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日本発!小さくても逆境に勝つ「小さな大企業」スモール・ジャイアンツNo.3

組織はスモール、価値は“ジャイアンツ”な「すごい会社」を探せ!(関東・中部編)

2020/10/12

日本にはまだまだ全国区で名の知れていない「すごい会社」が存在する
日本にはまだまだ全国区で名の知れていない「すごい会社」が存在する

全国各地の未来ある中小企業を発掘すべく、2018年にForbes JAPANと電通が立ち上げたプロジェクト、その名も「スモール・ジャイアンツアワード」。4年目となる本年度は、初のオンラインで開催されます。10月13日の、地方大会第一部ブロック(関東・中部)の見どころについて、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春氏による寄稿をお届けします。

企画=笹川真(電通)


「コロナ禍はモノサシを変えた」といわれている。これまで会社の価値を測るモノサシは、組織の規模、売り上げや収益の大きさ、知名度といったものが典型だった。しかし、コロナ禍で同じ業種でも会社によって明暗が分かれているように、規模の大きさなどでは測れなくなっている。将来の予測になると、もっと難しい。

「モノサシを変えよう」をテーマにしてきたのが、今年4年目となるForbesJAPANの「スモール・ジャイアンツ」アワードだ。組織は「スモール」でも、価値や影響力は「ジャイアンツ」。どんな工夫で「すごい会社」になったのか。10月13日から全国を4ブロックに分けた地方大会をオンラインで開催する。

今年4年目となるForbesJAPANの「スモール・ジャイアンツ」アワード「SMALL GIANTS AWARD 2021」の詳細はこちら

経営者たちが苦心してきた工夫に耳を傾ける前に、第一次審査を通過した企業をここに紹介しよう。目利きであるアドバイザリーボードが推薦してきた100社以上の企業から一次審査を通過した会社である。

世界に先駆けた自律型組織のパイオニアは立川にいた:株式会社メトロール(東京都立川市)

2009年に会社を継いだ2代目の松橋卓司社長は高収益を生む自立型組織をつくりあげた
2009年に会社を継いだ2代目の松橋卓司社長は高収益を生む自立型組織をつくりあげた。

工場の自動化に必要な「高精度工業用センサー」の、開発・製造・販売を行う。主力商材はロボットや工作機器の工具の先端の位置を精密に決める「精密位置決めスイッチ」というもの。約70カ国に展開していて、世界トップシェアを誇る。ただ、この会社が世界の最先端を走るのは、技術だけではなく、売り方と働き方にある。

中小企業には「黒字倒産」という事例が跡を絶たない。立場が弱く、特に海外での販売は売掛金を回収しにくいという事情がある。そこで同社は1998年頃からインターネットで海外への直接販売を開始。決済は円建ての前払いか、クレジットカードやPayPalによる電子決済で行い、キャッシュフローを安定化させている。

また、人事、総務、経理といった間接部門をデジタル化によって廃止し、社員が本業に集中できる体制にしている。さらに、役職もすべて廃した。全員が同じ立場で、プロジェクトごとにリーダーを決めて組織運営をしているのだ。まだ日本ではピラミッド型の組織が当たり前で、同社のような平等のホラクラシー型組織はほとんど浸透していない。これに近い「ティール組織」という概念が日本に上陸したのも、ここ数年のことだ。メトロールが経常利益率20%と高収益を実現した背景には、「働き方」の独自性があったわけだ。

勝負の土俵は海外。飲食料メーカーのスモール・ジャイアンツ:中央葡萄酒(山梨県甲州市) 

山梨のワイン業界の重鎮として知られている三澤茂計社長は一切の妥協を許さない
山梨のワイン業界の重鎮として知られている三澤茂計社長は一切の妥協を許さない

日本のワイナリーのほとんどが国内市場しか見ていないなか、いち早く海外展開を試みて、世界で勝負するのが「グレイス(GRACE)」ブランドだ。

2014年、「キュヴェ三澤明野甲州2013」が世界最大のワインコンクール「Decanter World Wine Awards」で日本ワイン初の金賞を受賞。以後、6年連続で何らかの受賞の栄誉に浴する。現社長の三澤茂計は山梨のワイン業界の重鎮として知られており、フランスのワイナリーで修行を積んだ娘の彩奈氏が栽培・醸造を仕切っている。三澤親子は、「日本のワインで奇跡を起こす』という著作があり、そのタイトル通り、親子での奮闘が描かれている。

同社は欧州に加え、近年は豪州やシンガポール、香港、台湾などにも進出し、約20カ国に対して年間1万5,000本を輸出。ワインの価値は受賞歴ではなく、つくり手によって決まると捉え、「風景がワインになっているか」という目線できめ細やかなワインづくりを追求している。

世界と地元を同時に底上げする、「管」の何でも屋:栃木精工(栃木県栃木市)

屋注射針用ステンレスパイプなど、医療分野を中心に高品質な製品を開発
屋注射針用ステンレスパイプなど、医療分野を中心に高品質な製品を開発。

スモール・ジャイアンツの審査基準のひとつに「地域への貢献」がある。栃木精工は雇用だけでなく、地場に技術を供与する共同開発を念頭に経営をしている。

「管(くだ)の何でも屋」を標榜し、注射針用ステンレスパイプ、OA用精密パイプ、分析機用精密パイプなどを展開。収益柱の医療機器向けには、歯科用麻酔針やカテーテル、ポンプチューブ、医療用コネクタ、内視鏡用構成部品といった管状の製品や、優れた操作性と強力な耐久性を持つブラシ関連製品などを手がけており、世界の医療現場に貢献。売り上げの4割を海外から稼ぎ出している。

製品の仕入れはほとんどが県内企業から。部門ごとの損益は全社員に公開し、各自が経営を自分ゴト化することで、組織力を高めており、業績は10年連続で伸びている。その一方で、地場の200社に技術を提供し、共同開発という形で底上げを図る。地域を支える重要な存在となっているのだ。直近では新型コロナウイルスの影響で需要増加が見込まれる呼吸器系のチューブを開発中である。

人体内部から宇宙空間まで「フィルター界の総合デパート」:富士フィルター工業(東京都中央区)

 

業種を問わずありとあらゆるフィルター製品をグローバルで展開
業種を問わずありとあらゆるフィルター製品をグローバルで展開

スモール・ジャイアンツでは中小企業でも世界中で商品やサービスを浸透させている例を取り上げてきたが、フジフィルター工業のすごさは、代理店や販売会社を通さずに、55カ国以上を独自でカバーしていることだ。

同社は、高精度の産業用フィルターとフィルターシステムの開発・設計・製造・販売を一貫して行うフィルターの総合エンジニアリング会社である。フィルター会社は特定産業に特化する場合が多いが、私たちの身の回りにあるあらゆるフィルターを手掛けている。一般化学、食品、医薬品、自動車、航空・宇宙、家電、IT、クリーンエネルギーなど、まさにフィルターのデパートのような稀な存在だ。

審査会での評価された点は、中小規模ながら、これだけの領域で世界で戦えている点と、フィルターの市場規模がは大きく、今後の発展が予測される点である。そしてもうひとつ、「世界で一番社員がHappy」という企業理念。社員を大事にする企業は、これからの日本社会でますます重要になる。

大手企業が次々と断念する研究を続け、「光学単結晶」で唯一無二の存在に:オキサイド(山梨県北杜市)

 

大手企業などから「その道一筋」の人材が結集する光学単結晶の研究者集団

大手企業などから「その道一筋」の人材が結集する光学単結晶の研究者集

スモール・ジャイアンツの企業に多く見られるのが、「どん底体験」だ。スタートアップが「ゼロイチ」といわれるアイデアや開発からスタートするのに対して、中小企業は背負うものがあり、マイナスからの逆転劇が多い。その多くは親の代の古い産業や負債を背負う話だが、2000年創業の技術系ベンチャーであるオキサイドは、審査会で「生き延びていること自体が評価できるが、さらに成長していることは賞賛に値する」と評価された。

オキサイドは物質・素材系の研究者集団である。光通信分野や光計測・加工分野、医療・バイオ分野などの産業分野で基板材料として使用される「光学単結晶」の開発・製造を行うほか、単結晶を利用したデバイスやモジュール、レーザー製品の量産などを展開している。

審査会で次のような声があった。「一般的に材料系の領域は研究成果を実用化するまでに時間がかかり、多大なコストも必要なことから小規模企業には難しい」。しかも、光学単結晶は大手企業が複数参入したが、そのほとんどが撤退している。オキサイドはそうした企業から事業を譲り受けて、経験豊富な人材を吸収するとともに技術を強化してきた。

オキサイドは総合的な結晶育成ができる世界唯一の企業である。スマートフォン向けではほとんどの半導体検査装置でオキサイドの基板材料が組み込まれている。会社の事業規模は年平均20%のペースで成長しており、コロナ禍でも好調だ。データセンターやIoT、ヘルスケアなどの領域で需要増が見込まれ、現在は半導体検査装置向けで対応が追いつかない状況という。次世代通信や自動運転、量子コンピューティングなど、需要拡大が期待できる。

経営者たちが語る熱いストーリーは、10月13日15時30分スタートのイベントで!全国の「すごい会社」からどこが勝ち抜くか。グランプリを目撃しよう。

「SMALL GIANTS AWARD 2021」の詳細はこちら