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日本発、宇宙ベンチャーの挑戦No.7

前澤友作さんのマネジャー、民間人飛行士として宇宙に行く。

2021/12/22

前澤氏平野氏の打ち上げ

スタートトゥデイ代表取締役の前澤友作さんと関連企業役員の平野陽三さんが12月8日(日本時間)、ついに「民間人飛行士」として宇宙へと飛び立ちました。2人を乗せたソユーズ宇宙船「MS-20」は無事、打ち上げに成功しISS(国際宇宙ステーション)に到着。2人は約12日間を日本の民間人として初めてISSで過ごし、12月20日に無事、地球へと帰還しました。

宇宙編集部の特別連載「平野陽三、宇宙へ行く。」にて、民間人飛行士としての日々の生活を2カ月以上も書き続ける平野陽三さん。前澤友作さんのマネジャーであり、宇宙プロジェクトを推進する「スペーストゥデイ社」のプロデューサーでもある平野さん。いろいろあって宇宙に行くことになってしまった平野さん。そんな平野さんに、ロケット打ち上げ4日前の12月4日に、打ち上げ前の隔離生活をおくるカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から遠隔でインタビューをすることができました。

「民間人飛行士」になるまでの訓練の様子から、打ち上げ前のリアルな気持ちまで、ソリューションクリエーションセンターの笹川真がお話を伺いました。

日記に書かれた、リアルな民間人飛行士訓練

笹川:打ち上げ、4日後ですね。想像以上に落ち着かれているように見えますが、もうやることやったぞ!という心境ですか?

平野:やることはもっとあっただろうと思うんですけど、今からやれることも多くはないんで。

笹川:宇宙編集部の「平野陽三、宇宙へ行く。」、読んでました。自分がプレゼンしていた前澤さんや平野さんが登場するので、感情移入しすぎて客観的に見れていないかもしれませんが、立花隆の「宇宙からの帰還」に負けないくらい、面白い民間人飛行士の文章だと思います。

平野:ありがとうございます。

前澤氏と平野氏
宇宙を編集する情報サイト「宇宙編集部」の中で、平野氏が図らずも(?)宇宙を目指すことになったその記録を、9月12日からほぼ毎日更新している連載日記「平野陽三、宇宙へ行く」。宇宙で使うサングラスはショッピングセンターの隅っこにあるアイクリニックで長年つくられている、というようなトリビアや、どのような訓練が行われているかがディテールまで詳細に書かれている。

笹川:最近はどんな感じなんですか?

平野:厳しいトレーニングはなくなりました。フィジカルトレーニングは心地いいぐらい体を動かす、そんな程度。1日30分から1時間のおさらいの講義。大事な箇所だけですね。打ち上げの時の順序だったり、地球に帰ってきて不時着した場合のレスキューチームがどう動くかを実際の現場の人たちと話したり、とか。11月19日にバイコヌールに入ってから、結構ずっとこんな感じですね。

笹川:民間人飛行士はずっと隔離されているんですよね。今はバイコヌールのコスモノートホテルに滞在でしたっけ?

平野:そうですね。回転椅子だったり、ティルトテーブルっていうひっくり返されるシーソーみたいな椅子だったり、あとは、コマンダー(船長)が宇宙船とISSを手動でつなぐマニュアルドッキングの練習をするシステムだったりとか。宇宙飛行士のトレーニング用に改良されたホテルです。

笹川:連載日記でめちゃくちゃ嫌いと書かれていた回転椅子は、モスクワでは平野さんが5分、前澤さんが7分の記録でしたが、民間人飛行士の基準となる10分はクリアできましたか?

回転椅子の様子
(宇宙編集部「平野陽三、宇宙へ行く。」より抜粋)回転台のついた椅子に座り、体に計測装置を付けられ、目をつむってぐるぐると高速回転させられる。普通に回っているだけでも気持ち悪いのに、リズムに合わせて首を左右に傾ける運動を繰り返し続けないといけない。すると、1〜2分したところで普通に生きている限りは体感したことのない世界に突入する。水平に回っているはずなのに、体がブランコやゴンドラに乗っているかのように前後に大きく揺れている感覚に襲われる。その大きな波から振り落とされてしまうと、もう左右上下がめちゃくちゃに回転するトルネードの世界に放り込まれる。そうなってしまったらもう終わり。すぐに吐き気が襲ってきて、吐くまで続けるか、そこでリタイアすることになる。

平野:バイコヌールで10分を無事クリアしました。慣れるには慣れるんですけど、回転椅子だけはいまも気持ち悪いです。

笹川:低酸素トレーニングって、どうなんですか? 

平野:あれは座って息をするだけ。人によると思うんですけど、ダイビングの酸素ボンベがつらい人、苦手な人、いるじゃないですか?そういう人は少ししんどいけど、そうでなければ、ちょっと薄い空気を吸うぐらいの訓練。ちょっと眠くなりますけどね。

笹川:眠くなるといえば、狭いソユーズ宇宙船の中で大人3人がぎゅうぎゅうに収まっている体勢をとっていると、とてつもない睡魔が襲ってくる、と日記連載にあったのですが、あれは平野さんだけじゃなくて、全ての宇宙飛行士がそうなるんですか?

平野:みんながなるといいますね。でも、真ん中に座ってるコマンダーはずっとやることがあるので、終始、動いてるんですよ。なので、コマンダーは寝ることは絶対にできないと思いますけど。待ってる時間が多い僕は毎日、睡魔との闘いでした。 

打ち上げまでの流れ
連載日記をもとにした日本出発から打ち上げまでの流れ

笹川:連載日記には、フィジカルトレーニング、不時着時想定のサバイバル訓練、ZERO-Gフライト訓練、回転椅子、低酸素トレーニング、ソユーズシミュレーターでの実戦訓練などなど、貴重な写真込みで、訓練も細かく書かれてますよね。中でも、何が大変でしたか?

平野:最終試験にISS編とソユーズ編があったのですが、その2つは全部実技なのですが、あれだけ反復したら誰でも覚えられるだろうっていうぐらい毎日やってたので、ランスルーも事前にやれていたし、実技で落ちることは想像してなかったです。

それよりも、計4回、口頭の質疑応答ですね。英語でやるんですけど、コミッションっていわれる偉い人たちがエネルギアやロスコスモスから来て、GCTC(ガガーリン宇宙飛行士訓練センター)のインストラクターが教えたことをわかっているか否かを確認するのですが、質問も返答も英語なので、それは受験勉強に近かったかも。前日は夜遅くまで、前澤とプロジェクトチームの小木曽と一緒に勉強しました。

でも、しんどい、難しいと思うことは絶対あったはずなんですけど、終わるとすぐ忘れちゃって、楽しかった記憶の方が今は多いのが不思議です。

前澤氏 平野氏 訓練の様子

民間人飛行士だからこその宇宙企画

前澤氏 宇宙企画

笹川:平野さんも訓練しながら企画に関わっていた、12歳未満のお子さまを含んでいることが応募条件の「ロケット打ち上げ見学ツアー無料ご招待」企画は、初日で8000組もの応募があった、と日記の中でも出てきました。

平野:実は、わずか2日間の募集期間でしたが、1万数千組ものご応募をいただきました。

笹川:そこから1組。選ぶのが大変な作業ですね。

平野:必ずお子さまを連れていくという条件で、しかもコロナの状況、応募期間も告知からわずか2日間。良くても数千、と予測していたんですが、こんなにいるんだ?と驚きました。子どもと一緒にロケットを見たい、子どもに見せてあげたい親御さんが1万数千組。宇宙の引力の強さを感じた瞬間でした。

笹川:すごいなあ。当たった方、ラッキーですね。

平野:運がよかったっていうよりは、熱意が1等賞の方です。応募フォームに、なぜ行きたいのか、動画も、写真も、送っていただいて。リモートで面談もして。僕は出れていないんですが他の運営スタッフが話した上で決定しました。親御さんだけじゃなくて、子どもたちが本当に宇宙大好きで、ロケットが見たい。それがピュアに伝わった1組のご家族を選ばせていただきました。

笹川:5月に募集した「前澤友作に宇宙でやってほしい100のこと」は、ISSに約12日間の滞在でどれぐらいできそうですか?

平野:今のところは、100個全部、やり切ろうという意気込みです。映像的に面白いシーンが撮れるかどうかは別として、やろうって決めて募集もさせていただきました。どういう仕上がりになってもいいので、全部やり切る準備はしています。

ロケット打ち上げ4日前。今のリアルな気持ち

笹川:前澤さん、平野さんとISSに行くコマンダーのアレクサンダー・ミシュルキン飛行士、とても立派な方に見えます。平野さんはサシャと呼んでいますね。

平野:ジェントルマンです。彼が新米宇宙飛行士だった頃にJAXAの訓練で筑波を訪れた時、宇宙飛行士の若田光一さんに良くしてもらったそうで、10年以上の時を経て、僕らのコマンダーを務めることで恩返しできる、と話してくれたのには、胸を打たれました。若田さんに感謝です。

笹川:すてきな話ですね。サシャ、前澤さん、平野さんのオフィシャルポートレート、いいですよね!

前澤氏 平野氏 オフィシャルポートレート
(左から)平野陽三氏、アレクサンダー・ミシュルキン氏、前澤友作氏

平野:そうそう。オフィシャルであれが通ってよかったって、今見ても思いますね。宇宙飛行士の写真というと、どこか厳かな雰囲気の写真が多いと思うのですが、数年たっていろんな人が見たときに、この回のクルーは楽しそうだね、みたいな感じになると思うんで、よかったなあと思います。

笹川:12月8日の打ち上げは日本時間でいうと、16時38分とか、結構細かく刻んでますよね?

平野:そうなんですよ。もう、秒数まで決まっていました。

笹川:ISSに乗り込む時のハッチオープンも、手伝ったりするんですよね?

平野:いや、ハッチオープンは、サシャ1人で頑張りますよ。僕は、左右にしかない機材もあるので、そこのスイッチをオン・オフしたり、下の帰還モジュールから生活モジュールへ移動するときに湿気を凝結させて、つまり、湿気取りするとか。単純作業ではありますけど、ちゃんと気圧を上と下あわせて、気圧差がないことをきちんと確認できたら、サシャがグイッとハンドルを回してハッチを開けます。

笹川:ハッチオープンの動きは何回も繰り返して、頭にたたき込まれているんですよね?

平野:ですね。ただ、必ずサシャが一声かけないと僕らは動いちゃいけないんで、サシャが覚えていれば間違いありません(笑)。

笹川:改めて振り返って、連載日記の中で特に印象に残っているシーンを教えてもらえますか?

平野:日記を書いた中で一番思い出すシーンは、訓練初期の5日目くらい、Crew-3 MissionでISSへと先に飛び立ったNASAの4人の宇宙飛行士に会った日です。「宇宙に行って成し遂げたい一番の目標は?」という彼らの簡単な問いにもうまく答えられず、自己嫌悪が押し寄せてしまって。

あの日、ホテルに戻ってみんなの前で本当に泣いちゃって。大人になって泣くなんてこと、ないじゃないですか?宇宙に行くっていうことが決まって、ドキドキ、ワクワク、不安も感じながらも、まあどうにかなるだろうと、ぜんぜん決意が足りないまま気軽にここまで来ちゃったなっていうのを、NASAの宇宙飛行士を介してようやく理解できた。このままじゃ駄目だって、このままじゃ宇宙に行くのが失礼だって。

笹川:ロシアでの訓練後の、サウナでの出来事も印象に残ってます。ISSにまだ行くことができない、けれどひたむきに訓練を続ける宇宙飛行士との会話を通じて、折にふれ、平野さんが彼らと自分の境遇を照らし合わせて内省するシーンに胸を打たれました。

平野氏

笹川:打ち上げまであと4日。今はどんな心境ですか?

平野:そんなに吹っ切れたわけではないですね。「自分でいいのか?」と常に今も思っていて、これは、言うべきかわかんないんですけど、宇宙に民間の時代が来るっていう、宇宙の民主化みたいなキーワードがあると思うんですけど、やっぱり、金額的にも物理的にもまだまだすぐには難しいと感じますし、僕はたまたま前澤の横にくっついていて、たまたま連れてってもらえることになりましたけど、普通に考えると、すぐには誰もが宇宙に行ける時代は難しいだろうと、訓練を通じてさらに思うようになり、そんな気軽に行っていいところじゃないという気持ちが強くなりました。

ここのところ毎日、前澤とは「もう1週間切ったね」とか、昨日も「残り5日だよ、やばくない?」みたいな話はもちろんするんですけど、自分で行くことを決めて、自分でお金を払って、自分でこの道を開拓した前澤と、嵐に巻き込まれてここまできてしまった僕とは、同じ目的地を目指しますが、いま感じてることは全く違うんだろうと思います。

笹川:3日前、2日前、打ち上げ当日の心境は、「平野陽三、宇宙へ行く。」での平野さんの文章を楽しみにしてます!少し気が早いのですが、ISSから地球に戻ってきて発見されたあとはどこに行くんですか?

平野:発見されると、その日のうちにカザフスタンの空港に救助ヘリで向かい、その日のうちにモスクワ近郊のGCTCに戻ります。ISSに約12日間という短期滞在なんで、体におかしなところがないかというチェックをやって、大丈夫と診断されれば、おそらく数日で出られると思います。

笹川:ということは、年末年始は日本に帰れる感じですね?

平野:はい。年越しは日本だと思います。

笹川:無事に地球に帰還されたら、またぜひお話を聞かせてください。

平野:ぜひぜひ。ゆるくお話ししましょう。

笹川:平野さん、良い旅を。お気をつけて。


宇宙編集部の特別連載「平野陽三、宇宙へ行く。」はこちら

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