B2B事業を電通グループ横断チームで徹底サポート!B2Bイニシアティブ始動No.2
そのDX、組織への「熱量」は足りていますか?
2022/06/22
こんにちは。電通グループの横断プロジェクト「電通B2Bイニシアティブ」でサブリーダーを務めている小山雄也です。「電通B2Bイニシアティブ」は、法人ビジネスにおいてDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、営業・セールスDXやマーケティングDX領域の支援を行っています。
今回は、電通プロモーションプラス(※)のコピーライター・井上峰成さんを迎え、クリエイティブの視点を交えて、企業がDXに取り組むときや営業支援・顧客管理システムを導入する際に必要なことを考えます。
※電通プロモーションプラス:2022年4月に、販促ソリューション業務の強化を図るため、グループの再編を行い、電通テックから社名を変更。B2B領域では、オウンドサイト構築やコンテンツマーケティングによるリード獲得~ナーチャリング、インナーブランディングやコミュニケーション支援などを行っている。
DXを進めてはみたものの、うまく機能しない……。その問題点とは?
小山:B2B企業において、マーケティングオートメーションやSFA(Sales Force Automation)、CRM(Customer Relationship Management)などの営業支援システムは、この2年で、だいぶ普及してきたと感じています。しかし一方では、システムを入れたものの活用されていない、当初期待していたほど導入の成果が出ていないという話をよく聞きます。
井上:そうですね。コロナの影響で、特にB2B領域においては、今までフィールドセールスを行ってきた部分において、アプローチやプロセスが大きく変化しています。さらに企業の合併や再編、事業戦略の見直し、組織や人事戦略も変化のスピードが上がっていると感じます。このような変化の中で、社内のコミュニケーション方法は、リモートワークが定着したこともあり、かなり硬直化していますね。
小山さんとは企業のインナーコミュニケーションについて考える機会が多いのですが、いろいろな企業で社内の分断が起きていると感じることがあります。社内には、経営層と現場のプレイヤーを結ぶ“縦軸”と、組織内のつながりである“横軸”があります。この二軸において意思の疎通や連携が取れていないと、いくら企業がDXを図ってもうまく機能しません。
小山:CRMやSFAなどの営業支援システムは、業務の効率化をもたらしますが、それがなかったとしても業務自体は成り立ちます。ですから、システムを入れる目的を社員にきちんと理解してもらわないと、なかなか使ってもらえず、業務プロセスの変化に至らないことがありますね。
井上:新たなシステム導入など、企業が新しいアクションを起こすときは、どうしてもトップダウンになりがちです。社員に「何を伝えるか」だけでなく、「どう伝えるか」という部分も非常に大事です。
私はこれまで企業のブランディグやスローガンの作成などの仕事にも携わってきました。ある食品メーカーでは、コーポレートスローガンを設定して、会社の今後の方向性について経営層と話をする機会がありました。その企業は200年以上の歴史があるのですが、新たにスローガンを立ち上げたからといって、今すぐ何かを劇的に変えるつもりはないと経営者は考えていました。かなり長期的な視点を持っていたんですね。でも、新たなスローガンを立てたのだから、すぐに何かを変える必要があるのでは、と考える執行役員がいました。経営者と執行役員でも認識が結構違うと感じましたから、経営者と現場のプレイヤーの認識はもっと違うかもしれない。ですから、経営者と社員の視座のすり合わせが必要だと思いました。
小山:経営者の思いを社員にどう伝えていくのか、巻き込んでいくのかという観点で、うまくいったエピソードがありますか?
井上:ある出版社が会社のスローガンを決めたときのことですが、その会社の社長は、「私の話だけからスローガンを考えるのではなく、編集や営業など一人一人の社員の話を聞いてそれぞれの思いをすくい上げてほしい」とおっしゃったんです。それによって、スローガンの作成に会社全体を巻き込むことができ、現場のさまざまな声を聞くことができました。あとは、その熱気をそのまま言葉に変換すればいい。時間はかかりましたが、これしかないという言葉にたどり着くことができました。スローガンの中身はもとより、プロセスの大事さを感じました。
小山:では、横軸、つまり社員間でモチベーションを上げていくためにはどのようなアプローチが有効ですか?
井上:これまでの経験から、考え方が全く違う人同士が集まる場所をつくるとすごく熱量が上がると感じています。一人一人の社員が日ごろ思っていることを共有できる場所が大事です。設定したゴールに向かう推進力を得るには、やはりプロセスをどう設計するかが大事なんです。
例えば、「こういう課題があるから、それを解決するためのシステムを入れます」というのは非常にわかりやすいですが、それまで大事にしていたこと、例えば社風や志というものをなくしてしまう懸念があります。ですから、課題を解決すると自分たちはどうなるのか、何をモチベーションにすればいいのか、社員みんなが腹落ちする、その会社ならではの道の模索が必要なんです。
小山:電通B2Bイニシアティブは、企業のデジタルセールスシフトを支援していますが、企業のDX化においても、縦軸や横軸の両面を考えながらプロセスを設計したり、時間軸を持って定着させていくことが必要ですね。
デジタルセールスシフトを成功させる“4つのプロセス”
小山:営業支援システムにおいても、導入後、ただ利用状況を調べて、利用を促進するというのでは、社員の方は、「やらされている」と感じてしまうことも少なくないでしょう。そこで社員一人一人が腹落ちして使えるよう、企業内DX定着のフレームワークとして、「見える化」「自分ゴト化」「行動化」、さらにその先の「定着化」のプロセスを提案しています。
井上さんとは、ある企業の法人営業組織向けのDX化・営業支援システム導入に伴うプロセス支援にも取り組みましたね。そのときのチェンジマネジメントやインナーコミュニケーションについて、クリエイティブの観点から説明してください。
井上:法人向け営業活動の高度化・効率化を目的にシステムが導入されることになったわけですが、そもそも「効率化とは何だろう」と考えたときに、おそらく経営層が考えていることと現場が考えていることとのギャップがあると思ったのが原点でした。そこで、前述したフレームワークに即しながら、まずはトップがメッセージを発信するには、どのタイミングでどのような内容がいいのかを考えるところからスタートしました。
自分ゴト化してもらうプロセスを設計するのは、最もハードルが高かったです。この会社がシステムを導入しやすく、きちんと業務に取り入れてもらう雰囲気をつくるにはどうすればいいかを探っていく中で、能動的に楽しめるような、遊び心やゲーム感覚があるといいと感じました。システムを使い続けることで自分や組織のレベルが上がることがわかり、システムの良さを実感できるものがいいと考えたのです。その結果、RPGをモチーフにした周知や気づきを与えるクリエイティブ、ソリューションを提案しました。
小山:システムを導入すると社員個人、組織とも営業活動のやり方やプロセスが変わります。ですから、なぜこの社内システムが必要なのかということと、あるいは、いままでの営業方法での課題や変えていくことを含めてマインドセットして、システムを使っていただくことを目標にしました。また、みんなで一緒につくっていくシステムであることをうたうために、社員参加型の施策を設け、自分ゴト化してもらう取り組みも行いました。
定着化という点では「ゲーミフィケーション」の考え方を活用しました。これは営業支援システムにログインしたり案件を登録したりするたびにレベルが上がる仕組みを取り入れ、そして所定のポイントをクリアすると、オンライン上のアイテムがコレクションできるというところで、利用促進、定着化を狙っています。
じつは、こうした取り組み実績を重ね、電通プロモーションプラスでは、「EnGame」という、企業内のDX定着に向けたソリューションを提供しています。これは、営業支援システムなどと連携させ、ゲームデザインを取り入れた独自プログラムを開発提供するものです(詳しくは、こちら)。
この企業は、RPGというアイデアで、営業支援ツールの定着化を図りましたが、企業の個性はさまざまですから、それぞれの企業文化・環境に合った「見える化」「自分ゴト化」「行動化」「定着化」のプロセスを提案していきます。
井上:今回お話ししたように、企業のDX化を進めるには、組織の熱量が必須です。そして熱量を上げるには、インナーコミュニケーションを踏まえた、その企業らしいシステム導入プロセスの設計が欠かせません。
小山:しかし、自社だけでは、各々がポジショントークをしがちだったり、上から下への一方的なコミュニケーションになったりする懸念があります。そこで、私たちのような第三者が客観的にそれぞれの会社の状況を見て、個人や組織の意識変容や行動変容につながるコミュニケーションの在り方を提案していきたいと考えています。
電通B2Bイニシアティブでは、国内電通各社のB2Bマーケティングに関わる多様な専門家による横断型チームとして、マーケティングDXによる成果を出す観点で組織づくりや実行支援(パイプライン設計、インサイドセールス、カスタマーセールス)、B2Bマーケティングにおける研修・トレーニングなどの知見やソリューションを多様にそろえています。DXやBX時代における、BtoB企業での社内・組織変革、新たな業務プロセスの定着を引き続き支援していきたいですね。
電通B2Bイニシアティブが提供する「B2B統合ソリューション」は、こちら