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SDGs達成のヒントを探るNo.11

2021/09/29

アスリート×ビジネスで生まれる、新たな価値とは?

5歳からラグビーを始め、高校、大学、社会人、さらに日本代表でもキャプテンを務めた廣瀬俊朗さん。現在は起業家として、アスリートと企業が協業して社会課題解決を目指すプロジェクト「TEAM FAIR PLAY」を牽引しています。

本記事では、SDGs達成のためのヒントを探るべく、アスリート×ビジネスから生まれる新たな可能性や、ご自身が考えるリーダーシップやキャプテンシーについて廣瀬さんに伺いました。

廣瀬俊朗

 

引退後も「面白いこと」をするために、ビジネスを学び始めた

──廣瀬さんは2016年に現役を引退されましたが、その後のキャリアについてはどのように考えていたのでしょうか?

廣瀬:明確なビジョンがあったわけではないのですが、将来的にはビジネスで面白いことをやってみたいと思っていました。そのために準備をしようと、2016年にビジネス・ブレークスルー大学大学院(※)に入学して、経営の勉強を始めました。ゆっくり勉強するのもいいけど、自分にプレッシャーを与えたほうが頑張れると思い、あまり悩む期間をつくらずに入学を決めましたね。

すぐにアクションを起こせたのは、長年スポーツをしてきて、「体感すること」の大切さを実感していたからかもしれません。いいなと思ったら「まずはやってみる」というのは、僕がとても大事にしていることなんです。

2019年には「HiRAKU」という会社を設立しました。これまでスポーツを通して得た知見をビジネスのフィールドに広げ、人材育成やスポーツに携わる人を増やすことを目的にしています。会社を立ち上げるにあたり、「お金もうけをしたい」とはあまり考えていませんでした。それよりも、スポーツをもっと身近なものにするため、好きになってもらうために、みんなで何か面白いことができないかなという気持ちが強くありましたね。

ただ一方で、何かを継続的にやっていくためにはお金がないとうまくいかないだろうとも思っていて。まずは、みんなで面白いと思うことをやってみる。そしてそれが最終的にマネタイズにつながればいいな、と今は考えています。

また、現役時代から「アスリート」や「スポーツ」といった視点から、社会課題の解決のために何かできないかなということもぼんやり考えていました。合宿で地方へ行ったときに、町に元気がなくなってきているのを肌で感じて、どうしたら活気を取り戻せるのか、そもそも地方の本当の課題は何なのか、といったことを自然と考えるようになったんです。

僕は今も、やりたいことが明確にあるというわけではなくて、いろんな人と関わる中でやりたいことが見つかって、新しい道が開けてくる感じです。HiRAKUではいろいろな活動を行っていますが、2021年からは、新しいプロジェクトとして「TEAM FAIR PLAY」をスタートしました。

※ビジネス・ブレークスルー大学大学院:国内初のオンラインMBA大学院として2005年に開学。世界的な経営コンサルタント大前研一氏が学長を務めている。


 

アスリート×ビジネスで社会課題の解決を目指す「TEAM FAIR PLAY」

──現在、廣瀬さんが取り組まれている「TEAM FAIR PLAY」について教えてください。

廣瀬:「TEAM FAIR PLAY」は、アスリートと企業が協業して社会課題の解決を目指すプロジェクトです。ルールを守って他者を尊重する、スポーツの「フェアプレイ」を、社会でも当たり前のこととして広めていきたいという想いから始まりました。環境問題や食、地方創生など幅広い領域に取り組んでいこうとしています。

──具体的には、今どのような活動をされているのでしょうか?
 
廣瀬:現在、「FAIR PLAY TALK」と題した動画企画に取り組んでいます。社会課題の解決に取り組む先駆者たちに僕が話を聞き、その動画をYouTubeで公開するというものです。

例えば先日は、産業廃棄物のリサイクルに取り組む石坂産業の石坂典子社長に、廃棄物の根本的な課題や、SDGsに取り組む企業の課題などを教えてもらいました。

石坂さんには、アスリートが直接話を聞きに来るのは珍しいと驚かれ、さらに2回目にお伺いしたときには、「普通は2回も来ないよ!」と笑われました(笑)。でも喜んでいただけて、その後のイベントにも呼んでくださり、新たなリレーションも生まれました。

廣瀬俊朗

他にも、フォーブスが選ぶ“アメリカで自力で成功を収めた女性50名”に、日本人で唯一選ばれた起業家の久能祐子さんや、「東北風土マラソン&フェスティバル」の発起人・竹川隆司さんなどに、社会が求めるリーダー像や、東北復興のためにスポーツができることなどを聞きました。今後も定期的に動画を公開し、“地球のためにできるフェアプレイな活動”なども紹介していく予定です。「FAIR PLAY TALK」をきっかけに、次のアクションにつながるヒントが得られたり、活動が広がったりしていけばいいなと思っています。

皆さんとお話をしていて感じたのは、それぞれが「実現したい世界」のビジョンをきちんと持っているということ。熱い想いが伝わってきましたし、自分にはない発想を持っている人から学ぶことは多いと感じました。皆さん、それぞれの分野で今まで培ってきたことがあるので、そこに頼って力を借りながら、一緒に面白いことをやっていきたいです。

みんながそれぞれの役割を担いながら活動を進めていけると、まさにスポーツのチームみたいでいいですよね。そして活動をするときには、「楽しむ」ことも大切にしたいと考えています。周りの人を楽しませて巻き込んでいくためには、まずは自分たちがワクワクした気持ちで楽しまなければいけないですよね!

そのほか、現在はコロナ禍でなかなか進められていませんが、マルコメさんと一緒に食品ロス問題の解決に向けた取り組みを計画しています。「TEAM FAIR PLAY」は一緒に活動を推進する仲間を増やしていこうとしています。最初に仲間になってくれたのがマルコメさんだったんですね。具体的には、形が悪いという理由だけで廃棄される規格外野菜を使用して味噌汁をつくり、それをスポーツイベントなどでお客さんに食べてもらおうという企画です。

栄養満点で体にいい味噌の魅力や、地域ごとに味が異なる面白さも感じてもらえればと思っています。イベントでは、地域性を生かして「味噌汁対決」と題して食べ比べをしてみたり、同じく発酵食品である甘酒を使ったスイーツも一緒に提供してみたり……。面白いことができないか、いろいろ考えているところです。この取り組みを通して、食品ロスはもちろん、日本の文化についても、みんなで楽しみながら考え直すきっかけになればうれしいです。

──これからさらに活動が広がっていきそうですね。現在の活動の中で、廣瀬さんが難しいと感じることや課題はありますか?

廣瀬:「TEAM FAIR PLAY」を事業として続けていくための、マネタイズの仕組みができあがっていないところが課題だと感じています。お金もうけが目的ではないものの、「TEAM FAIR PLAY」の理念や想いだけで活動していては、事業を続けていくことはできません。そのため、お金をいただけるような仕事もやっていかなければならないのですが、そのバランスがとても難しいですね。

これは、SDGsや社会貢献活動に取り組む企業もきっと悩むところではないでしょうか。しかし今の時代、「お金もうけ」に寄ってしまったり、楽な道を選んだりしてしまうと、「本気で取り組んでいないんだな」とすぐに見抜かれてしまう。大変なところを乗り越えた先に、お金もついてきて回るようになっていくと思っています。

あとは「仕事」と「勉強」のバランスも難しいと感じていますね。例えば今はマルコメさんとの取り組みで「発酵」や「日本文化」に関することを学びたいと思っているのですが、仕事もしながら学ぶための時間を確保するのはなかなか厳しい。今もベストな塩梅を日々模索しているところです。

──それらの課題を乗り越えるために必要なことは何でしょうか?

廣瀬:何かのプロジェクトや活動を始めるとき、最初に考える目的の部分、「大義」がとても大切だと考えています。「TEAM FAIR PLAY」で言うと、「フェアプレイ」の精神を世の中全体に広げることが大義です。これが、チーム内できちんと共有されて、みんなが腹落ちした状態であれば、それを成し遂げるためにどうしたらいいのかをみんなが一番に考え、同じ方向へ進んでいくことができると思います。

リーダーシップやキャプテンシーを身につけるためには? 

──廣瀬さんは長年、さまざまなチームでキャプテンを経験されてきていますよね。廣瀬さんが考える「リーダーシップ」について、教えてください。

廣瀬:リーダーシップで大切なのは、自分が「どうありたいか」を考えて行動すること。「どうありたいか」を見つけるためには、さまざまな人と会ってコミュニケーションを取りながら、自分自身を知ることが必要不可欠です。自分の「軸」になる部分が見えてきたら、トライアンドエラーを繰り返しながら、その軸をより強固なものにしていくことが大事だと思います。

また、自分が動くことで周りの人も巻き込んでいけるとすごくいいですよね。自分がどうありたいかが定まらないまま、なんとなく「世の中の流れや常識的にはこうだから」と行動していては、周囲は「見栄でやっているんじゃないか」「本当はどう思っているんだろう?」と感じてしまうはず。揺らがない軸があることで、「この人についていきたい」「この人と一緒に何かやりたい」と思ってもらえるのではないでしょうか。

「リーダーシップ」というと、組織のリーダーになりたい人や上に立って引っ張っていきたい人だけに必要なものだと思われがちですが、そんなことはありません。二人一組であっても、相手に変化を与えることができれば、それはもう「リーダーシップを発揮している」と言えます。リーダーシップは、誰にとっても本当に身近なところにあるものなんです。

最近では、リーダーシップだけでなく「キャプテンシー」というアプローチからも、皆さんに何か伝えられることがあるのではと考えています。スポーツの場合、「キャプテン」は、監督とチームメイトの間をうまくつなぐことが求められるポジション。これって、上の立場と下の立場に挟まれながら仕事をする中間管理職や現場のプレイングマネージャーと同じだと思うんです。

その難しい立ち位置にいる人たちは、どうすればうまく仕事ができるのか。何を大切にすればいいのか。もしかしたら、僕自身が監督とチームメイトの間で両者の想いをうまく咀嚼しながらコミュニケーションするようにしてきた経験から、ヒントが見つかるのではないかと考えていて……。何か新しいことができるかもしれないと思い、今チャレンジしているところです。

──最終的に廣瀬さんが目指すもの、到達したいのは、どのようなところでしょうか?

廣瀬:最終的には、さまざまな取り組みを通して「自分自身がどう生きたいか」を考えてもらうきっかけをつくりたいと思っています。仕事でも趣味でもいいのですが、自分が好きなこと、これをやって生きていきたい、と思えることを見つけてもらえたらうれしいです。

そして、「今だけ良ければいい」と考えるのではなく、次世代の子どもたちや未来のことを考えてアクションを起こす人が増えてほしいなとも思っています。新しいことを学んだり、行動したりすることは億劫かもしれませんが、いろいろなことに飛び込んで体感するのは面白いということを、今後も伝えていきたいです。「TEAM FAIR PLAY」の仲間として一緒に活動頂ける企業や団体、個人の方などは、ぜひ連絡いただけますと幸いです。

TeamSDGs

TeamSDGsは、SDGsに関わるさまざまなステークホルダーと連携し、SDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発などを行っています。

TeamSDGsのウェブサイトでは、ウェブ電通報とは違う切り口で廣瀬さんのインタビューを紹介。コロナ禍の学生アスリートを支援するプロジェクト「#スポーツを止めるな 」について、さらにはさまざまな社会貢献活動を行う中で意識されていることをお伝えしています。ぜひご一読ください。

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