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ママのポテンシャルバリューNo.3

働くママが増えると、どうなる?①

2013/08/23

先日、「主婦の再就業による直接効果と経済波及効果」についてニュースリリースを出しました。結婚や出産で退職・離職した25~49歳の主婦が希望通りの再就業をした場合、直接効果は約3兆円、経済波及効果は約6.4兆円に上るという内容です。今回は、どうしてママラボでこの試算に取りかかったのか、そのきっかけからお伝えします。

「わたし、ママの常識からズレてるかも?」

きっかけは、1年間の育児休業期間中に様々なママに会い、それぞれの話を聞けたことです。その中に、子育てが落ち着き、これから働きたいというママも何人かいたのですが、私がイメージする「働く」とは、ギャップがありました。「自分が少しでも若いうちに、この先も続けられる仕事を探そう」ではなく、「空いた時間に仕事して、子どもが帰ってくる時間には家にいたい」という人がほとんどで(図1)、働き方や人生観の違いにとまどいました。「自分の人生を第一に考えて仕事をしたいママ」は少数派で、育児を最優先できない私は母性が足りないのかも?と落ち込んだこともありました。しかしふと、それは「今の日本での少数派」であって、今後は「出産や育児期間を挟んでも働き続けるのが当たり前」に変わっていくかもしれないと思ったのです。

専業主婦のママの理想の就業形態(n=1000)

 

ママが背負うと「ごめんなさい」、みんなで支えると「ありがとう」

 

かくいう私も、職場復帰した直後は「子どもと過ごす時間が短く、家事もちゃんとできず、家族に悪いな」「私だけ早く帰って職場の人に悪いな」と思って、「ごめんなさい」と言いがちでした。それは、心のどこかで「家事育児は主婦の役目」「仕事は残業して一人前」が基準と思い込んでいるからで、おそらく、日本の社会全体でそういった精神的な要求水準が浸透しているからです。

しかし、常識が変われば、「仕事も家事育児もみんなでフォローしあう」が当たり前になり、ママは、できなくて「ごめんなさい」ではなく、周りの人に、支えてくれて「ありがとう」と言えるようになる。子どもにとっても、「ママが家にいなくてさみしい」ではなくて、「大人になったらみんなが働いて、みんなで支えあう」ことを常識として育つようになる。そんな社会になるといいな、と思います。
 

経済波及効果が、「未来を考えるきっかけ」になればいい

 

そんなきっかけから、「働く主婦が増えたときの経済波及効果」を試算しました。ネット上では「そんな雇用増やせるの?」というご意見が多かったです。でも、「どうせ実現できるはずがない」ではなく、未来の話をして、これから動くことにつなげたい。経済が良くなりそうだと、みんなが信じなければ投資も雇用も生まれないし、いろいろな意見が出ることは、世の中が動くきっかけの一つにはなるかもしれない。そんな思いで「働く主婦が増えると、こんな効果がありそうです」と、問いかけるように小さな石を投じたのです。 机上の空論といわれたら全くその通りですし、何事もプラスの効果だけではないとも思います。しかし、「家の中にあった労働力が外に出て、家事育児の一部を『商品・サービス』が肩代わりすれば、その分経済が動くかもしれない」、「専業主婦から働くママに変わると、変化する生活に合わせて『商品・サービス』も変わっていくかもしれない」と想像する人が、少しでも増えればいいと思っています。
 

主婦が働き始めると、経済波及効果は6.4兆円に

 

統計データを元に、「結婚や出産をきっかけに仕事を辞めて、今は専業主婦」は25〜49歳の女性全体の34.4%(図2)、うち「もう一度働きたいと思う人」は18.8%と推計しました。この全員が希望通りに再就業した場合、ボリュームゾーンが専業主婦から働く既婚女性にシフトすることになります。(図3)

そして再就業して、希望する就業形態(正社員・非正規社員・パート)での平均年収をそれぞれ受け取ったとして、そこから国内消費に回る分を「国内の各産業にとって新たな収益増となる分」と考え、それを「直接効果3.0兆円」と試算しました。ここからさらに他の産業への仕入れが生み出されますから、直接効果3.0兆円は産業内を巡って、「経済波及効果」はおよそ6.4兆円になります。「もう一度働こうかな」と思う主婦が全員行動を起こせば、かなりの経済的インパクトがあるのです。

妻が働くと、夫はどうなる?

 

25~49歳は、育児期間であると同時に、職業経験を積む大切な期間でもありますから、男女を問わず、そのバランスを取ることが理想です。もちろん、母親と父親の役割の違いもあるので全て平等にという意味ではありません。ただ、父親にも子育て期間は貴重な経験であり、さらに、夫婦どちらかに何かあった場合に、金銭面でも育児面でもリスクヘッジになります。夫にとっては「家族を養う」という精神的負担は軽くなり、逆に家事育児に関わる時間や責任感が増すことになります。

「男性が育児をすると、夫の稼ぎが減って家計も経済も苦しくなる」と思う方もいるかもしれませんが、経済活性化のためには、「働き手が増えて、かつ一人一人の働く時間が全体的に下がる」方がいいという考え方もあります。もちろん、働き手が増える前提として、産業が成長しないといけませんから、次回は、産業側の視点で、「働く主婦」が増えるとどんな消費が増えそうかを見ていきます。