りを、大きなスーツケースを両手で引っ張っていく中国人観光客。ブランドショップで飛び交う中国語。コロナ禍前の日本でよく見られた光景です。

コロナ禍で外国人観光客はほぼゼロになり、観光産業を筆頭に、日本企業は大きな痛手を受けました。

観光庁の発表によると、2019年の訪日外国人旅行消費額は4兆8135億円で、そのうち最も多いのが中国人で1兆7704億円となっています。その約5割が買い物で消費されたそうです。

つまり、中国人観光客が日本の買い物で使うはずだった約9000億円が、コロナ禍で失われたとも言えるわけです。

出典:国土交通省官公庁 訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書より、中国人観光客分のみを抜粋して作図
注)訪日外国人(クルーズ客を含む)が日本滞在中に支払った旅行中支出に、パッケージツアー参加費に含まれる国内収入分を推計して加算している(クルーズ客は旅行中支出のみ計上)。日本の航空会社や船舶会社に支払われる国際旅客運賃は含まれない。
出典:国土交通省官公庁 訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書より、中国人観光客分のみを抜粋して作図

失ったインバウンドの売り上げの補完は、各企業の課題となっていますが、そんな中で注目したいのが、今回ご紹介する「越境EC」、つまり海外の顧客へのネットを通じた販売です。

中国のEC利用率は26.4%で、ECで買えないものはほとんどないと言えます。日本でも有名な11月11日の「独身の日」のアリババのセールは、コロナ禍の2020年にも盛大に開催されました。アリババ・ジャパンのレポートによれば過去最大となる25万以上のブランドが参加し、そのうち3万1000は海外ブランドだったと言います。

8億人以上の消費者がアリババグループの各サービスを利用し、最終的な流通総額は前年比26%増(※1)、過去最高となる4982億元(約7兆9000億円)に。そして、中国向け越境ECにおける国・地域別の流通総額ランキングでは、日本が2016年から5年連続で1位を獲得しました。

※1 前年比26%増=販売期間の拡大に合わせて、集計期間がこれまでの11月11日の1日間(24時間)から、11日1日〜11月11日の11日間へと延長。
 
(以上、数値はアリババ・ジャパン 2020年11月12日ニュースリリースより)
https://www.alibaba.co.jp/news/2020/11/gmv7ecgmv.html

 

今や日本企業にとって、中国でのECは無視できない市場です。中国は人口が日本の10倍、GDP成長率もまだまだ高く、コロナ禍からの回復も早いなど、日本企業にとって大いにポテンシャルのある市場です。

しかし、市場が大きい分、企業間の競争がかなり厳しい現状もあります。昨今では中国製品の品質も向上し、「国潮」「国貨」といって、Z世代を中心とした国産ブランド人気の高まりも顕著です。もちろん今でも「日本の商品は高品質で安心・安全」というイメージはありますが、“それだけ”で売れた時代はすでに終わっています。

中国越境ECのプラットフォームにも、変化が見られます。定番の「天猫国際(Tmall Grobal)」や「京東全球購(JD worldwide)」は相変わらず高いシェアと影響力を持っていますが、新興勢力にも注目です。例えば戦略的に3~4線都市(※2)のユーザーをターゲットにしている「拼多多(ピンドウドウ)」は近年著しい伸びを見せています。

また、ソーシャルコマースと言われるSNSをプラットフォームとした「小红书(RED)」「微信(WeChat)」のECも注目されています。また、「抖音(Douyin)」(※3)のECは、レコメンドシステムによって、個人の興味関心に合わせてコンテンツが提供される「インタレストコマース」と言われ、「人がモノを探すのではなく、モノが人を探す」と言われています。

※2 「3~4線都市」=中国では政府が都市の規模などによって各都市に1~5までの等級を付けている。北京、上海、広州、深センは1線都市とされる。
 
※3 抖音(Douyin)=短尺動画プラットフォーム。

 

このように、越境ECにおいて、

  • 自社のカテゴリー特性や中国市場での状況
  • 事業の目的や課題

に合わせて選べる選択肢は増えました。どのプラットフォームを選ぶべきか、どのような座組で運営するべきか、CXCにご相談いただくことも増えています。

ECプラットフォーム

越境EC+実店舗から日本在住KOLの活用まで、ソリューションあの手この手

日々変化している中国のEC環境ですが、このコロナ禍で日本企業が越境ECを始める際に悩ましいのが、「中国未発売の商品を実際に中国の消費者に試してもらう機会がない」ことです。

インバウンドが盛んな頃は、訪日観光客が自ら商品を試してくれたり、試した感想をSNSで発信してくれたりしましたが、今は中国人との接点がつくれない状況です。

「越境ECでも、中国で中国人に試してもらう機会をつくれれば……」

そんな要望に応えたのが、電通が提携する中国のブランド育成⽀援企業“USHOPAL(ユーショッパル)”が運営するオフライン店舗、「BONNIE&CLYDE」(以下「B&C」)です。

B&Cは「越境EC」と「オフライン店舗」を組み合わせたソリューションです。越境ECで取り扱う化粧品などを、NMPA(中国薬事登録)のない商品でも、上海市内をはじめとした中国国内のオフライン店舗で展⽰し、越境ECのスキームで販売できるようになりました。

BONNY&CLYDE
B&Cによる中国での実店舗は、商品の販売場所としてだけではなく、情報発信やマーケティングの場として、中国国内の生活者との接点になります。

現在上海市内に4店舗、2021年中には北京・成都・上海に各1店舗を新規開店予定です。

B&C店舗例(静安寺ケリーセンター内)
B&C店舗例(静安ケリーセンター内)

また、「中国人のインフルエンサーに商品を紹介してもらいたいが、コロナ禍で中国に行くことができず、直接コミュニケーションできない」という悩みに対しては、「在日中国人インフルエンサーの活用」という方法があります。

日本には2021年現在、約78万人の中国人が在留しており、その中には、中国向けに情報発信し、影響力の強いKOL(Key Opinion Leader)、KOC(Key Opinion Consumer)と呼ばれるインフルエンサーが多数存在します。

彼らは日本に居ながらにして、中国で数万~数十万のフォロワーを保有しており、ネット上で「日本に関する情報」を発信しています。CXCでも有力な在日中国人KOLと協力関係を築いており、SNS上で商品のPR、販売、調査などを実施するスキームを確立しています。

おすすめはソーシャルコマース。越境ECは大戦略よりスモールスタートとトライ&エラー! 

越境ECをはじめ、中国ビジネスを考えるときに、重要なのは「スピード」です。

例えば、日本の化粧品の商品開発では、1年半~2年をかけて慎重に進めますが、中国では売れ筋商品のビッグデータを定量分析して、半年で新商品を発売できるといわれています。

このスピードを可能にしているのは、国全体でデジタル化が進んでいるから、ということもありますが、何よりも「企業の意思決定が速い」ということに尽きます。

なぜ意思決定が速いかといえば、

「まずやってみる。ダメだったら、やり直してより良いものにしていく」

という考え方があると思います。

トライ&エラーを繰り返して品質を高めていく中国企業のスピードに負けないように戦うには、日本企業もスピーディーな意思決定と、プロセスの短縮化が必要です。

越境ECも「検証に検証を重ねて、間違いがない戦略を構築していく」より、「まずはスピード優先で小さく始める、スモールスタート」という選択肢もあります。

TmallやJDなどの大手ECプラットフォームに出店するには、厳しい条件とコストがハードルになる場合がありますが、それらに対して比較的参入しやすいのが昨今勢いのあるソーシャルコマースです。中国において微信(WeChat)や抖音(Douyin)で、越境ECを始める日本企業も増えています。

そこで次回は、最近越境ECのサービス提供を始めた抖音(Douyin)についてお話します。

ご紹介したソリューションに関するお問い合わせ、その他中国ビジネスに関するご質問、ご相談はこちらまで。

トランスフォーメーション・プロデュース局 電通China Xover Center
 <dentsucxc@dentsu.co.jp

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