若者から見える半歩先の未来No.2
キャンパスライフは “コース型” から “ビュッフェ型” へ!?
2022/03/08
次に来る “キャンパスライフ” のかたちを探る
電通若者研究部(以下、電通ワカモン)は、Z世代の学生と「ツギクル」ワークショップを実施。「次に来る○○のかたち」というテーマで大学生のリポートをもとに仮説の構築をしています(前回記事はこちら)。
今回はテーマとして「次に来る“キャンパスライフ”のかたち」を設定。昨今の状況も踏まえながら、大学生にとってのキャンパスライフがどう変化していくのかを探っていきます。
共創プラットフォーム「βutterfly」
Z世代の学生と企業による新しい形の産学連携型プロジェクト。Z世代の、既成概念にとらわれない視点と、電通ワカモンのプランニングやナレッジを掛け合わせることで、新規サービス開発・プロダクト開発・組織開発・広告表現開発など、さまざまな領域でコラボレーションを展開しています。「βutterfly」では、毎月、現役の大学生と電通ワカモンのメンバーで、「ツギクル」ワークショップを実施。「次に来る“イベント”のかたち」「次に来る“健康”のかたち」など毎月テーマを設定し、大学生から提出していただいたリポートをもとにディスカッションしながら、テーマごとに未来仮説を構築しています。
「ほぼ毎日登校している大学生」は「ほぼ毎日授業を受けている大学生」の約半数!!
仮説の構築に入る前に、まず、現在の大学生を取り巻く環境について調査を行いました。「サークルアップ(CircleApp)」という大学サークル専用のコミュニケーションアプリを用いて、大学生203人を対象に、大学生活に関するウェブアンケートを実施(2022年1月)したところ、以下の回答が得られました。
「平日は大学の授業をほぼ毎日受けている」と回答した大学生が45%程度である一方、「平日は大学にほぼ毎日通っている」と回答した大学生は22%程度で、ほぼ毎日授業を受けている大学生のおよそ半分の値です。
オンライン授業と対面授業の比率に関する質問については、6割程度が「オンライン授業の方が多い」と回答し、「対面授業の方が多い」という回答が3割程度であったことから、2022年1月現在ではオンライン授業の割合が高いことが分かります。このように、大学に通う頻度の少ない生活を送っている大学生が、「次に来る“キャンパスライフ”のかたち」についてどのように考えたのかを見ていきましょう。
キャンパスライフは “コース型” から “ビュッフェ型” へ?!
ツギクル「キャンパスライフのカタチ」のワークショップを通じて、以下の印象的なワークシートが学生たちからあがってきました。
【ワークシートの概要】
オンライン授業が主流になることで通学する必要がなくなり、自分の所属大学以外の遠く離れた大学の授業も容易に受けられる環境になった。今後は、所属大学や専攻以外の興味のある分野の学問をオンラインで学ぶ機会が増え、複数の大学の授業を受けることが一般的になってくるかも。
【ワークシートの概要】
大学に行けずサークルも授業もオンラインで実施されるという状況は、まるで大学がオンラインコンテンツサービスになったよう。今後は、1カ月や1授業単位、図書館利用の有無などに応じ、ひとりひとりが自分でプランを選んで費用を支払うサブスク型の大学生活になっていくかも。
私は、これらのワークシートを読み解き、「次に来る“キャンパスライフ”のかたち」の未来仮説をまとめる上で2つのポイントがあると考えました。
1つ目は、「時間と場所の制約なく学びたいことを学べるようになった」というポジティブな側面です。オンライン授業が一般的になることにより、従来の大学生の学び方に縛られることがなくなりつつあります。例えば、ワークシートにあるように、自分が所属する大学以外の大学で学ぶことも選択肢に入ってくるかもしれません。また、通学時間が節約できて、生活の自由度が高まることも期待できそうです。このポイントについて、上述したサークルアップによる調査で大学生へアンケートしてみたところ、大学の授業における時間や場所の制約が減ったことへのポジティブな反応がうかがえました。
2つ目は、「大学が授業のみを提供するサービスになった」という点です。実際の大学生のややネガティブな声を参照すると、「キャンパスにも行けず、サークルも思うようにリアル開催しにくい中で、授業だけがオンライン中心に実施されていて授業料を払っている」という状況で、大学が “授業提供サービス化” しつつある、と言えそうです。こちらに関しても、サークルアップによる調査で定量的に確認したところ、7割以上の大学生が「大学という“場所”の提供価値が減った」「大学の役割は“授業を提供するだけのサービス”という傾向が強まった」と回答しました。
学歴やファーストキャリアが全てではなくなり、固有スキルを身につけておくことの重要性が突きつけられている昨今、オンライン授業の標準化という環境変化が追い風となり、大学に対して求める役割も「スキルを学ぶための効率よいサービスのひとつ」という意識が強くなっていくかもしれません。
以上、「時間と場所の制約なく学びたいことを学べるようになった」「大学が授業のみを提供するサービスになった」という2つのポイントを踏まえると、「次に来る“キャンパスライフ”のかたち」は、「コース型からビュッフェ型へ」と言えるのではないでしょうか。
これまでは、「所属大学に行って授業に出席し、空きコマを上手に過ごして夕方に帰宅。学部生ならそれを約4年間」といった、所属大学での生活ルーティンを軸とした(料理の「コース」のようなある程度決められた)過ごし方が一般的でした。しかし、今後は、自分のやりたいこと、自分に合ったやり方を軸としてカスタマイズして組み立てる(その際、大学の授業は選択肢のひとつにすぎない)ような「ビュッフェ型」の過ごし方が増えてくるかもしれません。
大学入学時からの長期インターンが増えてくるかも?
では、「コース型からビュッフェ型へ」とキャンパスライフが変わることで、どのようなビジネスチャンスが生まれてくるのかを少し考えてみましょう。
まず、大学視点で考えると、授業1コマごとにオンライン授業として有償提供するようなプランや、オンライン授業参加のみを可能とする“オンライン在学生”という立ち位置の学生枠を用意することによって、より多くの人に授業を提供することが可能になります。
その場合、いま学生の人だけでなく、ビジネスパーソンなどの社会人層にも需要があることでしょう。どなたでも利用可能としてもよいですし、大学OBや近隣の対象大学在籍の学生に限定して提供するという、大学ブランドを配慮したやり方もあると思います。
企業視点で考えると、スキルや資格を獲得するための商品・サービスにおいて大学生向けプランの需要が高まる可能性や、大学入学時からの長期インターンがスタンダードになっていく可能性があります。また、本来味わえるはずだった大学の仲間との交流や時間を失っている分、“コミュニティ”という要素を押さえたサービスを提供することも彼らを動かすポイントになり得るかもしれません。
今回は「次に来る“キャンパスライフ”のかたちを探る」というテーマで、今後のキャンパスライフの変化に焦点を当てました。次回の「ツギクル」もお楽しみに。