【グローバル】加速するサステナビリティ&サーキュラーエコノミーNo.20
「関心のある社会課題」から見る、6カ国の最新サステナブル事情
―サステナブル・ライフスタイル意識調査2023より―
2023/11/13
電通と電通総研は、2021年に続き第3回となる「サステナブル・ライフスタイル意識調査2023」を共同で実施しました(調査概要はこちら)。
調査エリアは東アジアから日本・中国、西欧からフランス・ドイツ、東南アジアからインドネシア・タイの合計6カ国です。今回は、「関心のある社会課題」から6カ国の状況を把握し、サステナビリティへの人々の関心と実態をひもといていきます。
<目次>
▼関心の高さの背景に見える「実感」と「理念」
▼ごみを減らすことがサステナブルな社会への第一歩?
▼サステナビリティを意識する生活者は企業の動きにも敏感
関心の高さの背景に見える「実感」と「理念」
関心が高い社会課題は国によって違いがあります。日本では1位が「自然災害」、3位が「少子化・高齢化」と、報道で接する機会が多い慢性的な社会課題が上位にランクインしました。また、「電力・エネルギー問題」が2位となり、こちらは2023年は猛暑が続き、「光熱費の値上がりを実感した」(同調査で日本:89%)ことも影響していると考えられます。
中国・インドネシア・タイでは「大気汚染」が1位となりました。「大気汚染」は第1回の調査(2010年)から継続してアジア諸国で上位です。特に中国に関しては、2023年4月に大規模な黄砂が観測されるなど、深刻な状況です。
次に西欧のフランス・ドイツを見てみましょう。「食品廃棄」がフランスで1位、ドイツで2位と上位にランクインしています。
フランスでは、2016年に世界に先駆けて食品廃棄の禁止に関する法律(通称ガロ法)が施行され、また2023年には食品ロスの認証ラベル制度も導入されました。これは、スーパーマーケットなど小売業者を対象に食品ロス削減に向けた取り組みを3段階で評価し、消費者にも見える形でラベリングする制度です。国家レベルで食品廃棄分野に力を入れていることが国民の関心の高さにも反映されています。
また、フランス・ドイツをはじめヨーロッパ諸国では、デンマーク発祥のフードロスを防ぐアプリも若者を中心に浸透しています。売れ残りを抱えるレストランやスーパーマーケットと消費者をつなぎ、食料品や食事を割引価格で提供するサービスです。フードロス削減に向けた行動が、日々の生活に根付いている様子がうかがえます。
東アジアや東南アジアでは上位にない「動物福祉」がフランスで5位、ドイツで4位に入っているのも特徴的です。「動物福祉」に関しては、2021年にフランスとドイツでオスのひよこの殺処分禁止が発表されています。オスのひよこは卵を産まないことから、採卵養鶏では殺処分されることが一般的とされていた状況を、動物福祉の観点から見直す取り組みです。また、フランスでは2021年に犬・猫のペットショップでの販売が禁止され日本でも話題となりました。EUでも、家畜に対してケージの使用を段階的に廃止することが検討されるなど、ヨーロッパを中心に動物との共存に対する意識が変わってきています。
このように、関心のある社会課題は国によってさまざまです。「自然災害」や「大気汚染」など直接的に生活を脅かす課題に関心が高い国もあれば、長期的・俯瞰的な目線で人間の営みの在り方を見直すような課題に関心が高い国もあります。社会課題への関心は、日常生活での実感はもちろん、それぞれの国の報道や企業のコミュニケーションの在り方も大きく影響していると考えられます。
ごみを減らすことがサステナブルな社会への第一歩?
サステナビリティに対するイメージを聞いたところ、日本・ドイツでは「一般市民がごみを減らすこと」が1位、中国・フランスでは「企業が廃棄物を減らすこと」が1位となりました。インドネシア・タイでも「一般市民がごみを減らすこと」が上位に入っており、主体は異なっても、ごみを減らすことがサステナブルな社会につながると考える人が多い様子です。
日本では2020年7月にレジ袋の有料化がスタートし3年がたちました。エコバッグの持参も「よくする」と答える人が78%と6カ国で最も高く反応しています。フランスでは2023年1月から、ファストフード店での使い捨て容器の使用が禁止され、再利用できる食器やカトラリーの使用が義務付けられました。また、ドイツでは数年前に、海洋プラスチックごみをリサイクルしたユニフォームをプロサッカーチームがリーグ戦で着用し話題となりました。同国に本社を置くスポーツメーカーは、海洋プラスチックごみをスニーカーとして生まれ変わらせる取り組みを継続的に行っています。
このように、ごみを減らすという目的は同じでも、新たなごみが出ない消費・生活システムを構築することもあれば、出てしまったごみの再利用の道を模索することもあり、サステナブルな社会の実現には両輪のアプローチが必要であると考えられます。
サステナビリティを意識する生活者は企業の動きにも敏感
最後に、「過去3年でサステナビリティについて考える頻度が変わったか」、という問いと、「企業や商品ブランドの持続可能な取り組みに関するコミュニケーションは購入時に影響するか」、という2つの問いの結果を並べてみましょう。
この3年間で「サステナビリティについて考える頻度が増えた」と答えた人は、日本がおよそ4割、フランス・ドイツが7割、中国・インドネシア・タイが8割となりました。6カ国平均ではおよそ7割が「増えた」と答える一方で、日本のみおよそ6割が「変わらない」と答えています。また、「持続可能な取り組みに関するコミュニケーションが購買に影響する」度合として「とても影響する+まあまあ影響する」と答えた人は、日本がおよそ5割、フランス・ドイツがおよそ7割、中国・インドネシア・タイが8割以上です。
サステナビリティへの関心が高いから、サステナビリティ情報を購買決定に反映するのか、それとも、サステナビリティに関するブランドコミュニケーションが日々の購買に影響した結果、人々のサステナビリティについて考える頻度が増えるのかはわかりません。
いずれにしても、サステナブルな社会の実現に向けて企業の取り組みと同時に消費者の意識を底上げしていくことで、サステナビリティに関する取り組みがブランドとして選ばれる理由となり、企業の取り組みもさらに活性化されるのではないでしょうか。
国内外問わず暗いニュースが届く中で、明るい未来を信じることが難しい状況が続いています。サステナブルな社会の実現がグローバルの共通目標だとしても、道のりに正解は用意されておらず、それぞれの国で生活する人々が置かれる状況によって考え方もアプローチも異なります。明るい未来につながる糸口を模索する思いを諦めないことが、サステナブル意識の浸透に向けて、これまで以上に必要とされているのかもしれません。