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デジタルマーケティングのヒントNo.2

送り手の都合でお客さまにアプローチしていないだろうか

2017/06/30

マーケティングが、「一人一人の顧客を識別し、顧客それぞれが欲しい情報を欲しいタイミングと場所で提供できるようにする」という方向に進化する今。マーケティングクラウド、DMPCMS、ダッシュボード、解析ツールなど各種テクノロジーを、日々のマーケティング活動に取り入れていくことはもはや当たり前となってきました。

そんな中、テクノロジーによって実現できること、例えば「コンテンツの出し分けができる」「店頭で顧客を識別できる」「位置情報でターゲティングできる」といったことを実施したとき、それは顧客にとって本当にうれしいことになるのかどうか。

送り手の都合だけで実施していることにならないだろうか。

私たちの中でもしばしば議論になることがあります。

 

そのときお客さまはどう受け止めるのか

例えば、「DMPの導入によって、来店されたお客さまの情報が店頭で瞬時に分かるようになる」という場合。テクノロジーによって、お客さまに対して「1週間前に大福を30個お買い上げくださった田中さんですね。お宅は4人家族なのでそろそろ消費されたと思うのですが、今日はいかがいたしましょう?」とアプローチすることは可能になるでしょう。でも実際のところ、それはそのお客さまにとって心地いい体験なのでしょうか。

コンテンツや広告の出し分けやリマーケティングも、コミュニケーションの構造は基本的にこれと同じわけですが、同じ構造でも、ネット通販で定期的に買っている化粧水なら、なくなった頃に勧められるのはむしろ手間が省けて便利なことでしょう。

送り手にとって、興味のある人だけに情報を届けるのはとても効率的な方法ですし、顧客にとっても必要のない情報に煩わされないで済むのはありがたいことです。

 

けれど、商品の種類や買う場所、タイミングによってはよかれと思って実施した施策が、むしろ逆に働くことがあります。その時々の顧客の受け止め方については、数やロジックでは追いきれない想像力を働かせる必要があるのではないかと考えます。

そのためには日々のマーケティング活動において、顧客が自社の施策をどのように感じているかを捉えることも重要になります。日頃から自社と顧客のコミュニケーション回路ができていれば、彼らに聞いてみることができます。データやソーシャルコメントの分析視点を、例えば「自分たち企業の思い描いた通りに動いてくれているかどうか」、という視点から「相手がどう感じているのか」という視点にスイッチしてみるというのも一つの方法だと思います。

 

この先、生活者が皆テクノロジーに慣れてしまう、あるいはテクノロジーが存在を感じさせないほど巧妙にアプローチできるまでに進化したら別ですが、今の段階ではテクノロジーを介したコミュニケーションは、顧客が常に快と不快の微妙なバランスの上で受け止めていることを忘れてはいけないと思っています。

 

テクノロジーに想像力を加える

マーケティングテクノロジーには、送り手つまり企業のマーケティング戦略の精度を上げ、日々の作業を効率化する側面と、受け手に心地よい体験を提供する側面の両方があります。

送り手はどうしても、できるだけ効率よく顧客を獲得すること、できるだけ効率よくプロジェクトを運営することを優先的に考えがちです。成果においても数値化しやすい項目が、社内の関係者に理解・評価されやすい面があります。

でも、顧客が企業からのアプローチをスムーズに受け入れ、行動してくれないと、企業の成果につながらないのもまた事実です。

効率的と情緒的、左脳と右脳、データとクリエーティビティー。

どちらが重要か、ではなく、テクノロジーとコミュニケーションのほど良いバランスはどこなのか。そのバランスはデジタル環境が日々変化していく中で今どのあたりにあるのか。

マーケティングをデータとテクノロジーで高度化させていくプロセスにおいては、常にそこを確認しながら進めていかなければならない、そして高度化していけばいくほど顧客に対する想像力がますます必要になってくる、と日々感じています。