リモート時代の心をつかむ超言葉術No.4
迷走するリモート会議を着地させる「接続詞マスター」になる方法
2020/08/17
接続詞マスターになろう
皆さんの職場では今、どれくらいの割合でウェブ会議があるでしょうか?僕の場合、今年の2月まで打ち合わせの9割は集合形式でしたが、今では逆転。仕事における会議のほぼすべてがウェブ会議になりました。
画面越しに顔を合わせることに徐々に慣れてきたものの…プロジェクトによっては、この先どうなっていくのか見えない状況に予定が立てられなくて、もどかしい思いをすることもしばしば。
一つ一つの会議は、ゴールに向かうために行うものです。その時間を共に過ごすからには何かしらのゴールテープを切りたいと思います。ウェブ会議が増えて、僕は接続詞を使いこなす「接続詞マスター」でありたいと強く思うようになりました。
話し合いがネガティブな方向に行くと、「でも」とか「だって」とか、マイナス方向に向かう接続詞が増えていきます。もちろん、ネガティブな要因を話し合う必要があるときもあります。それでも、意見を出し合うときは前向きなマインドが大切です。
そんなときは、接続詞そのものを意識して変えていきます。こういう点では「むしろ」良かったと言えるのではないか。そういう状況「だからこそ」できることがあるんじゃないだろうか。こうなって「逆に」良い点はないだろうか。
ちょっと強引かもしれないですね。それでも面白いのが、口に出してみることで、場の意識が切り替わっていくんです。打ち合わせの空気がすこしずつ、じわじわと変わっていきます。
「そもそも・たとえば・つまり」理論
コピーをつくる時も、僕は接続詞を使いながら考えるようにしています。その接続詞とは「そもそも」「たとえば」「つまり」の三つです。
「そもそも」で問い掛けて、「たとえば」で経験を思い出し、「つまり」で本質を導いていくのです。
まず、問いを立てる「そもそも」からはじめます。「そもそもそれは何なのか?」を考えていきます。この連載の第1回に書いた「『I LOVE YOU』今のあなたなら何と訳しますか?」、このお題を一緒に考えていきましょう。
そもそも「愛」とは何でしょうか?その時に意識するとよいのは「枕詞を疑う」ということです。枕詞とは、その言葉に密接にひも付いている言葉のこと。想起されやすい言葉ですね。
「愛」の枕詞は…
永遠の愛。
無償の愛。
掛けがえのないの愛。
よく聞くけど本当にそうなのだろうか?と疑問を持って考えていきます。
次に「たとえば」です。この接続詞を使って発想を広げていきます。発想とは、ある「問い」に端を発して、想像を広げていくこと。「たとえば」という接続詞を用いながら、頭の中のイメージという名の円を大きく大きく広げていきます。
たとえば、中学生の時に隣の席の子のことがずっと気になってしまったよな、とか。
たとえば、修学旅行からの帰り道、親が駅の改札前で待っていてくれたよな、とか。
たとえば、一人で食べるよりも二人でご飯を食べる方が抜群においしいよな、とか。
これは実体験だけに限らなくて大丈夫です。本やテレビや映画で見聞きしたことでもいいんです。とにかくしつこくしつこく諦めずに思い出していく。僕は、見聞きすること、体験することを、生活の中にある心が弾むような瞬間を忘れないために、スマホアプリ「Evernote」に記録するようにしています。
最後に「つまり」です。広げた円から覚悟を決めて絞り込んでいく。これから向かうべき方向であり、こちらの方が魅力たっぷりですよ、そんなふうに言いたくなる「本質」に旗を立てます。
僕なりの愛の本質とは、枕詞でもある「永遠」という決して壮大なものではなく、つまりは相手の変化に気づく「発見」でした。
永遠にあること→発見すること
愛とはつまり、発見だ。それが、学校の教室なら相手の消しゴムが落ちたことに気づくことだし、デートに行く時なら相手の新しい洋服に気づくことだし、暮らしの中なら相手の小さな体調の変化に気づくこと。こんなふうに「つまり」を用いながら出発地点から目的地に向かう矢印をつくり、言葉に込めていきます。
読んでくださった方が「接続詞マスター」になれるように僕は著書『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』を書き上げました。さらに詳しい企画の仕方についても、書籍をぜひ。
会議が迷走している時、それは各メンバーの発想が膨らみきった状態です。そういう時こそ「つまり」を意識して使って、どんどん的を絞り、着地させていく。現時点での結論を「つまり」で導く。落とし所をリモート会議の終わりまでに見つけることで、気持ち良く次の打ち合わせに行けると思います。