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【続】ろーかる・ぐるぐるNo.176

イノベーションに必要な「3つの力」

2023/03/20

続ろーかる・ぐるぐる#176_ロゴ

電通のクリエイターがクライアント企業に“棲み込み”、イノベーションに向けて組織を創造的に動かしていく新サービス「Indwelling Creators」。今回はこの取り組みが解決しようとする「イノベーションが起こらない組織に共通する問題点」についてお話ししましょう。

【「Indwelling Creators」に関するお問い合わせはこちら】
opeq78@dentsu.co.jp 担当:山田

 

そこに共通するのは、必ずしも変革に向けた「意欲の欠如」ではありません。むしろ少人数で話をすると、的確な危機意識を持たれていることが多いです。しかし同時に、しばしばある種の「あきらめ」も見受けられます。

もう少し具体的に言うと、トップマネジメントは「うちのメンバーは元気がないから」という苦悩。現場は「うちのマネジメントは、話が通じないから」という不満。そしてミドルマネジメントは「嗚呼、今日も板挟みですよ」という心労、といったところでしょうか。

もちろん彼らは手をこまねいている訳ではなく、みんなで「なぜ当社は社会に存在しているのか?」といったパーパスを策定してみたり、組織の階層を飛び越して話し合う場を持ってみたりするのですが、どうにも状況はなかなか改善しないのです。

続ろーかる・ぐるぐる#176_図版01

ここが大切なポイントなのですが、組織を動かすために必要なのは「創造的対話」だということです。トップのビジョンと現場の現実、あるいは自社の事情と生活者のニーズといったものは、そもそも簡単に一致するものではありません。そこに何か「正解」があるという前提でお互いの正論をぶつけ合って合意形成(妥協)を目指すのではなく、(前々回コラムでもお伝えしたように)、“簡単には一致しない”という立場から、その「ゆらぎ」を克服する新しい道を見つけるための相互作用(対話)こそが求められます。

そしてこの「創造的対話」を行うためには、「トップの問う力」「現場のつくる力」「ミドルの選ぶ力」、その3つが必要です。

トップマネジメントの大きな役割は、組織に対して動機を与えることにあります。そのためには「意欲的な数値目標」と「ビジョン」を示さなければなりません。ここでいう「ビジョン」とは、単に「ありたき姿」という以上に、「『何を真・善・美とするか』という、組織の基本的な価値観」であり「現実的な理想主義」です。
「残念ながらいま現実はそうなっていないけれど、こんな理想を実現したくないですか?」という「問い掛け」が、組織が動き出す糸口になるのです。

そこにはマネジメント個人の価値観や教養が直接、反映されます。正解なんてないので、覚悟も必要です。だからこそ、経験豊かなクリエイターが寄り添い、組織を動かす「問う力」についてサポートします。

一方、現場に求められるのは、トップの一見無理難題に見える理想に負けない「その手があったか!」を「つくる力」です。残念ながら、多くの企業・組織はロジカルに正解を出す力をトレーニングできても、創造的解決の鍛錬については不得手なようです。Indwelling Creatorsは、電通が長年蓄積したクリエーティブ能力開発のノウハウを、広くビジネスの現場で応用できるものにして提供します。

そして、経験からいっていちばん難しく、また大切なのが、ミドルマネジメントの「選ぶ力」です。現場が考えたアイデアから何かを選ばなければならないとき、しばしば目にするのは、極端に客観的な「正しさ」指標を求める評論家になるか、根拠が薄いまま可能性に賭けるギャンブラーになるか、あるいはその間で悩むか、の姿です。そして、そんなことが頻発する最大の原因は、(このコラムでも過去に何度もお話しした)「コンセプトに関する理解不足」にあります。

コンセプトは決して、企画書を飾る美辞麗句ではなく、まだそこにない未来を照らし出すひとことです。Indwelling Creatorsは全員、数々のアイデアを取捨選択し、コンセプトに従ってアウトプットをつくってきた経験が豊かです。それをビジネスの世界に適用し、評論家でもギャンブラーでもないミドルマネジメントの育成を行います。

続ろーかる・ぐるぐる#176_図版02

Indwelling Creatorsの「Indwelling」とは“棲み込む”という意味です。文字通り契約時間、組織の中に棲み込んで「同じ船に乗る仲間」として戦います。そこには従来の「クリエイター=考える人、クライアント=判断する人」という区別はありません。トップから現場まで、組織が全員参加で問い、つくり、選ぶプロセスを共にします。

「…抽象的な議論は分かったからさ、もうちょっと具体的に教えてよ」という感じでしょうか?次回は、実際にIndwelling Creatorsが組織を活性化した事例をもとにお話を進めたいと思います。

続ろーかる・ぐるぐる#176_写真01

さて、拙宅に食事のお招きをする際、お客様の顔を想像しながらメニューを決めるのは、とても楽しいひと時です。この日は、名古屋出身の先輩が沖縄移住する前の歓送会。そこで沖縄で「ソーキ」に使われることもある豚バラの軟骨肉を名古屋の八丁味噌でどて煮にし、メニュー全体が洋式だったので、グラタンに仕立てることに。

じっくり煮込んで万全のつもりだったのですが、いざ食べてみると、名古屋式を名乗るには圧倒的に甘さが足りません。う~む。メニューを問う力、選ぶ力はまずまずだとしても、肝心のつくる力がまだまだだったなぁ……。

どうぞ、召し上がれ!

続ろーかる・ぐるぐる#176_写真02

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