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企画者は3度たくらむNo.8

たくらみを阻む見えない壁(後編)

2015/04/30

今回は前回のコラムの続きで、私たちが無意識のうちに陥ってしまっている、たくらみを阻む見えない壁についてです。この壁は、気分転換で解消できるものではありません。
しかしながら、自分が壁のなかにいることを強く認識すれば、外へと抜け出すことができるようになります。

 

壁は知らず知らずの間に視野を狭くする

専門力は自分だけが持つ武器であると言えます。チームでは専門力を持ち寄ることで、様々な角度から企画を発想・検証し、最善と思われる一つを選び取ります。

しかし、その武器は、自分自身やチームの仲間を傷つける危険性をはらんでいることも理解しておかなければなりません。

対自分では、無意識のうちに得意分野での具体的なアイディアを発想しがちになります。企画で最も大事なのは、課題を見極めることであると、分かっているにもかかわらずです。
商品の説明を受けるオリエンテーションの場で、ひらめいたようにテレビCMやウェブ施策を考えてしまうことも、専門性の壁の中にいる弊害と言えます。

また、対他者においても、自分の専門性があるばかりに、つい辛辣な意見を言いやすくなってしまいます。すると、周囲に「自分の専門外の話をするのはやめよう」という空気が生まれてしまい、過度な役割分担が生じやすくなります。

時には、専門性という武器をしまう必要があるのです。

企画は常に時間との戦いです。時間がなくなってくればくるほど、焦ってしまい、企画が手につかなくなることも事実です。

そんなときにお勧めしたいのが、まず70点をとれる企画を生み出しておくことです。
合格点をとれると思える企画があれば、より幅広い視点から企画を考える心の余裕が生まれるのです。その企画を高めていくことでさらなる高みを目指すことはもちろん、別の方向性を探ることもできます。

私も、仕事が自分の手元にやってきた当日には、仮説としての答えを出しておきます。
人間の記憶は日々薄れていってしまいますので、記憶が鮮明なうちに考えを進めておくのは、一石二鳥とも言えます。
この習慣を身につけることで、効率と深度が同時に高まりますのでオススメです。

壁を越えたところに、たくらまれた企画がある

前例は、自分自身の成功体験と失敗体験、自分以外のメンバーの成功体験と失敗体験に分類することができます。前回のコラムでの常識の壁では、前者である自分自身の成功体験と失敗体験について、先入観という言葉を用いてご説明しました。

しかし、ビジネスにおいては、自分以外のメンバーの前例にも影響されやすいと言えます。
「前のチームが提案したけれど、NGだった」「多分あのクライアントには刺さらないと思う」といった類のものです。

もちろん、経験値として過去の情報を知っておくことは有効です。
そこで重要になるのが、第5回のコラムで取り上げた課題を再定義する力です。
もしも、新しく設定された課題に納得感を感じてもらえるのであれば、いままで採用されなかった企画が採用されることだって十分あり得ます。やはり全ての起点は課題の設定に集約されていくのです。

企画を立てるうえで、最も高い壁になるのが苦手意識です。
なぜなら、苦手という自分へのレッテルが、思考を止めてしまうことが多いからです。

そんなときには、自分の身のまわりにいる誰かを想定し、その人だったらどう考えるかを真似ることが有効です。真似というと抵抗がある人もいるかもしれませんが、「学ぶ」の語源は「真似ぶ」なので、嫌悪感を抱くことはありません。

本コラムに書いてあることを参考にすることは、私の方法を真似ぶことになると言えますし、納得できる箇所があれば、どんどん真似して欲しいです。
同様に、自分が憧れる人の方法を観察し、積極的にとり入れてみるといいと思います。

コツを覚えて少しずつできるようになってくれば、自分なりの成功パターンを開発することにつながります。発想することが楽しくなってくれば、苦手意識もいつの間にかなくなります。私も実践、実感済みです。

こうした見えない壁を意識し、乗り越えることで、企画にたくらみが入り込み、企画は力強くなっていきます。自然体だからこそ、個性が発揮された自分にしか発想できない企画を生み出すことができるようになるのです。

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