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電通×クリエイティブ×テクノロジー。dentsu prototyping hubの挑戦!No.3

クリエーティブ・テクノロジストが電通にもたらした「モメンタム」とは?

2021/11/25

本連載では、若き“デジタルクリエーティブ人材”たちによるグループ横断ワークショップ「dentsu prototyping hub(※)」を通じて、電通クリエイティブの未来を浮き彫りにしていきます。

第1回:僕たちが電通で「クリエイティブ×テクノロジー」を広める理由
第2回:デバイスやビジュアルを自在に制御。「最速のプロトタイピングツール」がクリエイティブを変える


最終回は、ワークショップ発起人の電通・斧涼之介と藤大夢、そして電通デジタル・川村健一のメンバー3人が、実施したワークショップを通じて見えてきたクリエイティブの未来と、クリエーティブ・テクノロジストが電通内で果たすべき役割について語り合います。

そこで見えたのは、クリエイティブとテクノロジーがごく当たり前に融合する未来像でした。

※ dentsu prototyping hub
“アイデアをテクノロジーで具体化する”をテーマに、コード不要のビジュアルプログラミング言語「TouchDesigner」や3DCGモデリングソフト「Blender」のワークショップを実施。これまでに電通グループから延べ300人以上が受講。

 

dentsu prototyping hub
<目次>
広告クリエイターがテクノロジーを「自分ゴト化」する意義
クリエーティブ・テクノロジストが「チームにいる」ことの強みとは?
理想と現実のギャップを埋めるチカラ、「モメンタム」

広告クリエイターがテクノロジーを「自分ゴト化」する意義

斧:今回2つのワークショップを実施してみて、2人はどう感じました?

藤:企画提案時は「10人ぐらい集まればいいかな」と思っていたけど、最初の「TouchDesigner School」から100人以上の方が参加してくださったので、「電通グループに、自主的にテクノロジーを学びたいと思っている人がこんなにいたのか」と驚きました。

川村:参加人数もだし、受講者の熱量も僕たちの想像以上でしたね。テレビCMや広告のグラフィックをつくってきた広告クリエイターは、クライアントの課題に対するアウトプットの質がとても高い。そんな人たちが、テクノロジーを用いたクリエイティブを自分ゴト化したら、いったいどんなアウトプットになるのだろう。これまでに見たことがないクリエイティブが生まれるんじゃないかと、ワクワクします。

斧:そして「TouchDesigner School」の評判が広まったおかげか、第2回の「Blender School」では受講者がさらに倍増しましたね!僕らも2回目で運営に慣れてきたし、講師のM designさんが、初心者でも理解できるようにBlenderの基本要素を丁寧に教えてくださったおかげで、3Dモデリングの世界に踏み込む入り口の講義として、かなり良いものになったのではないかと思います。実は、学んだ人たちが独学でBlenderを続けていきやすいように、今後のことまでよく工夫してくださっていて。

川村:「Blender School」は、僕も見ていて、既存のAD(アートディレクター)が入りやすい内容だと感じましたね。Blender界隈でも、M designさんのような、いわゆる“デザイン的な知識”を持っている人って希少なんです。だから広告クリエイター向けの講師として、かなり良い人選だったな、と。今はコロナ禍で、バーチャルの領域がすごく大きくなっていますよね。Blenderは電通のADたちがもともと持っていたノウハウをその領域で活用するための、大きな武器になると思います。

斧:最近、Blenderの使われ方がすごく多岐にわたっていて、映画やアニメで使っているケースもよく見るし、こういう「今、アツいツール」を皆さんとこの時期に一緒にやれて良かったなと思います(笑)。

川村:あと個人的には、電通のグループ企業からさまざまな組織やチームがワークショップに参加してくれたことが刺激になりました。今まで知らなかったXRの専門チームに出会えて、今後の仕事でも交流していきたいと思いましたし、「電通グループにこんな人たちがいたんだ」という発見は、僕だけじゃなく、受講した皆さんにもあったと思います。このワークショップが、グループ企業のいろんなクリエイティブチームの存在を知り、交わるきっかけになれば面白いな、と。

クリエーティブ・テクノロジストが「チームにいる」ことの強みとは?

斧:もともと、dentsu prototyping hubを立ち上げた背景には、「マス広告のクリエイティブでコンテやカンプといったプロトタイプを作ってきたのと同じように、テクノロジー系の企画でも体験可能なプロトタイプを誰もが提案できるようになれば、企画書では伝えきれない面白さが伝わり、素晴らしいクリエイティブが世の中にもっと増えるはず」という思いがありました。この連載でも僕や川村さんが問題提起をしてきたけど、藤はどう思う?

藤:同感です。そして思っていた以上に、今の状況に危機感を持って「変わりたい」「でもきっかけがない」と感じている人たちが電通グループにいることが分かったし、その人たちから「こういうきっかけがもらえたのがうれしい」と言ってもらえたので、そこは本当に良かったな、と。

斧:たしかに、「テクノロジーを学ぶきっかけが欲しかった」というのは、アンケートでも多かった声ですね。「Blender School」の満足度への質問にも、95%の方が「満足」と回答してくださいました。

藤:ただ、まだ始まったばかりだし、ワークショップでの学びをいかに日々の実務にフィードバックしていけるのか?というのは、今後の最大の課題だと思います。短期間ワークショップで学んで、「面白かった」だけで終わってしまってはもったいないので。今後第3回、第4回と続けていくに当たっては、中級編というか、「具体的にそれぞれの案件に落とし込んでいけるもの」もやっていかなきゃいけないと思っています。

斧:もちろん、そうですね。とはいえ、今の段階でも、例えばあるADの先輩が、「さっそくスクールで学んだことを活用して、Blenderでプロトタイプを作ってクライアントに提案したら、評判が良かった」という話を聞いて、それはうれしかったですね。あと、「人生の新しい楽しみができた!」と言ってくれる先輩もいたり(笑)。そういう話を聞くと、わずか2回のワークショップだけど、少しずつ変化は起き始めているし、電通の表現をより広げる芽が出始めているのかな、と。

藤:加えて今回、「クリエイティブ以外」の受講者も多かったですよね。「今まで専門外だから任せきりだった領域に自分が触れてみたことで、より親近感を持って取り組めるようになった」と言ってくれたプロジェクトマネージャーもいました。進行管理をするような立場の人が「作り手の気持ちが分かる」というのは大事なことなんじゃないかと。

斧:うん。一緒に仕事をするために、「共通言語」ができることに価値がある、ってことですよね。

藤:そういう意味で、受講者の皆さんにとって「テクノロジー系のクリエイティブ」が、特殊なものじゃなくて、電通の培ってきたクリエイティブの可能性を大きく拡張するものなんだということを知ってもらえる場にもなったのかな、と思っていて。

斧:確かに今回のワークショップには、そういう意識のギャップを埋めるような効果もあったかもしれないですね。それで、もともとの志としては、プロトタイプというか、少なくとも「ラフまでは作れる人」を増やしたかった。でもワークショップを実際に2回やってみた今思うのは、ゆくゆくは、「完パケまで持っていけるプレーヤー」の数を増やしていくことが、この先は大事なのかな、ということです。最近、ある案件を見てつくづく感じたんですが、「チーム内で完結できる体制じゃないと出せないもの」があるんですよね。まずはプロトタイプを作って、ブラッシュアップして、というループをチーム内で完結できないと、最後まで走りきれない案件が増えてきている気がします。

川村:それはありますね。内部だけである程度は完結できないと、そこで「試行錯誤」できないですからね。

斧:そうなんです。テクノロジー系の企画で「試行錯誤のスピード」を上げるのも、同じチームにテクノロジストがいないとできないことなんです。

藤:あと、クライアント側からしても、具体的にイメージしづらい未知の提案に「やりましょう」ってそう簡単には言えないですよね。よく分からないものに予算を使うのって普通に怖いはずだし。だからこそ、電通のチーム内で「面白い体験」をプロトタイプで作って、クライアントの不安をワクワクに変える必要があって。それは、クリエーティブ・テクノロジストの大きな役割だと思います。

斧:クリエーティブ・テクノロジストが持つ「ワクワクに変換するスキル」は、クライアントに対してはもちろんのこと、チームメンバーに対しても有効ですね。僕自身、とあるVRのプロジェクトで、企画書だけだと「それ、本当に面白いの?」という疑念がチーム内で起きていたので、VRのプロトタイプを作ってメンバーに体験してもらったんです。そしたら、みんな乗ってきて、ヘッドマウントディスプレーを着けながら「こう改善するともっと面白くなるんじゃないか?」というポジティブな反応がたくさん出てきました(笑)。「作りながら考える」ことの大切さを実感できた経験でしたね。

藤:企画の初期段階からプロトタイプで具体的な方向性をすり合わせできれば、目指すべき着地点をチーム内で共有できるし、クライアントの満足度向上にもつながりますよね。僕も競合プレゼンの提案でARのプロトタイプを持っていったところ、クライアントが感動して、予算を追加して採択してくださったこともありました。

川村:そういうケースは、きっと今後、増えていくと思います。僕も経験上、体験可能なプロトタイプを作り、会議やプレゼンの場でみんながUXを試し、企画・デザイン・開発を組み合わせていく手法がテクノロジーを活用するプロジェクトでは有効だと思います。テクノロジーを知っている人が企画段階から入っていないがために、条件にフィットしない実現可能性の低い企画を提案してしまってから慌てる、というのは、最近よく聞くあるあるですし。

藤:提案が通っていざ作ろうとした時に予算にはまらない、技術的に実現できないっていうのは、とてもつらいですからね……。クリエイティブは常に予算とのバランスをシビアに考えなければならないものなので、クリエーティブ・テクノロジストは「アウトプットを保証する」役割も担うべきなんです。必ずしもプロトタイプを作らなくても、提案段階からクリエーティブ・テクノロジストがいれば、実現可能性は判断できます。

川村:そういう意味では、クリエーティブ・テクノロジストがいろんな案件の初期段階から参加するカルチャーを育てることが、すごく大事ですよね。

藤:実際に、テクノロジー系のクリエイティブに強い会社は、クリエーティブ・テクノロジストがプロジェクトの上流から交ざり合っていますよね。これからの時代は絶対にそうあるべきだし、それができなければ、新しくて面白いものは作りにくくなると思います。

斧:その意味では、ただ単にツールを覚えてもらうだけでなく、「クリエーティブ・テクノロジストのマインドセット」も共有して、社内の意識改革的な役割を担うことも、dentsu prototyping hubの存在意義になってきた気がします。実際にいろんな人に自分の手で触れてもらうことで、「テクノロジーは、特殊なもの」というカルチャーに変化を起こせる、というか。

理想と現実のギャップを埋めるチカラ、「モメンタム」

藤:正直、「テクノロジーは、特殊なもの」と思われている状況を変えるのは難しいと思っていたんです。でも、今回のワークショップを通して、電通社内の危機意識やテクノロジーへの関心の高さを知って、考えが変わりました。dentsu prototyping hubを起点に、クリエイティブとテクノロジーが当たり前のように混ざり合う新しいカルチャーを創っていけるかもしれないな、と。

川村:先ほどの「マインドセットの共有」という考え方は重要ですね。テクノロジーはどんどん新しくなるので、インプットできる環境をいかに作り続けられるかが生命線です。テクノロジーそのものだけでなく、学び続けるためのマインドセットも含めて、dentsu prototyping hubが「学びのコミュニティ」の役割を担っていければいいですね。

斧:もちろん、僕らも運営として、受講者がクライアントに提案できるレベルのプロトタイプを作れるよう、技術的なサポートをしたいです。今後は、さっき藤の言っていた“中級編”“応用編”じゃないですが、電通が日々向き合っているような抽象的なお題を、TouchDesignerやBlenderで解決するワークショップもやってみたいですね。

藤:そこは、このワークショップに感じている一番大きい課題だからね。いかに実務にフィードバックできるか、という。

川村:いいですね!実は今日これが一番言いたかったことなのですが、今回の取り組みの最大の成果は、クリエイティブとテクノロジーに関する社内のギャップを埋める「モメンタム」を、斧さん、藤さんという若手が中心となって起こせたことです。

「モメンタム」とは、簡単に言うと「理想と現実の間にあるギャップを埋める勢い、熱量」のこと。僕はこの「モメンタム」をすごく重視しているんです。なぜなら、クリエイティブの指標をアウトプット自体に置くのではなく、アウトプットが生み出した反響や実際の効果に置くことでクリエイターの行動が変わる、と20年以上テクノロジーの世界にいて感じているからです。

テクノロジストは、アウトプット作りに集中し固執しがちです。それは決して間違いではないのですが、超絶技巧だけで世の中を圧倒するためには相当な経験と時間が必要です。でも、考え方一つ、行動一つで自分たちの今の立場や力量を超えた「モメンタム」がつくれるんですよね。それを2人はdentsu prototyping hubで実現している。

電通でも珍しい、グループ横断のワークショップが、現場の若手主導で発生したことには、とても大きな価値があると考えています。そんなことができたのは、「理想と現実のギャップを埋めるために何かしなくちゃいけない」という、クリエイティブ×テクノロジー人材ならではの熱意とアクションの結果、と言えるでしょう。そして、その行動が電通のクリエイターの心に響いたからこそ、多くの方が参加してくれたのだろうなって、すごく感動しています。

斧:クリエーティブ・テクノロジストの大先輩の川村さんにそうおっしゃっていただけると、めちゃくちゃ励みになります……。

川村:電通はマス広告の歴史が長く、テクノロジストのカルチャーはこれから養われていくものだと考えています。だからこそ、2人のように「自分が切り開いてやるんだ」という感覚が大事なのです。こういうマインドで取り組むと、いろいろな領域で仕掛けるのがきっと楽しくなりますよ(笑)。

始めたきっかけは第1回で斧さんが書いてくれた通りですが、dentsu prototyping hubはそれ以上の、2人の想像を超えた「モメンタム」を電通にもたらしたと思います。電通のクリエイターがテクノロジーの視点を養う場になっているし、世の中ゴトになりそうなプロジェクトを仕掛けていくための「ハブ」にもなっていくでしょう。それはまさに、新しいクリエイティブが生まれる「流れ」になっていくんだと思う。

電通には素晴らしいクリエイターがたくさんいるから、どんどん新しいツールを試し、アイデアや思いを素早くカタチにしちゃえばよいのです。固定観念や今あるフィールドに縛られる必要はありません。今の自分とアイデア、そして仲間を信じて、楽しみながらメッセージを発信していく。そうすれば、誰もがワクワクするような「モメンタム」を今まで以上にたくさん作れると確信しています。

斧 : dentsu prototyping hubの活動を通じて、これまで電通が培ってきたクリエイティブに、「テクノロジー」という武器が掛け合わされると、世界をあっと驚かせる新しいクリエイティブが生まれていくと信じています。僕らから動いていくことで、面白いクリエイティブを作る仲間をこれからもっと増やしていきたいです。

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