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OMO時代のショッピング体験をアップデートするNo.2

オンラインで「買う→試す→売る」を楽しむ!コロナ禍でさらに多様化するコスメの消費行動

2021/07/09

あらゆる業界でオンラインシフトが急速に進み、生活者の価値観や購買プロセスにも大きな変化が起こっている今、オンラインとオフラインがシームレスにつながった新しい購買体験が求められています。

国内電通グループは2021年2月より、OMO(オンラインとオフラインの融合)時代の新たな「ショッピング体験」をデザインするプロジェクト「dentsu SX(エスエックス)」(※1)をスタート。SXという名称には「Shopping Transformation」と「Shopping Experience」の両義が込められており、これからの時代に合わせたショッピング体験を戦略・実装・運用までワンストップで支援します。

連載第2回のテーマはコスメ業界。生活者へのデプスインタビューから見えてきたインサイトを中心に、コスメ業界で起きているショッピング体験の変化と、今後取り組むべきアクションについて、dentsu SXプロジェクトメンバーの電通デジタル安田裕美子氏が解説します。

第1回:店舗とECの融合にとどまらない、未来のショッピング体験

※1 dentsu SX
国内電通グループ7社による、OMO時代に沿ったオンオフ統合の購買体験を顧客目線でデザインし、リテール領域において企業の事業成長に貢献するプロジェクト。電通グループのこれまでの事業蓄積と、戦略パートナーとして参画するfrog design inc.の知見を統合。電通独自の顧客行動データや、AIやクラウドなどの最新テクノロジーを活用し、顧客インサイトを掴むクリエイティビティと掛け合わせることで、顧客視点に立ったブランド独自のショッピング体験を創出する。(詳しくはリリースを参照

 

外出自粛や渡航制限により、苦境に立たされるコスメ業界

これまで「不況に強い」と言われてきたコスメ業界ですが、新型コロナウイルスの影響で社会活動の制限、外出自粛、生活者の価値観や消費行動の変化、訪日外国人の渡航制限などが相次ぎ、マーケットは大きな打撃を受けています。

コロナ以前からECサイトで化粧品を購入する人や、口コミサイトで比較検討する人は一定数いましたが、絶対に店舗で購入したい人、お気に入りのビューティーアドバイザー(BA)から購入する人ですら、コロナ禍でECサイトを利用せざるを得ない状況になり、消費行動は加速度的に変化しています。

この変化に応じてブランド側も、これまでオフラインで提供していたきめ細かなサービスや体験をオンラインで再現しようと試みています。その中には、肌診断アプリのように、単なるオフラインの代替サービスをオンラインで展開するのではなく、これまでにない新たな体験やワクワクする体験を提供しようとするような事例も生まれています。

一方で、「ECはECの部署、マーケティングはマーケティングの部署、店舗は営業の部署…」と従来の縦割り型セクションから脱却できないといった理由などから、オンオフを統合した新しい顧客体験を生み出すことに苦戦している組織が少なくないのも事実です。

コロナ禍でユーザーの消費行動が大きく変化したことを認識し、急速にDXを進めなければならないことは周知の事実ですが、具体的にどのような変化が起きていて、ブランド側はどのようなアクションを取るべきか、もう少し掘り下げて考える必要があります。

そこでdentsu SXは、20〜30代の女性にコスメに関する定性調査を行い、「N=1」から見えてきた生活者インサイトを、ショッピングスタイル別にセグメントしました。ここからその一部をご紹介します。

オンラインで「買う→試す→売る」のサイクルを楽しむ

 

■オンラインとオフラインの自分なりの使い分けを開拓する「パイオニア層」

この層はもともと化粧品は必ず店舗で試してから購入する傾向にありましたが、コロナ禍でECを頻繁に利用するようになり、ECへの抵抗感は徐々に薄れつつあるようです。

ECでは“ハズレ”を引くこともありますが、失敗した場合はフリマサイトで売ればいいので特に問題なし。失敗してもいいからECで購入し、そのギャンブル性や今までにない新たな商品との出会いを楽しんでいます。一方、敏感肌の方はスキンケア商品など本当に信頼性が必要な商品に関しては店舗での購入を続けているそうです。

また、ネットで情報収集をする頻度が増えたことで、今まで以上に“ステマ”が気になるようになり、口コミサイトよりも公平な意見が多いと感じるメガECモールを活用する人も。本来であれば信頼性が高く知識も豊富なBAのアドバイスを受けたいが、現状は外出自粛や臨時休業でなかなかリアルで会えないことに不満を感じているようです。

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コロナでBAとの距離が生まれ、店舗ならではの価値を喪失

■オフラインからオンラインに移行したい「オンボード待機層」

この層は、オーセンティックな百貨店ユーザーが多いため、コロナでBAと距離ができてしまったことがペインポイントになっています。最近のトレンドの一つであるBAのオンライン接客サービスに対しても「対面で会ったことがない人から紹介されても……全身の雰囲気が分かってもらえないし、肌質チェックもイマイチ」と懐疑的な意見も。

大手ECサイトの口コミをネガティブチェックに活用しながら公式サイトで購入をするケースもありますが、百貨店での購買体験とのギャップを感じているようです。

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デパコスから韓国コスメにスイッチング

■オンラインでほぼショッピング体験が完結「エコシステム層」

この層はデジタルネイティブ以降の世代が多く、コロナ以前は百貨店でデパコスを購入していましたが、コロナの影響で低価格帯の韓国コスメなどをECで購入するようになりました。

「SNSでメイクに関するトレンドを認知→YouTubeで使用感や発色を確認→口コミサイトのレビューを確認→キャンペーンを実施しているECサイトで購入」というイマドキのカスタマージャーニーを確立し、BAが担っていた部分やテスターでの試用は大量の口コミや動画に代替されています。ECで全てが完結する現状に満足している様子で、「コロナが落ち着いても値段が高いデパコスには今後戻らないと思います」と語っていた方もいました。

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「N=1」基点で浮き彫りになった、コロナ禍のペインポイント

それでは、定性調査から見えてきたコロナ禍の行動変化とペインポイント、それを解決しうるソリューションテーマを整理したいと思います。

コロナ起因の行動変化と対応策(I):オフライン購買層のオンライン移行加速に対応したオンボード促進

オンラインシフトが急速に進んだことで、従来のオフライン主体のユーザーは「店舗の楽しい体験の喪失」を感じています。また、色味や質感などは場合によってはオンラインでは十分に伝わらず、実際に試してみないと分からないという側面もあります。

このようなオフラインユーザーがオンラインにうまく移行できない、というペインに対しては、例えば肌質チェックを初回のみオフラインで行い、以降はビデオとリアルを組み合わせるといった「オンライン/オフラインの体験再設計」、肌の色味別にカラーバレットを準備するなどの、「高度な情報収集が可能なオンラインサービスの構築」などが考えられます。
 

コロナ起因の行動変化と対応策(Ⅱ):新商品トライアルハードルの低減

アイテムを店舗で試す機会が減少し、新商品に踏み切れない人が増加。踏み切って購入した場合も、失敗して使わないものが増えていくといったペインが生じています。これに関しては、小分けのお試しサービスや、air Closetのコスメ版のようなパーソナルスタイリングなど、自宅で商品を試す機会の提供、自分に合った商品を手間なく・安全に試す機会の提供が有効でしょう。
 

コロナ起因の行動変化と対応策(Ⅲ):公平な情報源不足への対応

化粧品をインターネットで検索・購入する人が増えると同時に、口コミサイトのステマ投稿も増加。すでにユーザー側もその怪しさを察知しており、より信頼性性・公平性のある情報提供が求められています。例えば信頼できる人(友達同士)のみのレビュー、購買履歴のシェア、元BAなど身近な専門家のお墨付きなどが解決策として考えられます。

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セグメントごとに、オンオフ体験のニーズは異なる

ここで押さえておきたいポイントは、定性調査からも分かるように各セグメントでショッピング体験に対するニーズは異なるため、それぞれのセグメントの特性に合わせた体験設計が必要だということ。

オンオフを駆使しながら自分ならではのジャーニーを作り、自ら意思決定を行う「パイオニア層」に対しては、知識欲や購買欲を満たすサービス、自らの嗜好や購買履歴を可視化し、第三者とスピーディに共有できるデータベースなどが支持されるでしょう。

例えば、「探す→試す→売る」をワンストップで提供するサービスや、NOINのような中立的なメイク情報コンテンツ、WEAR的なメイクコーディネートのプラットフォームなどが考えられます。
 

他社からの情報・コミュニケーションで知見を深め、体験しながら商品検討、購入を行う「オンボード待機層」に対しては、店頭接客からオンラインへのオンボーディング設計、リアルと同等の質や信頼感を持ったオンラインのパーソナライズコンシェルジュ、さらに相性の良いBAとマッチングできるようなアルゴリズムの開発、なじみのBAがECでの購買を支援するStaff Startなどのソリューションなどが必要になるでしょう。
 

デジタルネイティブに特徴的な「エコシステム層」に対しては、興味の幅が広いので、コスメ以外のエンタメも含めたエコシステムの中心となるテーマをどう創造するかが鍵になります。同じ嗜好やロイヤリティを持った人たちが集うオンオフのコミュニティ体験、熱中消費が叶えられるエンタメ性・テーマ性の高い場の提供、「推し」の仕組みづくりなどがポイントになります。
 

繰り返しになりますが、今は店舗、ECなどの顧客接点を単なる「販売チャネル」として捉える時代ではありません。顧客の課題をベースに、トータルな顧客体験を設計していく必要があるのです。

スタートアップは、オンラインサービスでつながる顧客に対し最適化されたオフラインの場を提供するなど、OMOを実現し始めています。一方、大手企業は組織の分断や従来チャネルとの関係性の優先などで顧客視点に立てていない部分があると感じています。

われわれdentsu SXが顧客課題や潜在ニーズの水先案内人となることで、組織を横断した顧客体験具現化のお手伝いができればと思っています。


dentsu SXでは、引き続きコスメ業界の最新トレンドを研究しながら、クライアントの課題とユーザーニーズに応える「ショッピング体験」を戦略・実装・運用までワンストップで支援してまいります。

企業の皆さまからのご相談やご質問も随時受け付けておりますので、興味のある方は、ぜひ公式サイトからお問い合わせください。

次回は「金融」業界における顧客体験の変化と、これから取り組むべきアクションについてご紹介します。

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