輝き方は、選べる。中小企業138社の“魂の声”に感じた希望
2020/09/24
日本経済新聞社による「中堅・中小企業劇場 NIKKEI魂の声 ~2030年に残したい企業~」(協賛:DELL、JOYSOUND、ワップフィルム)は、コロナ禍でも輝く中小企業の声を集めて発信する企画です。中小企業各社がYouTubeに「自社の思いを込めた3分動画」をアップし、その動画キャプチャーと社名を日経に掲載。応募企業から選ばれた138社の動画をまとめたYouTubeチャンネルも公開しました。
企画の目的は下記の3点です。
- 企業の結束を深める
- 輝く企業の魅力を可視化し、前向きな機運をつくる
- 中小企業のステークホルダーへの情報発信の一助となる
今回は、この企画を立ち上げた経緯や私たちの思い、そして企画を通して得られた気付きなどを、応募動画の内容も交えてシェアしたいと思います。
1000人以上の中小企業経営者から感じた、コンテンツメーカーとしての魅力
私は2015年から中小企業との企画・コンテンツ開発を続けています。こうした活動を通して1000人を超える中小企業経営者とお会いし、中小企業ならではの“心を動かすコンテンツメーカー”としての魅力をひしひしと体感してきました。
こうした中小企業が持つコンテンツ力に、電通の企画力・クリエイティブ力・メディア連携の強みを掛け合わせれば、対等な立場でより魅力的なコンテンツ開発ができるのではないか。その思いから、日本経済新聞社と「中堅・中小企業活性化プロジェクト」というプロジェクトを立ち上げ、これまでにも「日本の企業は、バラエティ。15秒おしごとTV」や「NIKKEI全国社歌コンテスト」(大企業も対象)といった企画を実現してきました。
2020年6月の倒産件数は780件、機動的な対策が急務に
東京商工リサーチによると、今回の企画を立ち上げた6月の倒産件数は780件となり、5月の314件から2.5倍に増加。もともと業績に余裕がない企業もあった中、人手不足、消費税増税、暖冬の3重苦に加えてコロナショックが追い討ちをかけた状況です。この緊急事態下において、「コミュニケーション領域で私たちがすぐに実行できることは何なのか?」を考えていました。
コロナ禍でも前に進む経営者から着想を得る
企画の決め手となったのは、愛知県で金型ゴム成型を営む「ダイワ化工」取締役の大藪めぐみさんの活動です。コロナの影響で各種イベントが中止となる中、彼女は愛知県と岐阜県の中小企業5社を集めてオンラインでの「ものづくり展示会」を企画し、ビジネスの新しいカタチに挑戦していました。
このような前向きで創意工夫に溢れる取り組みは、より多くの人に届けていく必要があると思いました。
日経だからできること
デジタル技術の発展により、誰でも、どこからでも情報発信できる世の中となった一方、その発信力に差が生まれていることも事実です。だからこそ「個性ある企業の声を一堂に集め、発信する場が必要だ」と考え、日経の菊原周平さんと柴田敬一さんに企画化を提案し、すぐに快諾していただきました。
なぜ、日経でやるのか?それは、日々の記事を通じて日本経済に問題提起し続けている日経が、その解決の一助となる参加型企画まで提供する。そこに大きな意味があるからです。
この企画は「中堅・中小企業活性化プロジェクト」の第4弾という位置づけで、電通PR、JOYSOUND、地域力活性化研究室、情熱の学校などによる「NIKKEI全国社歌コンテスト」運営チームが主体となり、動画制作で有名なBIS GROUPにも協力していただき、スピード感を持って一気に動画募集まで実行しました。また、有力中小企業経営者が多数出演し、日本一のロングラン記録を持つ対話型映画「未来シャッター」を製作したワップフィルムにもサポートしてもらっています。
応募動画から見えたこと “輝き方は、選べる。”
応募企業の動画を拝見し、そこから生まれたキャッチコピーが「輝き方は、選べる。」です。企業の輝き方は実に多種多様。それぞれが思いを込めて企業活動を行い、お客さまの心を動かしているのです。
例えば、廃棄物回収を行う「名晃」(岐阜県)は、長年心を込めて廃棄物置き場を清掃し続けた結果、お客さまから「これは、パワースポット化だ!」という感謝の言葉をもらえるようになり、現在も活動を継続しています。
靴下を国内製造する「巽繊維工業所」(奈良県)は、“穴の開かない靴下”という独自のアプローチを追求することで反響を獲得。生活用品製造を行う「サンコー」(和歌山県)は、“人の心に貯金する”という経営理念をぶれることなくモノづくりで実践。クレーンゲーム大型店を運営する「東洋」(埼玉県)も、企業理念の“笑顔創造”をコロナ禍でも継続することを表明しています。
住宅事業の「マエダハウジング」(広島県)は、“広島を、いい笑顔に”という思いを歌で表現。愛知県、岐阜県、大阪府、富山県の町工場20社は、「俺らFactoryMan」主催の“くだらないモノ日本一“を決める「K-1グランプリ」を一致団結して開催することを決定。ボーカル教室の「Lavoc」(東京都)は、“音楽の力で、日本を元気にする”という原点に立ち返り、レッスンのオンラインサービスを開始しました。
ITハードウエア専門企業の「ゲットイット」(東京都)は、“気づきは、変化の力だ”というメッセージを、「コロナ期に減った通勤時間5200時間/3カ月」といった数値で見える化。イベント企画などをトータルプロデュースする「アステム」(大阪府)は、“物理的距離があってもつながりを大切に”という姿勢を、聴覚に障害のある人や高齢者、外国人へのアクセシビリティーを大切にする同社ならではの手話を交えて発信しています。
集まった数多くの動画を見ると、人の心を動かすものは表現技法以上に、企業の強い思いそのものだということが感じ取れます。
応募企業からは、「日経がこんな企画をつくってくれたことがうれしい」「社員の結束が深まった」「趣旨に賛同した」「動画やYouTubeの勉強をし、遅ればせながらIT化の第一歩となった」などのポジティブな声を頂きました。
この他、私が印象に残ったのは、HRテック企業の「あしたのチーム」(東京都)です。企業の最高のチームづくりのお手伝いをし、働く人がやりがいを持てる“あした”を実現したいという思いを込めた、とある企業のドラマになっています。
私の地元・大阪が誇る、「りくろーおじさんのチーズケーキ」で有名な「リクロー」からも応募がありました。
“おいしい笑顔をふやしたい”という理念を真摯に語る社員の姿が印象的です。動画に散りばめられている「店頭で鳴る鐘の音」を聞いて懐かしく、ホッとする人は多いと思います。
また、「米朝事務所」(大阪府)は、桂米團治師匠本人から応募がありました。桂米團治さんが1980年代に作曲した「米朝一門のうた」を、社会を元気にするために初披露しています。舞台が密にならず、笑いで自己免疫力が高まる点も落語の大きな特徴です。
川嶋あいが、応援ソング「へっちゃら」を提供
2016年から社歌コンテストで協力いただいているシンガー・ソングライターの川嶋あいさんに、今回の企画趣旨を説明し、「日本を元気にする曲を作ってもらえませんか?」と相談したところ、快く引き受けてくれました。「中堅・中小企業活性化プロジェクト」と「社歌コンテスト」という日経の二つの企画テーマソングとして「へっちゃら」という楽曲が生まれ、魂の声の紙面掲載日にフルバージョンをYouTubeで公開しました。
歌詞の中に「道なき道でも歩けば鼓動が巡る」という部分があります。今はまさに道が見通しづらい状況ですが、この曲のように「一歩踏み出そう」と思える、企業参加型の企画コンテンツを、今後も模索していきます。
【川嶋あいさんコメント】
この度、「日経 中堅・中小企業活性化プロジェクト」と「NIKKEI全国社歌コンテスト」の2つの企画テーマソングとして「へっちゃら」を書き下ろさせてもらいました。2016年から社歌のプロジェクトに関わらせていただき、多くの企業の皆様の個性豊かな社風や、エネルギーに溢れた働く素顔、そして力強い理念を私自身、体中で感じさせてもらっていました。その一つ一つを昇華させていき、生まれたのが今回のテーマソングです。
時代は刻一刻と変化してゆきます。混沌とした世に生きる中で、何か心の中で呪文のように唱えることによって、元気を取り戻したり、フッと笑ったり、肩の力を抜くことができるような……そんな言葉を思い描いてみたいと思いました。
今、この「へっちゃら」という言葉がどのくらい多くの方の心に届くかはわかりません。
もし少しでも誰かの気持ちがこの「へっちゃら」に出会えた時、今よりちょっとだけでも明日を覗いてみたいな、明日へ向かってみたいな、そんなわずかだけど嬉しい希望が、聞いていただける皆様の心に宿ってくれたら、こんなに幸せなことはありません。
2つのプロジェクトが、日本中で働く企業の皆様の心を、晴れやかに優しく照らす太陽のような存在でありますように。