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ダイレクトブランディングの未来 〜米国DTCブランドの隆盛が示す新たな価値共創モデル

共創の時代のブランディングNo.6

2019/08/27

ダイレクトブランディングの未来
〜米国DTCブランドの隆盛が示す新たな価値共創モデル

21世紀型のブランドをどのように構築するか

近年、オンラインで顧客と直接関係を築いて製品やサービスを提供するDTC(Direct To Consumer)ブランドが、さまざまなカテゴリで躍進しています。

例えば米国では2010年代に、ワービー・パーカー(眼鏡)やボノボス(アパレル)、アウェイ(トラベルグッズ)、グロシエ(化粧品)などデジタルネイティブのベンチャーが次々と登場。革新的なサービスとブランド体験を通して顧客の支持をつかみ、急成長しています。

こうしたDTCブランドの隆盛について、米国IAB(Interactive Advertising Bureau)は、2019年7月にレポート「Disrupting-Brand-Preference Study」を発表。大規模な消費者調査に基づいた発見を紹介し、新しいブランド構築モデルを示唆しました。

20世紀型のブランドは、マス広告やマスチャネルなどで消費者と間接的な関係を通じて築かれてきた、大量生産型のメーカーモデルでした。ところがDTCブランド(レポート内ではダイレクトブランドと表記)は、オンライン/オウンドチャネルで消費者と直接つながり、消費者がブランド構築の共創者として機能する、全く異なるブランド構築モデルを体現しているというのです。

ダイレクトブランド図

ここでいう新しいモデルとは、図1のように、ブランドと消費者との直接体験提供・共創と、データのフィードバックを事業全体の中核に据えるものです。そして、製品開発と製造、フルフィルメント、広告・プロモーション、データ業務などを内製化にこだわらず、効率的かつ柔軟に外部リソースを活用しながら行い、ブランドを創っていくわけです。

IABのレポートでは、新たな消費者の嗜好を開拓し、成長を続ける250のダイレクトブランドを紹介しています。ジャンルでは、アパレル、フード、美容、パーソナルケア、ライフスタイル関連が目立ちます。

そして米国のダイレクトブランドユーザーの調査からは、次のような発見が示されました。

  • ダイレクトブランドの購買者は13歳以上の米国在住者の48%に及ぶ。購買者は、より若く高収入で、製品ニーズよりも自己表現価値を重視する傾向が顕著である。
  • ダイレクトブランドは、さまざまな接点でユーザーの能動的な体験を通じて築かれている。また、71%のユーザーがブランドを積極的にシェアしており、それ自体が自己表現を通じたブランド価値となっている。
  • ユーザーは、単なる購買にとどまらず、サブスクリプションや積極的な共有・推奨行動に基づく、多様な接点でのエンゲージメントでロイヤルティを構築している。そして24時間いつでもオムニチャネルでのアクセスを望んでいる。
  • ダイレクトブランドの認知経路は、テレビCM、検索、通販サイトの広告、ソーシャルメディア広告がほぼ拮抗している。
  • ユーザーはインフルエンサー比率が極めて高い。中でも自らスタイルを持ちながらブランドについて情報・コンテンツを積極的に発信し、他者のブランド選択に影響を与える「スーパーインフルエンサー」が3分の1を占めている。

消費者と直接つながることで、ブランド価値を共創する

注目すべきは、躍進しているダイレクトブランドが、ブランド独自のストーリーやスタイルを持ち、ユーザーの行動やライフスタイルを変えるような価値を、革新的な発想とデジタルネイティブなテクノロジーで実現していることです。

そしてブランドが消費者とつながることで実現できる価値(製品パーソナライズ、自己選択、コミュニティ形成、継続とフィードバックなど)が、ユーザーの自己表現価値と強く結びついていることも挙げられます。

これらのブランドの多くが、大手リテーラーやアマゾンなどのオンラインチャネルで、マス向けの販売規模を追求することを目指していません。むしろ消費者と直接接点を持ち、一人一人とエンゲージメントを図ることで、他にないブランド体験と共創による価値(ユーザーこそがブランド構築のパートナーとなる)を実現し、高い収益を上げています。

こうしたダイレクトブランドのビジネスモデルは、図2のように、製品中心ではなく、顧客中心の価値共創を実現する、今日的なブランドプラットフォーム構築の具現化だといえます。

顧客と直接の図

さらに、近年ダイレクトブランドはリアルな小売店舗の展開を加速しつつあり、従来の小売中心のブランドとも競合しながら、新たなリテール戦略の視点をもたらしていることにも注目すべきです。そこではオンラインとリアル店舗での購買体験がシームレスに融合しており、リアル店舗がモノを売る場所に加えてブランド体験の「メディア」にもなり、オンラインの売り上げに寄与している、という特徴があります。

こうしたダイレクトブランドの躍進は、アップルやナイキ、ユニクロといった、製造小売業モデルでグローバル企業になったリーディングブランドの近年の小売戦略にもインパクトを与えています。さらに、ユニリーバが2016年にダラー・シェイブ・クラブ(ひげそりのダイレクトブランド)を10億ドルで買収するなど、大手の消費財ブランド企業にも、新たな21世紀型ビジネスモデルの開拓や、成長ブランドのM&Aを促しつつあります。

日本市場におけるダイレクトブランドモデルの機会は?

さて、日本市場ではこうしたダイレクトブランドの流れをどう捉えるべきでしょうか。もちろん米国とは、チャネル環境(集約度、アクセス、利便性など)、オンラインショッピングの浸透度、ユーザーとしてのインフルエンサーの発信力・影響力の違いなどもあるでしょう。

一方で、オンライン購買の浸透や、企業のデジタルトランスフォーメーションが急速に進む中、メーカーにとってもダイレクトブランドモデルには、まだまだ大きなポテンシャルがあると考えられます。既存の製造設備や流通などサプライチェーンのしがらみで、なかなか身動きが取れない大手企業も多い中、破壊的イノベーションの余地があるからです。

人口減少による国内市場の長期縮小と生活者の消費価値観の変化により、20世紀型のマスプロダクト、マス広告、マス流通のモデルは、限界を迎えつつあります。一人一人の消費者を中心とした関係の中に、テクノロジーと体験革新で新しい価値を生み出すことができるかが、これからのブランディングを成功させる鍵となるでしょう。

次回はこうしたダイレクトブランドの時代における、新たな“リテールのブランディング”の進化について解説していきます。