月刊CXNo.21
Doleブランドをあらゆる角度から味わい尽くす「多面的CXクリエイティブ」
2023/12/05
日々進化し続けるCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)。
今やあらゆるシーンで求められるCX領域に対し、電通のクリエイティブはどのように貢献できるのか?
その可能性を解き明かすべく、電通のCX専門部署「CXCC」(カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター)メンバーがCXとクリエイティブについて情報発信する連載が「月刊CX」です(月刊CXに関してはコチラ)。
今回紹介するのは、バナナやパイナップルなど世界でも指折りのフルーツ販売量を誇る食品企業Dole(ドール)のブランド強化施策です。
プレゼンス拡大のアプローチはどのように行われたのか、新規顧客獲得のために行った打ち手とは何なのか。担当者の藤田卓也氏に話を聞きました。
Doleというブランドの魅力を伝える包括的なアプローチ
月刊CX:今回はDoleのブランド強化施策についてお話を伺います。まずはDoleがどのような企業なのか教えてください。
藤田:Doleは150年以上続く歴史ある企業で、バナナやパイナップルをはじめとした高品質なフルーツとフルーツ加工食品を販売しています。
商品のおいしさを追求するだけでなく、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、環境問題解消にまつわる6つの約束「The Dole Promise」を策定するなど、エシカル面に注力しているのも特徴です。環境以外にも、美容や健康といった切り口で活動を行うなど、フルーツを通じて多様なコンタクトポイントを開発しています。
月刊CX:具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?
藤田:品質にこだわった「極撰バナナ」という高付加価値の商品を販売したり、バナナの栄養価に注目して美容や健康面から消費者に訴求したり、おいしさ以外にフルーツが持つ多様な価値に焦点を当てるコミュニケーションをたくさん行っています。
月刊CX:さまざまな切り口で施策を用意されているのですね。
藤田:一方、施策自体はどれも素晴らしいのですが、Doleの活動とブランドとのつながりが少し薄いように感じられてしまう課題がありました。そこで、Doleとはどのようなブランドなのかを改めて再定義するために行ったのが、今回の施策です。
これまでの各施策も、これから実施していく施策も、Doleの活動として集約し、見せられる新たなフレームを作ろうと考えました。フレームを作ることで、ブランドの存在感を強調することができますし、これから広げていく新しい領域へのアプローチにもつながるからです。
月刊CX:なるほど。施策の内容についてもお話しいただけますか?
藤田:最初に行ったのは「フルーツでスマイルを。」というブランドメッセージの制作です。フルーツはおいしいだけではなく、人々の暮らしのさまざまなシーンに寄り添うもので、その結果いたるところでみんなのスマイルが生まれていく、という意味を込めています。
「フルーツでスマイルを。」に込めた思いを表現するブランドムービーも制作していて、その際は廃棄予定の規格外バナナを活用しました。実際のフルーツをキャンバスに映像を展開することで、さまざまな可能性がフルーツに秘められていることを表現するとともに、Doleが大切にしているエシカルなアクションをコミュニケーション活動においても取り入れていく意図があります。出来上がった映像はもちろん、映像ができるまでの過程もPRコンテンツとして活用しています。
月刊CX:見ていて楽しくなりますし、ブランドのメッセージも伝わってきますね。
藤田:ありがとうございます。そのほかに、ブランドメッセージをワンビジュアルで表すグラフィックも制作しました。
このグラフィックを店頭に掲出してブランドメッセージの認知を促し、ブランドの意思をこのステートメントに集約することで、より骨太な活動として伝わるのではないかと考えたのです。
月刊CX:「フルーツでスマイルを。」が、ブランディングとプロモーションのハブになっているのですね。
藤田:おっしゃる通りです。2023年夏には、子どもたちにフルーツの魅力を伝える体験型イベント「Doleフルーツスマイルパーク/Doleフルーツスマイルスタンド」も実施しました。イベントではバナナの量り売りを体験するアクティビティや、パイナップルの葉を活用した素材で作られた服の試着体験、廃棄されるフルーツを活用したエシカルなメニューを食べられるフードスタンドなど、フルーツに親しむさまざまな仕掛けも用意しました。
イベントを通して、フルーツとお客さまの接点を再構築する
月刊CX:イベントの来場者の反応はいかがでしたか?
藤田:お子さんをはじめ、老若男女問わず楽しんでいただいているようでした。イベント内のアクティビティなどを体験して笑顔になっている来場者を見て、他の方も試してみるという流れが起こっていたのも印象的でしたね。フルーツの魅力に触れて笑顔になっている来場者の方々を見て、私個人としてもうれしかったですし、「フルーツでスマイルを。」が体現できたと感じました。
月刊CX:クライアントの反応はいかがでしたか?
藤田:非常に喜んでいただけました。SDGsの取り組みの発信拠点であるITOCHU SDGs STUDIOで実施したのですが、そこで行われたイベントの中で一番来場者数が多かったそうで、スタンドに関しては実施期間も延長していただきました。僕たちが出したアイデアに対してDole社内からも「こういうこともできませんか」と積極的に意見してくださって、さまざまな化学反応が生まれたのもとても良かったです。
また、今回の施策は、新しいブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」のもとに、これまでの、そして、これからのアクションを共通フレームにまとめていくものです。Doleのアクションが増えれば増えるほど、メッセージの強さや厚みが増していくという長期的なブランディングのための設計にしています。つまり、すぐに効果が出るものではなく、継続してこそ真価を発揮するものです。そこをくみ取っていただきつつ、共にプロジェクトを進めることができてうれしかったです。
魅力や価値をぶれさせず丁寧に伝える多面的なCX
月刊CX:今回のプロジェクトを通して、藤田さんの実感としてはいかがでしたか?
藤田:Doleらしさをぶれさせず丁寧に体現して伝えられたのは非常に良かったと思います。さまざまな切り口で、フルーツの魅力を複数のコンタクトポイントで多面的に伝える活動を行っているのがDoleの強みです。多くのブランディング施策では、既にあるものを手放して選択と集中を行いがちですが、今回はすべてをうまくつなぐ仕組みを作れました。これまで培ってきたDoleらしさをすべて抱きしめる、といいますか。
月刊CX:「Doleらしさを抱きしめる」、非常にいい言葉ですね。今回の施策でCXクリエイティブ的なポイントを挙げるとしたら何でしょうか?
藤田:Doleの魅力や価値に共通するものを持たせつつ、多面的なアプローチを行う、いわば「多面的なCXアプローチ」ですね。バナナのおいしさや効能からDoleブランドに入ってきた顧客が、施策を通じて環境問題などDoleの別の活動を知る機会につながることは、比較的、新しいCX手法のように思います。選択と集中ではなく、さまざまな経路を用意しておく、というように入射角を変えて、手触りの違うアプローチを生むことができるように心がけました。
もっとわかりやすく言うと、クライアントがこれまで積み重ねてきた価値を磨き上げて有効活用し、強度をさらにアップさせる。その上で、クリエイティブにおいても倫理的に大切なものを取りこぼさない表現にすることは重要なポイントだったと思います
月刊CX:ありがとうございます。最後に、藤田さんの今後の展望をお願いします。
藤田:今回は全体のフレームを作ったので、これからは、もっと個々のテーマごとの体験を深掘りして内容をどんどん充実させていきたいです。まだ開拓していないルートもありますし、今後もフルーツに関する可能性をDoleと一緒に考えるとともに、ブランドの新たな価値を創造し、世の中に提供していくお手伝いができれば、と考えています。
(編集後記)
今回は、Doleのブランド強化施策について紹介しました。
選択と集中ではなく、ひとつの価値を多面的に伝えることで顧客の新たなニーズや体験を生み出すことができる。それを実現するためには、ブランドが積み上げてきた価値を正しく理解することが鍵となるのでしょう。Doleの事例から、これからのブランド施策アプローチのヒントを得られました。
今回のインタビューは、「CX Creative Studio note」(CX Creative Studio noteに関してはコチラ)とも協力しながら行っています。電通CXCCチームだけでなく電通デジタルのCXクリエイティブチームとも連携した、より幅広い事例の収集や紹介等も行っていますので、ご興味がおありでしたらそちらも併せてご覧ください。
また、今後こういう事例やテーマを取り上げてほしいなどのご要望がありましたら、下記お問い合わせページから月刊CX編集部にメッセージをお送りください。ご愛読いつもありがとうございます。