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月刊CXNo.1

2021/09/30

クリエイティブの“世の中を捉える目”は、CXでも必ず力を発揮する。

日々進化し続けるCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)。

今やあらゆるシーンで求められるCX設計に対し、電通のクリエイティブはどのように貢献できるのか?

その可能性を解き明かすべく、電通のCX専門部署「CXCC」(CXクリエーティブセンター)メンバーがCXとクリエイティブについて情報発信する新連載、その名も「月刊CX」をスタートします。(月刊CXに関してはコチラ

第1回は、CXCCの手がけたCX成功事例として高く評価されているLIFE TUNING DAYSチームをゲストに迎え、CXクリエイティブの神髄に迫ります。

LIFE TUNING DAYS イメージ

LIFE TUNING DAYS イメージ2

【LIFE TUNING DAYS】
LIFE TUNING DAYSとは、約5000年の歴史を持つ「ヨガ」にヒントを得たトータルウェルネスのコミュニティ兼プラットフォーム。B-connect社と電通がパートナーシップを組んで運営する新規事業です。

LIFE TUNING DAYS
https://life-tuning-days.com/

B-connect社はもともと3代にわたる老舗アパレル企業からスピンアウトして生まれたスタートアップ企業です。その事業の拡張を模索して、電通と協業することになりました。取り組みの真ん中にCXがあります。

そこで今回この取り組みのきっかけをつくったトータルプロデューサーでトランスフォーメーション・プロデュース局の三村洋平氏、メインプランナーでデータマーケティングセンター所属の松岡康氏、コピーライター兼プランナーで現在電通デジタル出向中の上遠野茜氏の3人に話を聞きました。

三村氏、松岡氏、上遠野氏

新たな「体験づくり」は新たな「言葉づくり」から

月刊CX:LIFE TUNING DAYSについて詳しく教えてください。 

三村:約5000年以上も前に始まったといわれるヨガからヒントを得たトータルウェルネスのコミュニティ兼プラットフォームです。「心とカラダのバランスを整える」ことを目的としてトータルウェルネスのTipsを集約し、デジタル/リアルのハイブリッドなイベント開催やSNSでの情報発信、ECサイトでの商品販売、スポンサーとのタイアップコンテンツ開発なども行っています。

月刊CX:B-connect社とCXCCのチームは事業の企画段階からクリエイティブメンバーを交えて一緒につくり上げてきたとのことですが。

上遠野:最初にB-connect社の高橋社長から新しい取り組みへの思いを詳しく伺い、われわれがそれをコンセプトに落とすところからスタートしました。高橋社長は「日本の健康寿命を0.5歳伸ばしたい」ということと、ヨガやウェルネスを扱うプラットフォームをつくりたいということをおっしゃっていましたね。

月刊CX:日本の健康寿命を0.5歳伸ばしたい。一見すると小さな数字のようにも思えますが、日本全体のこととして捉えると大きな意味のある素敵な考え方ですね。

上遠野:そうなんです。ヨガというと、どうしても意識が高いイメージがありますよね。でも「健康寿命を日本全体で0.5歳伸ばすこと」を目的にするのであれば、もっと広くみんなに関係あると思ってもらえるコンセプトにできるので、この方向性で考えました。

月刊CX:具体的にはどういうコンセプトにしたのですか?

上遠野:「生きる」ということをチューニングする、というふうに、言い方を少し抽象化して「ライフチューニング」という新しいコンセプトをつくりました。そしてそのためのプラットフォームをつくるということで最終的には「LIFE TUNING DAYS」という名前になりました。

体験を“数珠つなぎ”にすることでより強固なCXが生まれる

松岡:「ライフチューニング」という言葉を生み出したところから、実際のCX設計に取り掛かりました。「生きる」ことのチューニング方法がいくつかあり、そのチューニング方法それぞれにコミュニティが存在することで、参加者全体の活動を活性化させる。そういう形を目指して、まずはチューニング方法を大きく4つに分けました。

4つのチューニング方法

月刊CX:具体的にはどういうチューニング方法ですか?

松岡:
・見た目を整えるインターフェースチューニング
・カラダを動かして整えるボディーチューニング
・カラダのウチに取り入れるもので整えるインナーチューニング
・心を整えるマインドチューニング
の4つです。4つのチューニング方法それぞれが、美容やファッション、ヨガ、食生活、コーチングやメディテーションなど、具体的な体験としっかりと結びついています。

月刊CX:上遠野さんはこの事業にプランナー/コピーライターとして参画しています。そうしたいろいろな「ライフチューニング」がある中で、電通ならではのクリエイティブが特に貢献していることは何でしょうか?

上遠野:一貫した思想をつくった上で、個々の取り組みやイベントがブレないようにしっかり管理しているところだと思います。

LIFE TUNING DAYSには本当にたくさんの取り組みやイベントがあるので、油断しているとすぐ「この商品は、こういう成分が入っていていいよ!」のような、いわゆる“売らんかな”的な状態になってしまいます。そうした一つ一つに対しても、一貫した思想につながる文脈をつけて発信するなど、フィルター的に管理するところが、一番大きい仕事だと思います。

SNSで発信する際にも、例えば立ち上げ期には、私たちクリエイターがインスタライブの台本を毎回書いたりチェックしたりして、演者さんに何を言ってもらうか、マガジンでどういう文脈で発信するかも考えていました。思想が一貫してブレないように丁寧に考えてアウトプットを行うのが、本事業における電通クリエイティブの役割です。

イベントイメージ

月刊CX:体験を提供する上で、ユーザーの共感を得るのが大事なのはもちろんですが、その共感を生み出す元となる“思想”が一貫していることがCXクリエイティブのポイントなんですね。

上遠野:そうです。特にSNSでは公式アカウントの人格に一貫性がないと、今のユーザーには信用されません。ある場面ではソーシャルグッドなことを言っていたのに、次の瞬間「すごく安いよ!」と言っていたのでは、ユーザーの信頼を失います。そういうところをずっと継続して管理して、マネジメントし続けることが重要だと思います。

想定外のことにも即座に対応できる柔軟性が不可欠

月刊CX:LIFE TUNING DAYSが今の形になるまでいろいろあったと思いますが、CXクリエイティブ的にどういう順序で成長しましたか?

松岡:SNSが最初です。というのも、LIFE TUNING DAYSのローンチが2020年3月だったのですが、新型コロナウイルスの影響がいきなりあって、SNSから始めざるを得なかったのです。本来はもっとECとリアル施策が中心になる予定だったのですが、コロナ禍の影響で、SNSを中心としたコミュニティ施策が自然とサービスの中心になっていきました。事業立ち上げのイベントの実施が難しくなったピンチをSNSのコミュニティが救ってくれたともいえます。

月刊CX:いわゆるアジャイルな形で成長してきたのですね。

松岡:特に2020年3月12日〜14日という、新型コロナウイルスの影響で実施が一番難しくなるタイミングにローンチイベントを企画していたので、いきなり壁に当たった感じでした。これは中止かと思ったときに、出演協力をいただいていたタレントの福田萌子さんたちとも会話をする中で、「今だからやんなきゃいけないですよ」という空気が生まれ、やったこともないインスタライブを始めようということになりました。

当時まだインスタグラムの公式アカウントさえ開設して間もない状態でしたが、出演者の方々や配信に必要な機材に詳しい方々にも協力していただきつつ、とにかくみんなで行動に移しました。「まずはみんなでインスタライブっていうのを成功させよう」と、協力し合って動きまわったことを覚えています。

月刊CX:まさに怒涛の展開ですね。

松岡:最初のインスタライブが成功した後、緊急事態宣言に突入。そこからは新たに企画を立ち上げ、毎日リレー方式で、計90日間連続ライブを行っていた感じです。実施に当たってはクリエイティブチームの協力を得ながら、1日も欠かさずに毎日配信を続けて、気づいたときにはインスタライブにおけるわれわれのブランドみたいなものができていました。

そこから6月21日の国際ヨガDAYにオンラインでワンデーイベントも実施したり、ハワイからモデルのSHIHOさんに参加いただいてZoomでイベントをやったり、インスタライブで商品を紹介しながら購入してもらうものもあれば、レシピを紹介するライブも行いまして。本当に1日で心とカラダをみんなで整えようという感じの展開でした。

成長の過程

月刊CX:よくあるキャンペーンのように1回で終わる体験ではなく、少しずつ形を変えながら延々と調整しつつ続ける取り組みですね。

松岡:一度お客様がつくと次も期待してくださるのでそれも大きかったかもしれません。2020年9月からは東急スポーツオアシスにもパートナーとなっていただき、協力してオンラインとオフラインのハイブリッドイベントも行いました。

また、渋谷区で行われた「SOCIAL INNOVATION WEEK」というイベントに合わせて宮下パークの中でリアルなイベントも実施しました。

今年の6月に行った3日間にわたるオンラインイベントでは、世界ナンバーワン瞑想アプリのCalmと連携してダウンロード促進しながら、Calmのコンテンツをオンラインで発信したり、全国のいろんなヨガスタジオをつないでみんなで108回の太陽礼拝にチャレンジする「全国ヨガリレー」をしたりするなど、新しい取り組みも始めています。

今は、11月に渋谷区と一緒に「SOCIAL INNOVATION WEEK」を盛り上げるために、昨年から規模も中身もさらに発展させた「1万人ヨガ」的なものも企画しています。

イベントイメージ

広告クリエイターの“世の中を捉える目”はCXでも力を発揮する

月刊CX:CXクリエイティブを極めるコツや秘訣などあればお伺いできますか?

上遠野:「LIFE TUNING DAYS」のCXクリエイティブで特に意識してやってきたことは、「みんなが信じられるものをつくること」で、そこは間違いなく秘訣です。

例えばスタートアップが大型コマースサイトと真正面から戦っても勝てないですよね。価格競争や品ぞろえ、タレントをアサインする予算など、何もかもケタ違いですので。

そうした相手に対して、スタートアップがECをゼロから立ち上げて運営し始めるときに大切なのは、「この『LIFE TUNING DAYS』が言っていることは信じられる」と思ってもらえるようにすることです。

実際、それが功を奏したのだと思いますが、ユーザーにこの取り組みを信じて、自分たちのものとして積極的に取り入れてもらい、多くの方々にファンになっていただけました。

同じように、協力いただくインフルエンサーや出演者の方々にとっても信じられるものをつくり、ブレないようにマネジメントし続け、そしてそれを全ファネルでやり続けること。CXクリエイティブとしてはそういう仕事が一番大事だと思います。

月刊CX:メインプランナーの松岡さんはいかがでしょうか?

松岡:世の中に対して呼応し続けるということも大事だと思います。マス広告は発信するまでの準備にしっかりと時間をかけ、クライアントも表現を一緒に何度も詰めて、設計し尽くしたものを出していくイメージですよね。一方で、世の中の空気って結構ふわふわしていて移ろいやすく、すぐどこかに行ってしまいます。その変化に対して即座に呼応し続けるのも、CXクリエイティブにおける一つのポイントだと感じています。

そして、変化に呼応するためには「すぐ動けるパートナー」も必要です。いざ何かやろうとなったときに、一瞬で一緒になって進むことができる体制ができているかどうか。「LIFE TUNING DAYS」では、B-connect社や出演者とそうした体制をつくれたことで、クイックな動きができていたと思いますし、いろんな施策を今も打ち続けられていると思います。

月刊CX:CXクリエイティブを手掛けるに当たって、広告クリエイティブをやっているからこういうところにまで目が行き届くとか、サービスづくりに気持ちが行き届くみたいなことはありますか? 

上遠野:広告クリエイティブをやっていて良かった点は「世の中ゴト化する視点」を持てることだと思います。私たち広告クリエイターが参加していなかったら、打ち出し方としてはおそらく「ヨガ&ウェルネスです!」ということで終わっていたかもしれません。

ヨガ講師の方々は自分の世界に引き込むすごいフレーズを持っておられる方が多いのですが、それがどういうコンセプトで、みんなの人生にどう役に立つのか、そこを翻訳してあげることが必要だと感じました。

その点、広告クリエイティブはいろんな企業や世の中の潮流に向き合い続けるのが仕事なので、そういう視点が自然と身についています。まさに「ライフチューニング」という言葉もそうですが、「みんなに関係あるよね」というふうに、多くの人に伝わるように翻訳できているのかなと思います。

月刊CX:コピーライターは普段からそういう訓練を受けていますし、腕の見せ所ですね。ちなみにCXを行うとき、アートディレクター(以下AD)の役割やパフォーマンスはどういうふうに見えていますか?

松岡:ADは最強です。チームみんなが価値観を共有する有効な手段として、「言葉」と「ビジュアル」がありますが、やはりビジュアルで見せた方がみんな分かりやすくてテンションが上がります。

「今回こういうタイトルで、こういうビジュアルで考えました」というふうに、イベントのメインビジュアル持って行ったときに、協力いただいていたヨガ講師の方々のテンションの上がり方がとても良くて。「わぁかわいい」とか「わぁ素敵」とか、みんなで盛り上がり、「このイベントに参加しているって、誇りだよね」とも言っていただけました。

上遠野:今のコミュニケーションやCX設計って、価値をバシッと一つの言葉や形にして終わりというよりは、ブランドの世界観や価値観をいかに継続的に発信していくかが重要になっていると思います。

継続的な発信のためには、特にその「世界観づくり」が生命線だと私は思っています。例えばインスタが主戦場だとすると、その世界観がないとどんなに良いことを言ってもユーザーに届きません。ADは世界観を分かりやすく「絵」にして共有してくれますし、それが必要になったときにフットワーク軽く手を動かしてくれます。それは従来のADの働き方とは違うかもしれませんが、本当に大事でありがたい存在です。

月刊CX:ADがつくる「言語外の感覚」みたいなことが生命線になることがありますよね。「何かイイ感じ」という感触も、コントロールできないと、取り組みとして継続できなかったりします。本日はとても貴重なお話をありがとうございました。


(編集後記)
月刊CX 第1回、いかがでしたでしょうか?今回は電通がクライアントのパートナーとなり、顧客体験そのものを生み出したチャレンジを紹介しました。次回は、広告領域でのCXチャレンジとして「ソーシャルエンゲージメント」の取り組みを取り上げたいと思います。

こういう事例やテーマを取り上げてほしいなどのご要望がありましたら、下記お問い合わせページから月刊CX編集部にメッセージをお送りください。

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