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DENTSU DESIRE DESIGNが考える、「欲望理論」からのマーケティング再構築No.2

心が動く消費体験から読み解く!消費者の「欲望変容」って?

2022/03/15

本連載では、電通の新たな消費者研究プロジェクト「DENTSU DESIRE DESIGN(電通デザイアデザイン:略称DDD)」メンバーが、「欲望」を起点とした消費者インサイトへのアプローチ方法と今後の展開について紹介していきます。

「消費=購買」とはそもそもどういうこと?消費体験と欲望の関係を知ろう

前回、「“現代の欲望理論”をひもといていきたいと思います」と予告をしましたが、“現代の欲望理論”は次回に持ち越して、今回は消費体験から「欲望(Desire)」をひもといていきたいと思います。

一般に「消費」とは、

何らかの欲望や欲求を満足させるために消費財やサービスを購入したり、消費する行為

と定義されます。商品の購入やサービス体験を通じて、私たちは衣食住などの生存欲求や数々のニーズを満たしているわけです。

欲望やニーズの発露は基本的には個人や家計単位として生じますが、これが集団的な動きや新たな傾向として確認できれば、それは「社会現象」や「消費トレンド」として読み解くことが可能になります。

また、消費は経済学、社会学的視点だけでなく、生活者の心理変容として読み解くことも可能でしょう。あるいは人間行動をデザインする行動経済学的な側面から消費を解読することも、近年注目されるアプローチです。

こうした多様な軸に基づき、欲望の発露のひとつである「消費=購買」に焦点を当て、その内実を深掘りしようと企んでいるのが、DDDの「コストベネフィットチーム」です(DDDには、それぞれ別のテーマを持つ6つのチームが存在します )。

現在の世の中はモノがあふれる一方でモノが売れない、いわば「欲望の総量が低い時代」であると言えます。「消費=購買行動前後の心理変容」を読み解いていくことで、消費を起点とした新たな消費活性の道が見えてくるかもしれません。

……そうした意識に基づきつつ、今回お話しするのは、DDDによる定点観測調査「心が動く消費調査」(2021年9月実施)(※調査の全体概要についてはプレスリリースをご覧ください)をベースにした購買前後の生活者の心の動きについてです。

「商品の購入前後」にどんな心理変容が起こっているのか?

一般にモノやサービスを購入しようとする際、購入判断の前後には心理変化が生じます。一連の購入判断の前後の心理変容の動きをチャート化したものが図表1です。このモデルに沿って、購買体験の流れを説明しましょう。

購入判断のABCEDF心理変容モデル


例えば商品を購入する前、「この商品は価格に見合ったものか」「この商品を買って、私の生活がどのように変わるか」「自分の懐具合に対してこの商品は高すぎないか」など、商品が与えてくれるベネフィット(利益、便益)とコストの比較・葛藤が行われます(図表1の❶)。

ベネフィットは、「合理化」「利便性」といった機能的価値の場合もあれば、「気分がいい」「自慢できる」など情緒的価値の場合もあります。

一方、コストの多くは対価(支払い金額)でしょうが、サービス享受に関わる時間コストや手に入れるための労力などもコストとして考えられます。また、商品ジャンルによって期待されるベネフィットやコストは異なるかもしれません。

商品選びは、ある一つの商品だけを買うか買わないか悩む場合もあれば、類似商品と比較の上、決定する場合もあるでしょう。その比較する時間は、短時間決定の場合もあれば、悩み続けて購入に至るケースもあるでしょう。また、一連の判断に男女別、年代別、商品別の傾向があるかもしれません。(図表1の❷)

このような各種の判断を経て、人は商品購入を行いますが、購買体験はそれで完結するわけではありません。商品購買後の満足感、つまりカスタマー・サティスファクションの結果が、次回以降の購買に対する判断基準を新たに書き換えていくことになるわけです。(図表1の❸)

加えて、「広告」「キャンペーン」「友人のSNSへの書き込み」といった外部から流入してくる情報が、購入判断の心理モデルに一定の効果や影響を与えることにも留意すべきでしょう。(図表1の❹)

上図のモデルに基づきながら、実際の調査結果をご紹介していきたいと思います。

6割の人は“即座に”商品購入を判断していた!

まず、人は実際に商品を購入する際、どのくらいの時間をかけて判断しているのでしょうか?

調査の結果、明らかになったのは、おおむね6割(61.2%)の人は「ほぼ即座に」購入を判断しているということです(図表2)。

購入決定に至る判断時間

これに「数日で判断」する25.9%を加えれば、実に8割もの人が、「さあ、商品を買おう」と思いついてから、当日もしくは数日内に商品購入を果たしているのです。

これを供給側(メーカー)の立場から考えると、短時間・短期間でのコミュニケーション設計が極めて重要という示唆が得られます。

「ほぼ即座に」が6割ということは、カスタマージャーニーを描く際にも、ジャーニーの最終部分に当たる、

  • オフラインなら店頭施策
  • オンラインなら最終決済前のコミュニケーション動線設計

が重要だと言えるでしょう。

加えて今回の調査では、年齢が上がるほど「即座に判断」の傾向は高くなることがわかりました。年齢を重ねるほど購買体験も蓄積されるので、過去の経験則から判断時間が短くなるということなのでしょう。


同じく6割は“比較検討せずに”商品を購入

次に「購入の際に、購買商品と比較する商品があったかどうか」については、これも6割前後の人が「比較検討をせずに商品を購入した」と答えています。

男女年代別で見ると、比較検討なしで選ぶのは、男性よりも女性のほうが若干高い傾向がうかがえます。比較検討期間が長いのは20~30代の若年層、とりわけ男性層が長い時間検討しており、数週間〜数ヶ月悩んで購入する層が多くなります。そして年齢が高くなるほど、即座に購入を判断する傾向が高まるという結果が出ています。

これも、購買経験の多寡が、購買の判断の検討時間として現れているのではないでしょうか。つまり「多数の購買経験」が、迅速な判断を可能とさせていると考えられます。

男女年代別購入検討比較時間


商品ジャンルによって異なる購入判断までの期間

購入判断に関わる時間や比較の有無は、商品ジャンルによって異なるのでしょうか?それを簡単に図示したものが図表4です。

 商品ジャンル別に見た購入判断期間

「食材」「外食」などの食分野、「雑誌・漫画」「映画」「ゲーム」「コンサート」などの教養・エンターテインメント分野は、さほど他条件と比較せず、短時間で判断する商品・サービス群です。

即時消費性の高い商品属性(食)、もしくは趣味性・個別性が高い商品属性(エンターテインメント)といった特徴が、即時判断を求めているのだと言えるでしょう。

一方、他の商品との比較を行いながら、即日もしくは数日間検討し、購入に至る商品ジャンルとしては「ファッション」「化粧品」「家電」「食器」などの身の回り品が中心です。

中でも最も長期間(数週間/数カ月)悩んで購入する商品ジャンルは「バッグ」です。おそらくこれは、いわゆる輸入ブランドなどのバッグを指しているものと思われます。

購入判断に寄与するベネフィット、ベスト3は、「お手頃・納得価格」「品質の良さ」「ブランドの信頼性」

男女年代別購入判断基準
商品購入の際、どのようなことをベネフィットであると感じて購入判断しているのでしょうか?上位10項目を男女年代別に見たものが図表5です。

全体では、購入判断のベスト3は「お手頃・納得価格」「品質の良さ」「ブランドの信頼性」です。ただし、男女、年代によって、優劣には多少の傾向がうかがえます。

まず、ベスト3の「お手頃・納得価格」「品質の良さ」「ブランドの信頼性」は、いずれも年齢が上がるほど重視する傾向が高くなります。

一方で、「デザインや見た目重視(男性)」や「ずっと憧れていた」は、若年のほうが高く、年齢と共に低くなります。

こうした男女差、年齢差によってベネフィットの期待値が異なる点も注目ポイントです。

購入判断をためらう理由の第1位は「無駄遣い懸念」

一方、購入をためらう理由として最も高いのは、男女ともに「無駄遣いに対する懸念」です。次いで、「価格が納得いかない」「似たようなものをすでに持っている」「入手までに時間がかかる」などが上がっています。

全般的に、女性のほうが「無駄遣い懸念」を表明するパーセンテージが高く、一方で「価格が納得いかない」は男性のほうが高い数値となっています。

また「似たようなものをすでに持っている」は、高年齢になるほど高くなる傾向がうかがえます。

男女年代別購入判断基準
 
そして当然のことながら、こうした判断決定のポイントや迷うポイントは、対象商品ジャンルによっても異なります。今回は紙面の都合で詳細の説明は省きますが、ご興味のある方はお問い合わせください。

【お問い合わせ先】
DENTSU DESIRE DESIGN(電通デザイアデザイン)
ddd-project@dentsu.co.jp

【調査概要】
タイトル:電通「心が動く消費調査」
調査目的:変化し続ける社会環境により、可視化されにくくなりつつある消費者意識を消費者の欲望視点から分析し、今後の日本の消費社会を読み解く 
対象エリア:日本全国 
対象者条件:20~74歳 
サンプル数:3000サンプル(20〜70代の6区分、男女2区分の人口構成比に応じて割り付け)
調査手法:インターネット調査
調査期間:第1回調査 2021年9月3日(金)~6日(月) 
調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト

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