応援コメント2万8千種、「ハイタッチ先生」登場

病院に、おもてなしを。「ホスピタルティ」とは? №2

  • 橋口 幸生

2016/12/15

応援コメント2万8千種、「ハイタッチ先生」登場

ハイタッチ先生
 

こんにちは、コピーライターの橋口幸生です。病院のさまざまな課題を「おもてなし」で解決する。それが「ホスピタルティ」プロジェクトです。前回の記事では群馬県の美原記念病院での取り組みの中から、院内感染を予防するためのアイデア「消毒先生」を紹介しました。今回は、新たな“先生”を紹介します。

美原記念病院は、脳卒中を主とした神経疾患の専門病院です。最先端の治療に加え、リハビリテーションによる機能回復に力を入れています。

私たちは、回復期リハビリテーション病棟の様子を見せていただきました。先生方やリハビリ専門スタッフの方々にヒアリングをして、自分たちでもさまざまなリハビリ器具を実際に使ってみました。

「応援」をリハビリに取り入れる

リハビリは医師の診断からスタートし、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士など、さまざまな職種のスタッフが協力して進めていきます。ある一定期間、地道に、繰り返し取り組まなくてはいけません。普通の治療以上に、患者さん自身が前向きになる必要があります。ホスピタルティにできることは何か? チームでディスカッションを重ねました。

そこで私たちが考えたのは「応援」をリハビリに取り入れる、というアイデアです。

リハビリ現場では専門的な指導に加えて「退院を目指してがんばりましょう!」などと、患者さんを励ましています。こうした応援が患者さんを支え、リハビリの効果を高めているように私たちには思えました。ちょっとした応援が大きな力になるのは、私たちも仕事や勉強などで経験していることです。

こうしたインサイトからつくり上げたのが、「ハイタッチ先生」です。

「HOSPITAL-TY」開発プロダクト2 ハイタッチ先生

ハイタッチ先生は、その名の通りハイタッチして患者さんを応援する、デジタルサイネージの先生です。

 

ハイタッチした患者さんのデータ読み込み中!
ハイタッチした患者さんのデータ読み込み中!

ハイタッチ先生は、リハビリセンター入り口で患者さんを出迎えます。患者さんが手のひらにハイタッチすると静脈センサーで個人を認証し、データベース上のその人の情報にアクセス。一人一人に合った応援メッセージを表示するという仕組みです。

内容はリハビリへの実践的なアドバイスはもちろん、好きなスポーツや趣味などの雑談まで、さまざまです。本当に会話しているような感覚を味わっていただくために、コメントは組み合わせで2万8000以上のパターンを用意しています。

例えば、脳卒中でリハビリ中の患者さんには、

ハイタッチ先生のコメント
ハイタッチ先生のコメント
ハイタッチ先生のコメント
ハイタッチ先生のコメント

といった感じです。

事前に患者さんたちにアンケートをして、それぞれのリハビリの内容や趣味を把握した上で、コメントをつくりました。病院スタッフの方々も修正や追加が簡単にできるように、システムを組んでいます。

既存のコメントに飽きてきたときや、新しい患者さんが増えたときなど、随時対応することができます。普段の会話に出てきた話題や時事ネタ、クイズを入力するなど、現場で柔軟に運用しています。

本物の先生とハイタッチ先生

画像をご覧いただくと分かる通り、先生のイラストは4パターンあります。モデルは、美原記念病院で実際に働く先生たちです。

左から院長の美原盤先生、脳卒中部門長・認知症疾患医療センター長の神澤孝夫先生、副院長・救急部長の谷崎義生先生、循環器科部長の江熊広海先生です。アートディレクターが描いたのですが、「本物そっくり!」と好評です(笑)。主治医が患者さんに接するのは診察時で、通常リハビリの現場で会うことはありません。主治医も応援していることを伝える仕組みとして、ハイタッチ先生は活躍しています。

「ハイタッチ先生」とのリハビリ効果

3月30日に「ハイタッチ先生」を導入してから11月末までに、リハビリセンターを利用する患者さんのうち、63人の方に登録していただきました。病院からは、ハイタッチが日課になることで生活にメリハリができ、患者さんが前向きになるという報告を頂きました。結果、リハビリの効果が高まるのはもちろん、予後や将来に対する不安も軽減されたそうです。

医学的なデータは現在調査中ですが、表示されるメッセージを元に会話が弾み、先生やスタッフと患者さんの距離が縮まる効果もあったとのこと。ハイタッチ先生が「患者さんを応援する」という企画意図を超えて、院内での人間同士のコミュニケーションを活性化していたことは、予想外のうれしい驚きでした。

ハイタッチ先生は美原記念病院さんでの実施にとどまらず、今後の展開も見据えて、商標を出願しています。全国の病院やその他の施設で、設置できます!

ハイタッチ先生やホスピタルティについての詳細は、ぜひhospital-ty@dentsu.co.jp(橋口・金坂)までお問い合わせください。

次回は最終回、デジタルを使ったこれまでの先生とは、一味違う先生が登場します!