loading...

電通報ビジネスにもっとアイデアを。

NRF2024 ~リテール・コマース領域の最新&最前線レポートNo.2

リテーラーが再認識した“ブランディング”の重要性

2024/03/07

今年で113年の歴史を誇る流通小売分野における世界最大のコンベンション「NRF 2024: Retail’s Big Show」。2024年のキーワードは、「Begin with Brands」「Start with Stores」「Play with People」の3つ。これまでの流通小売業やマーケティングが、どう変わるのか?現地に赴いたからこそわかる最新トピックスや潮流を、電通で流通小売業のBX・DX支援を行う木村 仁昭氏がレポート形式でお送りします。

※この記事はAdverTimes.(アドタイ)の記事をもとに作成しています。
 
<目次>
アフターコロナにやってきた、大きなパラダイムシフト

Begin with Brands~メーカー、ブランドの復権

NRFに見る、“リテール・アジェンダ”の変遷

 


アフターコロナにやってきた、大きなパラダイムシフト

完全なる“コロナ明け”の米国はニューヨークにて、1月14日~16日の会期で行われたNRF2024。今年で113年目を迎える当該コンベンションは、ポストコロナ時代の到来を告げるべく、従来とは異なる大きなパラダイムシフトが見られました。

このレポートでは、そのパラダイムシフトを裏付けるものとして、NRF2024で実施された3日間のキーノートセッションを振り返るかたちでひもといていきます。その年のマーケティング・プロモーション(アド含む)トレンドに最も影響を与える“ビジネス・コンテクスト”を、当該領域で活躍される皆さまにお届けすることで、日本の厳しい消費・生活社会環境を打破する一助となれば幸いです。

Begin with Brands~メーカー、ブランドの復権

NRF2024から垣間見られた1つ目のキーワードは「Begin with Brands」。つまり、「買い物行動は、オンラインでもオフラインでも、モノであれサービスであれ、顧客が買いたいブランドがあってこそ生まれる」ということです。
初日の目玉キーノートは、LEVI’Sの新CEO就任が予定されているミシェル・ガスと、NRFエンブレムが刺しゅうされたカスタムメイドのジージャン姿が印象的なマシュー・シェイ会頭のクロストークで幕を開けました。

image
リーバイス(CEO:ミシェル・ガス)×NRF(会頭:マシュー・シェイ)のクロストークの様子

LEVI’Sは直営店にてパーソナライズ&カスタムメイドが可能な、TAILOR SHOPというサービスを数年前から推進していますが、それを登壇の場でメーカーではなく、コンシューマーの立場で明示したわけです。

image
リーバイス直営店@Times Square

昨年までの慣例で言うと、オープニングトークをメーカー・ブランドのトップが務めることは非常にまれで、ここにも大きな潮流変化を感じたのは私だけではないと思います。

ミシェルCEOは、私が初めてNRF2020の現地に訪れた当時には、米国中堅百貨店チェーンの Kohl’sを率いていました。それだけではなく、エイジングしたリテールブランドを活性化し、若年層を取り込むため、Amazon ECでの購入アイテムを、実店舗で返品できる仕組みを実現した立役者でもあります。日本で考えてみると、競合関係にあるKohl’sとAmazonの2企業間での異業種連携は、とても考えづらいことです。

image
Kohl’s店内。Amazon EC返品や、Shop in Shop(セフォラ)のBOPISカウンターの様子。

そんな業績を残してきたミシェル氏が自身のキーノート中で挙げたことは、市場と顧客に、よりスピーディかつ柔軟に対応するための5つのポイントでした。アグレッシブなブランド活性化施策を流通小売業においても断行した彼女だからこそ、立場が変わった今日でも言及できることだと感じます。

<5つのポイント>
① the power of branding(ブランディングの力)
② being hyper-focused on the consumer(消費者重視)
③ brand innovation(ブランド・イノベーション)
④ thinking like an omnichannel retailer(小売企業のように考える)
⑤ the importance of purpose and value(パーパスと価値の重要性)

NRFに見る、“リテール・アジェンダ”の変遷

ミシェル氏が述べた5つのポイントの中で、特に強調されたことはブランドとそれを支えるパーパスの重要性でした。つまり、記事冒頭に述べた「買い物行動は、オンラインでもオフラインでも、モノであれサービスであれ、顧客が買いたいブランドがあってこそ生まれる」ということを、これからの時代は、メーカーだけでなくリテーラーサイドも今以上に重視する必要があるという姿勢を鮮明にしたのです。

NRFには毎年、並み居るリテーラーや著名スピーカーがひしめいています。その会期初日の先陣を切って、リテーラーからメーカートップへと転身を遂げた彼女自身から、170年の歴史を誇るLEVI’Sという世界的アイコニックブランドの未来が語られたこと。それをリテーラーサイドの聴衆が納得感をもって聞き入っていたことからも、当該アジェンダへの関心の高さがうかがえました。

ここまで述べてきたように、2024年のNRFはリテール出身のメーカー企業トップのキーノートから幕を開けました。過去7年間、NRFを定点観測してきた私にとっても珍しく感じるスタートです。

初回の記事でもご紹介しましたが、NRFではどのような主張がされてきたか、私なりにコロナ前の2018年からさかのぼって時系列で整理すると、以下のようにまとめられるのではないかと考えています。NRFで行われてきた議論の変遷は、日本国内で流通小売、マーケティングを仕事にする皆さまの業務にもヒントとなるところが多いのではないでしょうか。

image
初回記事はこちら

コロナ禍で抑圧されていたデマンドチェーンが解放され、今後は改めて消費者の琴線に触れるブランドビルディングを成しえた企業こそが、「個客」から選択される。次回の記事ではそれを店舗起点で整理してみたいと思います。

X