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イノベーションの種は、常に会社の中に

カンパニーデザインNo.4

2019/11/13

イノベーションの種は、常に会社の中に

電通CDCクリエーティブ・ディレクター・武藤新二からの対談オファーに、今回、快く応じていただいたのは、プレジデント社の長坂嘉昭社長。『プレジデント』編集長時代には名だたる企業のトップを長年にわたり取材。現在も交流を深めているという長坂社長と、会社組織の課題、取るべき対処法、電通・武藤チームが進めている「カンパニーデザイン」についてなど、様々な意見交換を行いました。

プレジデントプレジデント社・社長坂嘉明社長(写真左)と電通CDCクリエーティブ・ディレクター・武藤新二(同右)
プレジデント社・長坂嘉明社長(写真左)と電通CDCクリエーティブ・ディレクター・武藤新二(同右)





 

大企業でも“業績悪化”に陥る時代。
現場を最上とする「逆ピラミッド」組織に


武藤:日本企業の変遷を熟知する長坂社長ですが、現在をどのように捉えていらっしゃいますか?

長坂:会社は生き物ですが、今はどんなエクセレントカンパニーでも“体調不良”に陥る時代です。テクノロジーは高速に進化していて、先頭だったはずのスキルもすぐに陳腐化しますし、市場や消費者心理も変化している。働き方改革も叫ばれており、生産性も上げなければならない。「今までのやり方じゃダメ」だと、どの経営者も気付いていると思います。

「モチベーションを高めて一人一人の能力を引き出すことが、企業を強くするためには必要」(長坂社長)
「モチベーションを高めて一人一人の能力を引き出すことが、企業を強くするためには必要」(長坂社長)

武藤:私も経営者とお話しする機会が少なくないのですが、皆、悩んでいる印象です。特に最近は「人の問題」、つまり社員のモチベーションや採用について、クリエーター目線でこれまでと異なるアイデアがないかと相談されることが多いです。

長坂:世の中が変わったとき、企業の資産は結局「人」なんですよね。私も編集長時代に『プレジデント』は「人にフォーカスする人間雑誌」と掲げていたので、以前から人はとても大事だと考えています。ちなみに、人の能力の違いなんて、せいぜい1.5倍や2倍程度だと思っていますが、モチベーションは10倍にもなればマイナスにもなり得る。モチベーションを高めて一人一人の能力を引き出すことが、企業を強くするためには必要です。

武藤:私は中でも「現場社員に着目する」ことが今の時代は重要だと感じています。答えは全て会社の中にあるような気がしていて。

長坂:企業は今、組織の形を逆ピラミッドにしなければいけないのかもしれませんね。現場社員が一番上にいて、トップが一番下にいる逆三角形。そうやって現場の意見や知恵を上からボタボタ、もしくはドバドバと落としてもらうような形に変えないと、イノベーションにつながる新しい時代の新しい答えは出ないように思います。なにせ、顧客との接点は現場にありますからね。UberやAirbnbなどの革新的な事業も「タクシーがつかまらない」「ホテルが取れない」という、いわば現場目線から生まれたものです。

武藤:今回の私たちの取材でも、今イノベーションを起こしている会社は現場社員としっかりと向き合っていることが分かりました。

長坂:最近では国内の大手商社でも、社内でビジネスアイデアコンテストを行い外部審査員のジャッジで出資を決定するような機会をつくるなど、いろんな人たちに意見を出してもらう仕組みを設けていたりします。制度や仕組み、インセンティブをセットで設計しないといけませんよね。

会社の理念を伝える翻訳力
現場の声を受け取る編集力


武藤:もう一つ、取材した経営者が共通でおっしゃっていたのが「理念が大事」ということ。自分たちがなぜ働くのか、この会社は何を社会に提供し誰をどう幸せにするのか。それをきちんと定義して共有しなければ、現場社員の中核を担うミレニアル世代のモチベーションはつくれないと。

「取捨選択したり掛け合わせることで価値を生む「編集力」も必要になってきますね」(武藤)
「取捨選択したり掛け合わせることで価値を生む「編集力」も必要になってきますね」(武藤)

長坂:われわれの世代みたいに、成果や目標を掲げてインセンティブをぶらさげるだけでは動かないんですよね(笑)。最近は『プレジデント』で「人間力」特集を組んだら、若い人が読むんですよ。「私って誰?」「何のために働くの?」「私はなぜ生きなきゃいけないの?」という本質的な、哲学的なことに対する彼らの関心が、思っている以上に深くあるなと感じます。

武藤:商品・サービスのスペックや価値を世の中に届けるための企てをしてきた、われわれのクリエーティブ力で、会社の理念やDNAを具現化するお手伝いができるのではないかと考えています。

長坂:昔、ある自動車メーカーがハイブリッド車を売ろうとなったとき、当時の経営トップは「車には環境グッドの車と環境バッドの車がある。うちのハイブリッド車は環境グッドの車である。環境グッドの車が増えれば日本のCO2問題は大きく改善する。だから、これを売ることは社会、会社、自分のためになる」と言いました。こういう「翻訳力」が、より求められる時代になっていると思います。ダイバーシティーの時代ですしね。

武藤:一方で、現場社員の声を逆ピラミッドの上から全て受け取るとなると、取捨選択したり掛け合わせることで価値を生む「編集力」も必要になってきますね。

長坂:1人の働く時間が1日8時間だとしたら、上に10人いただけで80時間分の情報が入ってきますからね。組織の形を変えたり新たな仕組みをつくったりすればそれで終わりというわけにはいかない、手間のかかる時代になったんです(笑)。トップは必死になってよく考えなければなりませんね。

本対談を通して得られた知見

イノベーションの起こし方

長坂社長との対談を通して、電通カンパニーデザインチームが掲げる「会社のオリジナリティーの源泉は、『社員の現場力』にある」という仮説に、強い確信を得ることができました。

本連載の#01は、こちら。#02は、こちら。#03は、こちらまで。
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