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SDGs達成のヒントを探るNo.19

女性の健康問題を周囲に理解してもらうには?~伊藤千晃さんと考えるフェムテック

2023/01/13

SDGsの達成やサステナブル社会の実現のためのヒントを探る、本連載。今回は、アーティスト、モデル、タレントなど、マルチに活躍する伊藤千晃氏にインタビューしました。

現在、日本でも少しずつ広がりを見せているフェムテック。しかし、健康問題を抱える女性はいまだ多く、男性や組織の中で理解を得るのもまだまだ難しいのが現状です。女性の健康問題に対して、女性自身はもちろん、男性はどう向き合えばいいのでしょうか。自身の経験も交えながら、お話しいただきました。

伊藤千晃
伊藤千晃氏:2017年、男女混合のパフォーマンスグループ「AAA」を卒業。2018年よりソロ活動を開始し、現在はアーティスト、モデル、タレントとして多方面で活躍している。また、2022年3月に「フェムテック協会認定資格2級(認定フェムテックエキスパート)」を取得、同年6月からはVOCEウェブにて、連載「伊藤千晃のフェムテック通信」をスタートするなど、フェムテック分野での情報発信も積極的に行っている。

「フェムテック」は、すでに多くの女性が触れている意外と身近なもの

──最近よく耳にする「フェムテック」ですが、女性の中にはまだとっつきにくい印象を持っている人も多いと思います。伊藤さんはフェムテックをどう捉えていますか?

伊藤:そもそもフェムテックとは、女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのことを指します。「テクノロジー」と聞くと、なんとなく敬遠してしまうかもしれませんが、実はすでに多くの女性が取り入れているものも多くあります。例えば、月経の周期などを管理できるアプリもその一つ。さらに広い意味で捉えると、月経用ナプキンもフェムテックに含まれると思います。そう考えるとフェムテックは、言葉自体は新しいものの、実は多くの女性がすでに触れている、意外と身近なものではないでしょうか。

私自身は1年ほど前に「フェムテックって何だろう?」と疑問を持ったことをきっかけにいろいろ調べるようになりました。今も、展示会や勉強会に参加して学んだり、自分の悩みを解消するアイテムを取り入れたりしているのですが、自分の体や心がどんどん楽になっていくのを実感しています。フェムテックは、自分がアクションを起こした分だけ、その結果が自分に返ってくるので、学びがいがあって取り組みやすいんですよね。そのためまずは難しく考えず、感度よく、前向きに調べてみてほしいなと思います。

──伊藤さん自身はどのような悩みがあったのでしょうか?

伊藤:私自身、18歳のときにこの業界に入ってアーティストとして活動してきましたが、特に月経のときには苦労することも多くありました。例えば、衣装に血が付かないようパンツを重ねてはくことで、蒸れてかゆくなってしまったり、顔のむくみやおなかの張りが気になって、撮影がある日は気分が落ち込んでしまったり……。また、男女混合グループにいたときには、男性メンバーに、トイレに行く回数が多いと思われたくない、ポーチを持ってトイレに行くのを見られたくない、といった悩みもありましたね。当時は女性の体の問題を、わざわざ男性に伝える必要もないし、知られる必要もないと思い込んでいて、隠すことばかり考えていた気がします。

伊藤千晃
伊藤:しかし最近は、世の中の意識も少しずつ変わってきたと感じます。私自身もフェムテックを学ぶようになってからは特に、「実は今日、体調があまり良くないんだよね」と言いやすくなったり、一緒に仕事をする人が月経中にどういう体調になるのかを理解しようとしたりするようになりました。また、自分の体調は仕事のパフォーマンスに影響するし、それは自分だけではなく、男性や所属する組織やチーム全体に影響することもある。そう考えるようになって、体の問題は自分だけの問題ではないと思えるようになりました。今は、自分がラクにいられる環境をつくるためにも、自分の体調について周囲に伝えることは大切だと考えています。

女性の健康問題を理解してもらうためのきっかけづくりにも取り組みたい

──伊藤さんは現在、フェムテック関連のイベントや展示会にも積極的に参加されているそうですが、印象に残っているものはありますか? 

伊藤:私もトークゲストとして登壇させてもらった「Femtech Fes! 2022(フェムテック・フェス)」は、一参加者としても印象に残っています。フェムテックを中心としたウェルネス事業を展開する「fermata(フェルマータ)」が毎年秋に開催しているイベントで、今年は「あなたのタブーをワクワクに変える"フェムテック交差点”」をテーマに、さまざまなプロダクトの展示やワークショップ、トークイベントなどが行われました。私が参加してみていいなと感じたのが、展示ブースが「月経」「妊活・不妊」「女性特有疾患」などのエリアに分けられていたこと。フェムテックはジャンルの幅が広すぎて、展示会のどこから見たら良いのかわからないということもあるのですが、ジャンル分けされていたことで、自分の課題に近いところから入っていきやすいなと感じました。また、展示されているプロダクトがつくられた背景や使い方も一つ一つ細かく説明があって、とても勉強になりました。

──トークイベントに登壇された経緯やお話しされた内容についても教えてください。

伊藤:きっかけは、VOCEウェブで連載している「伊藤千晃のフェムテック通信」で、fermataのCCO・中村寛子さんと対談したことでした。中村さんからイベントの話を聞いて、興味があると伝えると、ぜひトークゲストとして参加しませんか?と言ってくださったんです。当日は、fermataさんから提案いただいた「エンターテイナーと生理」をテーマに、ステージに立つエンターテイナーならではの悩みや、月経やPMSのときにどう対処していたかなどをお話しさせていただきました。

トークイベントは、ありがたいことに多くの反響をいただいたのですが、中でも男性から、「迷ったけど参加したよかったです」とか、「女性の体は知らないことが多いですが、話を聞いて自分も気を付けられることがあるのではないかと思いました」とメッセージをいただけたことが印象に残っています。男性の中にも、女性の体のことを知ろうとしてくれている方たちがいると実感できて、とてもうれしかったです。とはいえ、来てくださった男性は全体の1割ほど。男性を巻き込んでいくことも、今後の課題の一つだと感じました。

──女性の体の悩みや健康問題を男性に理解してもらうにはどうすればいいでしょうか。

伊藤:それは本当に難しいですよね。一度伝えたからといって「はい、わかりました」という話でもないので、やはり根気強く伝えるしかないのかなと思います。以前ファンの方からも「生理痛がつらいことを夫や子どもに話したのに、ぜんぜん理解してもらえない」と相談されたことがありました。そのときは、「自分に無理のない程度に、何度も話し合ってみるのがいいんじゃない?」とお返ししたのですが、そもそも話すことすらつらい方もいると思いますし、伝え方も難しいですよね。

例えば「Femtech Fes! 」のようなイベントは、家族やパートナーに話すときのいいきっかけになるかもしれません。「生理痛がつらいんだけど」といきなり話し始めると相手も構えてしまいますが、「今日こんなイベントに行ってきたよ」と切り出せば、自然な流れで話せそうですよね。今後は、悩んでいる方々に「こう話してみるといいんじゃない?」と提案したり、伝えるためのきっかけをつくったりしていきたいと考えています。

伊藤千晃

伊藤:また、私がフェムテック関連の情報を調べているときに見つけて印象に残っているのが、東海テレビが制作した「生理を、ひめごとにしない。」というドキュメンタリーCM。5分ほどの映像の中で、数人の男性が自分のパートナーのために生理用ナプキンを買いに行くシーンがありました。男性たちはナプキンの種類の多さに驚いたり戸惑ったりしながらも、最後には「体験してみて良かった」「自分もできることを協力したい」と話していて、すごくあたたかいなと感じたんですよね。女性の体の悩みは一人一人違って、同じ女性同士でもなかなか分かり合えるものではありませんが、まずは相手を理解しようとする姿勢が大切だと実感しました。

女性の“もう一歩先の気持ち”を考えてほしい

──一生活者として、伊藤さんが企業や社会に「もっとこうしてほしい」と思うことはありますか?

伊藤:具体的に言うと、会社に生理用品が当たり前に置いてあるとありがたいなと思います。月経が急にきて慌てて買いに行くのはしんどいですし、時間の効率も悪い。私も仕事中に買いに行く時間がなかなか取れず、困ることもあるので、すぐに手に入る環境があるといいなと思います。そのほか、吸水ショーツなども今はインターネットで買うことが主流ですが、自動販売機やコンビニで気軽に買えるようになるといいですよね。多くの人に興味を持ってもらい、使ってもらうためにも、手に入りやすい環境をつくっていくことが必要かなと感じています。

また、アメリカなど海外の会社では、仕事場に新生児を連れてくるお母さんがいたり、オフィスにミルク置き場や母乳をしまっておける専用の冷蔵庫があったりすると聞いたことがあって、素敵だなと思いました。今の日本ではなかなか見られない光景ですよね。女性の健康問題や働きやすさへの意識が高い海外には、参考になる事例がいろいろありそうだと感じています。

──最後に、男女混合グループにいらっしゃった伊藤さんが「組織の男性」に求めることを教えてください。

伊藤:そもそも女性と男性とでは体が違って、そこを理解してもらうための言葉や伝え方はすごく難しいなと感じています。私も経験があるのですが、例えば月経前とかに「今日なんかむくんでない?」とか言われると、「そんなこと言われても解決しようがないし、むくんでいるように見えるってことは、ステージに立ってもそう見られるってことだよね?」と、すごくイラっとしたり落ち込んだりするんですよね。男性は悪気なく、時には良かれと思って声をかけてくれているのだと思うのですが、女性には、その一言をどうしてもいい方向に捉えられないときがあります。だから男性には、言葉をかけられた女性の“もう一歩先の気持ち”を考えて言葉を選んでほしい。もちろん、それがとても難しいことはわかっているのですが……(笑)。でも、特に生理前の女性はホルモンのバランスが乱れてちょっとした言葉に落ち込むこともあるんだなということを知っておくだけでも、かける言葉は変わってくるはず。そして女性の健康問題は一人一人異なるので、これは男性だけでなく、女性にも同じことが言えると思います。私自身も、まずは家族やファンの方々など、身近な人たちを巻き込みながら、女性の体の悩みや健康問題について、一緒に考えていきたいと思っています。

TeamSDGs

TeamSDGsは、SDGsに関わるさまざまなステークホルダーと連携し、SDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発などを行っています。

TeamSDGsのウェブサイトでは、若者たちが自分の体や健康問題と向き合うためのヒントなど、電通報とは違った切り口で伊藤氏のインタビューを掲載しています(記事は、こちら)。ぜひ併せてご一読ください。

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