【続】ろーかる・ぐるぐるNo.193
学生が挑んだ「その手があったか!」
2024/11/13
先日、「LPガスを活用したビジネスプランやアイデア」を審査するコンテスト「&LPG Business Awards 2024」の決勝戦が有楽町の東京国際フォーラムで開催されました。明治学院大学でぼくの講義を履修してくれた学生も二人エントリーして、両名とも厳しい審査をかいくぐり、無事予選通過。審査委員長を務められた橘川武郎国際大学学長をはじめとするそうそうたるメンバーの前で緊張のプレゼンを披露してくれました。(以前、お話しした明治学院大学の講義内でやったLPガス会社「富士瓦斯」への新規事業提案の延長線です)。
そのうちの一人、堀内このみさんはご自身がアーティストの「Perfumeオタク」だという告白からスタートしました。「オタクだからこそ、オタク同士しか理解できないようなマニアックな話をしたい。SNSだけでなく、じかに会って盛り上がりたい。でも、そういった集まりの会場はたいてい居酒屋とかカラオケボックスで、アルコールが出てくる。実はこれが大問題で、お酒のせいで深い話ができない」というのです。
そこで、この悩みを解決するためにLPガスを活用して10分100円の「コイン焚火」を開発し、オタクを中心とした、たくさん語りたい人々のための施設運営を提案しました。
ポイントは「ロマンチック禁止」だそうで、たとえば夜景のような要素を徹底的に排除した雑居ビル屋上で、利用者は自販機で欲しいものを買いながら、それぞれが気楽に会話の輪に参加するという内容でした。
この企画の魅力は、「語りたいときにアルコールはいらない」という堀内さんの強烈なホンネが出発点にあることでしょう。電通の先輩に言われた「そのアイデアはね、キミだから思いついたんだよ」という言葉が思い出されるほど、そこには確かな実感がありました。
もちろんその悩みが本当に「焚火」で解決するのか、そしてその「焚火」がビジネスとして成立するほどの対価を得られるのか等々、検討すべき余地はありますが、LPガスとオタクの組み合わせはとても新鮮でした。
もう一人の登壇者、青木賢蔵さんの提案は「日本の火葬技術を輸出する」ことでした。たとえばインドでは、いまだに木材をつかって火葬をしているため、環境負荷や長時間労働などの社会問題を引き起こしているそうです。それを、日本の「最先端火葬技術」と日本のLPガス業界が持つ「安定的な供給技術」とをセットにして輸出することで、一気に解決し、ビジネスの主導権を握ろうという話です。
埋葬習慣は宗教的な意識と強く関係していますが、インド国内で近年台頭している「中間層」が伝統よりも効率や近代的な快適性を重んじるという変化に注目。だからこそ、木材を使用しない火葬も受け入れるだろうというポイントまで、丁寧に論じられていました。
この企画で思い出されるのは、ジェームス・W・ヤングの名著「アイデアのつくり方」の中にあった「真にすぐれた創造的広告マンは、エジプトの埋葬習慣からモダン・アートに至るまで、ありとあらゆるテーマに興味を持ち、その知識をどん欲に吸収する」といったエピソードです。しかしまさか実際に、異国の埋葬習慣が大きなカギを握る企画に出合うとは、思いもしませんでした。青木さんの柔軟な発想には、ただただ脱帽です。
立教大学の大木郁実さんによる 「家庭用ごみ焼却機付き給湯器」の提案も、慶應義塾大学坂本浩一さんのLPガスを流通させる仕組み自体を変えようという「LP SPOT」の提案も、決勝に出場した4名は、内容はもちろんのこと、プレゼンの細かなところまで周到に準備されていて見事でした。
聴衆全員参加による投票の結果は堀内さんが審査員特別賞、青木さんが準グランプリというものでしたが、参加者全員が貴重な夏休みの時間を費やしたこの挑戦。彼らにとって大きな経験になるのは間違いなく、それ以上に聞いていたぼくが大きな刺激を受けました。
「&LPG Business Awards」は今年で2回目の開催。昨年度、準グランプリを獲得した明治学院メンバーとは、今でもたまにご飯を一緒にします。彼らがぼくの講義を受けていた時に課題、課題と厳しく攻めた復讐なのか、先日わが家に遊びに来たときは「わたしたちがそれぞれ地元の食材を届けますから、それで当日、うまいもんをつくってください」という謎の“お題”が。
案の定、送られてきたのはメギスの干物、イナゴのつくだ煮、桜エビ、黒ハンペン、イカのくちばし、ジャージー牛のゴーダチーズとカマンベールチーズ、名古屋コーチンのたまご、ホタテ、ユリネ、謎の肉塊……というまったく脈絡のない食材たち。
どうにかこうにか料理をしましたが、気の置けない仲間が集まれば、何を食べても盛り上がります。しかも、謎の肉塊が上等なエゾシカだということも判明。みんなで舌鼓を打ち、大満足だったのでした。
どうぞ、召し上がれ!