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NFTで拡がる、エンタメビジネスNo.1

推し活、メタバース…エンタメのファン体験を革新するNFT

2021/12/21

電通のコンテンツビジネス・デザイン・センターでは、アニメ・映画・ライブエンタメ・eスポーツなど、さまざまなエンターテインメントコンテンツ事業に携わっています。

コロナ禍の影響で、映画やライブ、イベントなどの活動が十分な形で実施できないことがありましたが、一方でバーチャルなライブやイベントなど、新しいビジネスも生まれました。

そんな中、大きな注目を浴び、2021年の流行語大賞にもノミネートされたのが「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」です。

NFTは、クリエイター・アーティスト・IPホルダーにとってコンテンツ創作や表現、権利の在り方までも変える重要な技術です。そして同時に、コンテンツのファン体験を大きく変える技術でもあります。

この連載ではブロックチェーン・NFT技術を活用したエンタメコンテンツにおけるクリエイター・アーティスト・IPホルダーのDX、ファン体験のDXについて、事例を踏まえながらご紹介していきます。

初回は、電通CBDC(コンテンツビジネス・デザイン・センター)でNFTのビジネスを推進している武田が、エンタメのファン体験を革新するNFTについて語ります。

※この連載では、エンタメファン体験にフォーカスして記載するため、NFTの技術的な観点・法的な観点に関しての記載を最小限にとどめております。詳細はお問い合わせください。
 
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ファングッズ革命

皆さんは、デジタルなファングッズを購入したご経験はありますか?

デジタルなファングッズと聞くとピンと来ないかもしれませんが、キャラクターのLINEスタンプ・スマホ壁紙、スマホゲームの課金コンテンツ、もしかしたらゲーム内の通貨で購入できるスキンや武器などもデジタルグッズと言えるかもしれません。

こういったデジタルなモノを購入した経験は、少なからずあると思うのですが、実はこの購入したモノは私たち自身が所有できていません。なぜなら、これらのデジタルグッズは提供されるプラットフォームに依存しており、仮にそのプラットフォームが提供を辞めてしまうと私たちの手元からなくなるモノだからです。

NFTはインターネット上で、保有者を証明する仕組みです。

この技術によって販売主から購入者に対して、デジタルなモノの保有権を移転させることが可能になりました。つまり、「デジタル上でモノを保有する」ことが可能になったのです。


エンタメコンテンツにおけるNFTの活用

2021年春ごろから、NFTに関するニュースを目にすることが多くなりました。そのほとんどは「超高額でNFTが売れた!」という切り口で、高いものでは数十億円の値がついています。

これらのニュースによって連日さまざまなメディアでNFTが紹介されるようになり、認知度が一気に伸びたのですが、一方で「NFT=高く売れるモノ」というイメージが付きすぎているようにも思います。そして、最近では「NFTブームは一過性のものだ」という声もちらほら聞こえてくるようになりました。

私はこのNFTの一般的なイメージを変えていきたいと思っています。

もちろんNFTを購入する際に「投機的な価値」を感じることも大事な動機の一つですが、NFTを保有することが、ファンとしての満足度を高めたり、自分のオタク度をアピールする手段になったり、コミュニティに所属している証になることが、より本質的な動機になるのではないかと思うのです。

電通CBDCではNFTという技術そのものではなく、NFTによってどうすれば既存のファン体験がより楽しくなるのか、どうすれば新しいファン体験を届けられるのかに着目してNFTのビジネスを促進しています。

推し活×NFTの可能性

私が担当しているアニメの領域においても、アニメファンが作品やキャラクター、声優、クリエイターなどを応援する「推し活」は、NFTを使うとさらに楽しいものにできると思うのです。

そもそも、アニメファンはグッズを買う際に、そのグッズの「モノ」の価値を感じることはもちろん、そのモノを持っているとファンコミュニティにおいてリスペクトされたり、同じキャラクターを推していることを表明するといった「コト」の価値や、ライブを一体感をもって楽しむためのライブTシャツといったような「トキ」の価値も加味して購入しています。

NFTを活用することで、このモノ・コト・トキの価値をデジタル上でも表現できるのです。

例えば、マンガやアニメが大ヒットすると、コアファンとしては、「自分はブームになる前から推していた!」と言いたくなります。この場合、コミック1巻の初版にだけ配布されるNFTがあったり、アニメ全話をリアルタイムで視聴したファンにだけに配布されるNFTがあると、大好きな作品の希少な「モノ」を手に入れる喜びはもちろん、初期からファンであった証明をデジタル上で受け取り、それをアピールする「コト」もできるでしょう。

バーチャルライブに参加する際、自分のアバターに着せる限定ライブTシャツがあったとして、そのライブイベントが終わると同時にそのデータも消えてなくなってしまうと寂しいですよね。これをNFTを発行して販売するとバーチャルライブ終了後もファン自身が保有しておくことができ、保有していることがバーチャルライブに参加し、同じ「トキ」を共有した証になるのです。

このように、あくまでもUX(ユーザー体験)から逆算してNFTという技術を活用していくことが、NFTを活用する際に重要なことなのではないかと思うのです。

一方、IPホルダーから見ても、NFTはデジタルグッズに付けて売るだけでなく、
ファンを巻き込む手段として活用できる技術です。例えば、クラウドファンディングのようにファンから資金を集める手段としてや、ファンに対して2次利用や2次創作の権利を付与することでアンバサダーを増やす手段としてもNFTの活用を検討しています。

NFTを活用することで、ファンとIPホルダーが、株主と株式会社のように良い意味で運命共同体のような関係を構築することができるのです。

デジタルグッズがメタバースにおけるアイデンティティになる

さらに2021年11月にFacebookがMetaに社名を変更したことにより、インターネット上に広がる三次元の仮想空間「メタバース」が注目されています。ここではメタバースの詳しい説明は避けますが、われわれがいまウェブ上で集っている2Dのコミュニティが3Dの仮想世界に移行した時、自分のアバターに対して、そのコミュニティにおける自らのアイデンティティを示す服やグッズを身に着けたくなることは必然の流れでしょう。

メタバースにおいては、現実世界と同じように、あらゆるショップで買ったモノをあらゆる世界に持ち出せることが理想です。これを実現するのがNFTであり、異なるサービスを跨いで取引されるようになるとブロックチェーン技術が本領を発揮するのです。このようにメタバースにおける活用を出口とした場合、NFTを購入する体験は、ただ「デジタルデータを保有する」だけではなく、「デジタル上での自己表現の手段」を手に入れることになるのです。

今後の連載では、いままさに世界中で動き始めているNFT(やメタバース)といった領域を「ファン体験をより楽しくする」という視点で捉えて実践していく、電通CBDCのプロジェクトをご紹介していければと思っています。

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