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Z世代の「関心のある社会課題」とメンタルヘルス
―サステナブル・ライフスタイル意識調査2023より―

2023/11/30

電通と電通総研は、2021年に続き第3回となる「サステナブル・ライフスタイル意識調査2023」を共同で実施しました(調査概要はこちら)。調査エリアは東アジアから日本・中国、西欧からフランス・ドイツ、東南アジアからインドネシア・タイの合計6カ国です。今回は、「Z世代が関心を寄せる社会課題」をメインにトピックスをいくつかご紹介します。

<目次>
Z世代の関心は、人道的な社会課題に

Z世代は自分のメンタルヘルスを重視

サステナビリティを発信するエシカルインフルエンサー

Z世代の関心は、人道的な社会課題に

関心のある社会問題について聞くと、Z世代(18~26歳)は全体に比べて、人道的な課題への関心が高いことが分かりました。ここでは、特にZ世代の特徴が出ている日本・中国・ドイツの3カ国のスコアを紹介します。

関心のある社会課題

日本のZ世代が最も関心のある社会課題は「人種差別」でした。2021年度の調査でもZ世代の1位は「人種差別」で、引き続き関心を集めています。また、2位には「男女格差」が入っており、2023年のジェンダー・ギャップ指数ランキングで日本が世界125位と過去最低を記録したことが影響しているのかもしれません。

中国のZ世代の1位には「教育の課題」と「失業率」が同率でランクインしています。近年中国では受験戦争の激化を緩和するために、宿題を減らし塾を全面的に規制したことから、学生を多く含むZ世代の「教育の課題」への関心が高まっています。「失業率」については、中国が発表した2023年6月の16〜24歳の若者失業率が21.3%と過去最高を更新したことが背景にあると考えられます。なお、6月以降は失業率の公表を中止しているようです。

ドイツではZ世代の1位に「動物福祉(アニマルウェルフェア)」がランクインしています。ドイツは「動物保護先進国」といわれており、動物への虐待や殺処分等に関する規定が記された動物保護法が存在することからも、動物福祉への意識が高いと考えられます。

2位の「人種差別」については、移民数が世界2位(2020年、国連)であることが影響している可能性があります。ドイツに限らず、欧米では移民の受け入れによって若年人口が担保されている国が多く、アメリカでは移民またはその子どもがZ世代の3割を占めるといわれています。ドイツでも2016年に少子化に歯止めがかかった大きな要因になりました。

このように各国それぞれ、自国の状況に影響を受けながらも、Z世代では「人種差別」「教育の課題」「動物福祉」など人道的な社会課題に関心を寄せる割合が高いことが分かりました。

Z世代は自分のメンタルヘルスを重視

次に、「自分のメンタルヘルスについて、どの程度気候変動の影響を受けていると思うか?」という問いに対して「強く影響を受けている」「やや影響を受けている」と回答したZ世代の特徴を見てみます。

Z世代メンタルヘルス

各国世代別でデータを見ると、日本・フランス・ドイツではZ世代>Y世代>X世代>それ以上の世代という分布になっていました。年齢層が若いほど自分のメンタルヘルスへの影響を感じているなど、ベクトルを自分に向ける傾向が浸透していることがうかがえます。この傾向は他のアジアでは見られませんでした。

Z世代の特徴的な価値観の一つは、「自分らしさを重視し、自分を大事にする」ことだといわれていますが、「気候変動」によるメンタルヘルスへの影響を強く感じていることからも、自分へのケア意識の高さが感じ取れます。

彼らは幼少期からテクノロジーと密接に育った「デジタルネイティブ」であり、テクノロジーを駆使して他人と容易につながることができる一方で、情報過多により疲弊してしまっている現状があります。またZ世代の先頭は現在20代半ばですが、人とのつながりから刺激を受けたいライフステージで新型コロナウイルス感染症の世界的流行に見舞われました。人との関係性が一時断絶してしまったせいで、空白期間を埋められないまま社会人になるなど、新しい環境で孤立感を抱いていることが世界中で注目されました。

またZ世代はDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を重視することが当たり前という教育を受けて育った世代です。しかし実際の社会では人々が平等に扱われていない状況を目の当たりにすることもあります。当然守られるはずの個人の尊厳が守られない世の中の仕組みにストレスを感じたり、孤独感を抱いたりする人が多いようです。コロナ禍が落ち着いた今も、リモートワークを継続している組織も多いため、孤独感を解消する方法を模索するなど、若者のメンタルヘルスに注意する必要がありそうです。

サステナビリティを発信するエシカルインフルエンサー

最後に「あなたの国で、実際に、サステナビリティを人びとに積極的に伝え、行動を促していると思う団体・人をすべてお選びください」という質問に対するZ世代の回答について見ていきます。ここでも特徴が際立つ3つの国、フランス・ドイツ・インドネシアを抜粋して紹介します。

エシカルインフルエンサー

全年齢層の結果と比較して、Z世代はYouTuber/TikTokerなどのSNSインフルエンサーが貢献していると評価していることが分かります。

Z世代を見ると「YouTuber/TikTokerなどのインフルエンサー」は、フランスでは3位にランクインし、全年齢層の数値と比較すると+13.3%となっています。ドイツでは、2位にランクインしており、全年齢層の数値と比較して+20.6%。インドネシアでは、1位にランクインしており、全年齢層と比較して+12.8%となっています。

近年「エシカルインフルエンサー」と呼ばれる社会的な発信に取り組む人々が増加しています。彼らは、通常のSNSインフルエンサーのような「映え」を目的とした投稿だけでなく、サステナブルなファッションブランドの商品やインテリア、植物由来の食べ物も紹介しており、注目を集めています。Z世代にとって身近なインフルエンサーがこのようなサステナビリティ関連の発信を行うことで、サステナビリティに関心を持つ若年層のすそ野を広げているようです。

また、Z世代では、フランスでは1位に「NPO」が、ドイツでは1位に「報道機関・ジャーナリスト」がランクインしており、環境活動を率先して啓発していると回答しています。どちらの国でもさまざまな団体が環境に関する活動を活発に行っていて、例えば2023年9月にフランス・パリの大統領府前で、フランス政府の気候変動対策が十分ではないことに対して環境保護団体が道路をオレンジ色に染める抗議活動を行いました。

ドイツには、若年層を多く含み、2022年10月にはポツダムの美術館に展示されていたクロード・モネの「積みわら」に、マッシュポテトを投げつけた「最後の世代」という環境活動団体があります。こういった過激な活動も含めニュースになっていることが影響しているかもしれません。

また、環境活動家に対する印象を聞いた調査では、フランス・ドイツでは活動家に対して怖いと感じている人も多いことが分かりました。

一方で、インドネシアは、同じエシカルインフルエンサーでも、怖い人ではなく、心の優しい人と捉えられているようです。

活動家から受ける印象

活動家から受ける印象や情報発信の真剣さなど、各国でスタンスに違いがあります。インフルエンサーなどの活動家を起用して環境・社会系のキャンペーンを企画する際は、活動家が市民にどのような印象を与えているのかにも留意する必要がありそうです。
 

【調査概要】
対象エリア:6カ国(日本、中国、フランス、ドイツ、インドネシア、タイ)
対象者条件:18~69歳(性別回答選択肢「男性」「女性」「その他・答えたくない」)
サンプル数:6000人(各国1000人ずつ)
調査手法:インターネット調査
調査期間:2023年7月12日~8月21日
 
      

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