月刊CXNo.31
“キャラクターCXの集大成” 新刊「キャラクターマーケティングの新しい教科書」が描くキャラクター活用の未来
2025/04/22
日々進化し続けるCX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)領域に対し、電通のクリエイティブはどのように貢献できるのか?電通のCX専門部署「CXCC」(カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター)メンバーが情報発信する連載が「月刊CX」です(月刊CXに関してはコチラ)。
今回は、2025年2月20日に発売された書籍「強いブランドをつくる キャラクターマーケティングの新しい教科書(翔泳社)」についてご紹介します。
次世代のキャラクターマーケティング手法を網羅した本書。著者のひとりである糸乘健太郎氏に、本を制作することになった経緯や、本を通して伝えたいことについて話を聞きました。

電通
カスタマーエクスペリエンス・クリエイティブ・センター コンテンツ・クリエイティブ3部
アートディレクター
キャラクターを活用したコミュニケーションで幅広く活躍。2021年にはテクノロジーをキャラクターにかけ合わせ顧客体験をアップグレードする「キャラクターCXソリューション」をリリース。新しいキャラクターの活用を模索し続ける。代表的な開発キャラクターに共通ポイントサービスPonta「Ponta(ポンタ)」、テレビ東京「ナナナ」、Dリーグ「DANCE-K」。
キャラクター領域×CXの集大成といえる本
月刊CX:まずは、「強いブランドをつくる キャラクターマーケティングの新しい教科書」が、どのような本なのか簡単に教えてください。

糸乘:本書は、企業キャラクターの開発方法から育成、体験設計、コミュニケーション戦略まで、キャラクターマーケティングの手法を体系的に網羅しています。私自身が開発に携わったキャラクターの成功事例を交えつつ、実例と合わせて具体的なノウハウを盛り込みました。
私と共にキャラクターマーケティングに関わってきた、クリエイティブディレクターの山本達也と2人で制作しました。

月刊CX:どのような人に読んでいただきたいですか?
糸乘:企業で広告宣伝やマーケティング業務に携わっている方や、広告会社やデザインのクリエイティブ部門・マーケティング部門に所属している方を主な読者として想定しています。
企業キャラクターは広告塔として顧客にアプローチするだけでなく、広報や採用活動、社員のモチベーションアップなど企業のあらゆるコミュニケーション活動の軸になるものだと考えています。営業やバックオフィスに所属する方まで、キャラクターマーケティングに関わるすべての人に読んでもらいたい本です。
月刊CX:本書を制作したきっかけを教えてください。
糸乘:以前、電通CXCCで「CXクリエイティブのつくり方」という本の出版に携わったときに、「自分たちの思い次第で、本はつくれるんだ」と思ったことがきっかけでした。そこから出版社に「本をつくりたい」と相談をして、企画が動き出したのです。制作期間は約2年間でした。
共著の山本もキャラクターマーケティングに長年携わっています。2人のノウハウを結集すればキャラクターのつくり方や広げ方、最新テクノロジーとかけ合わせた運用などを、一気通貫した本ができるはず。そう考えて、絶対に山本を巻き込んでつくり上げようと決めていました。2人で制作したことで、いい相乗効果が発揮できたと思います。
月刊CX:まだ発売して間もないですが、反響はありましたか。
糸乘:出版社からは、「企業キャラクターをビジネス視点でここまで体系化した本はなかった」というお言葉をいただきました。本書に掲載したキャラクターのクライアントからは、「自社キャラクターの歴史を、この本の中で振り返ることができてうれしい」というお声をいただいています。私個人としても、「キャラクター領域×CX」活動の集大成となる本ができたと考えています。
テクノロジー×キャラクターで新たなコンタクトポイントを創造できる
月刊CX:本書を読ませていただいて、タイトルにある通り“教科書”のような本だと思いました。
糸乘:ありがとうございます。キャラクターがどのようにして世の中に広がったかという結果をまとめた本は、今までにもあったと思います。しかし、本書のようにキャラクターの制作から運用までを、AIや最新のテクノロジーの活用事例まで含めて体系的にまとめたものはなかったのではないでしょうか。とりわけ、企業キャラクターに絞ったものは珍しいと思います。キャラクターマーケティングの新たな価値を示せたのではないでしょうか?
月刊CX:ここまで網羅されていると、逆に「ここまで教えてもらっていいの?」という気持ちにもなりました。
糸乘:私自身はノウハウを出し切ることに抵抗はありません。たまに「隠さないんだね」と言われることもあるのですが、隠すよりも外に共有するほうが新しい仕事に結びつくんです。それに、世の中に広くナレッジをシェアするほうが、結果としてビジネスのタネが増えていくように思います。
また、長年キャラクターマーケティングに関わってきた身として、世の中にはうまく活用されていないキャラクターが多いと感じていて。企業キャラクターをつくるときは「どのような特徴のキャラを生み出すか」にフォーカスされがちですが、「どのようなコンセプトで生み出し、どのように運用するのか」が肝心です。本書が、うまく生かされていないキャラクターの新しい活用法につながればうれしいですね。
月刊CX:通常の広報活動に加えて、キャラクターをマーケティングに活用するメリットは、どのようなところにあるのでしょうか。

糸乘:キャラクターは、吸引力が高いのはもちろんのこと、難しい話をやわらかく伝えられるといった、使い勝手の良さがメリットとして挙げられるでしょう。他社キャラクターとのコラボなど、フレキシブルな運用ができるのもキャラクターならではだといえます。また、タレントと違ってスキャンダルのリスクが少なく、うまく育てていけばブランドのアイコンとして長く活躍してもらうことができます。もっとも、育てるまでが大変という側面もあるのですが。
月刊CX:愛されるキャラクターに育てるのが大変という面はありつつも、人間よりも活用の幅が広いのは大きなメリットですね。
糸乘:ええ。近年ではAIを使ってキャラクターと自動会話させたり、ARを使ってSNSの中にキャラクターをうまく登場させたり、10年前とは活用法も大きく変わっています。テクノロジーとキャラクターをかけ合わせることで、新たなコンタクトポイントを増やすことができます。
キャラクターを商品パッケージに入れるだけで止まっているケースも少なくありませんが、もう少し新しい活用をすると、新たなターゲットを発掘できると思います。

月刊CX:人と比べて制約の少ないキャラクターだからこそ、柔軟に挑戦ができるのですね。
糸乘:おっしゃる通りです。キャラクターをつくっておけば、新技術が登場したときも新たなチャレンジがしやすくなるはずです。
キャラクターはSNSのコミュニティづくりにも効果を発揮するため、やみくもに新規のキャラクターをつくるのではなく、既存のキャラクターを大切にすることも大事です。
キャラクターの使い方は無限大
月刊CX:本書を執筆し、出版した今の感想を教えてください。
糸乘:実をいうと、10年ほど前にキャラクター制作に対してマンネリ感を覚えていた時期がありました。キャラクターを生み出してマニュアルをつくってクライアントに渡して、というある種パターン化された作業が続いていましたから……。しかし、新しい技術の登場によって、さまざまなかけ合わせができるようになり、キャラクターの活用法は本当に自由なのだと実感しました。可能性が無限にあり、今ではキャラクターを使って何ができるか考えることがとても楽しいです。
昨今ではアイドルやインフルエンサーが自身をキャラクター化するなど、活用の幅が広がっていますよね。国内だけでなく海外にも簡単に情報を広げられる世の中で、今後どのようなキャラクターが生まれてくるのか、非常に楽しみです。
月刊CX:最後に、キャラクターマーケティングに挑戦したいと考えている読者に向けて、メッセージをお願いします。
糸乘:私自身もキャラクターを使ってここまでいろいろな展開ができるのだと驚いている部分もあります。本書を第一歩にして、さらに新しいことをキャラクターで実現していきたいとも思っています。新しいキャラクターマーケティングにご興味のある方は、ぜひ本書をご覧いただければ幸いです。
【共著者の山本達也氏プロフィール】
電通
第2CRプランニング局
クリエイティブディレクター
企業の課題を起点とした戦略的な企業キャラクターの開発と活用を提唱し、クリエイティブディレクター、コピーライターとして国内外の数々の企業キャラクター開発、企業キャラクターのリブランディングやコンサルティングに携わる。代表的な開発キャラクターに共通ポイントサービスPonta「Ponta(ポンタ)」、テレビ東京「ナナナ」。
(編集後記)
今回は2025年2月20日に発売した書籍「強いブランドをつくる キャラクターマーケティングの新しい教科書」について、著者の糸乘健太郎さんにお話を聞きました。
企業キャラクターの開発から運用、そして最新テクノロジーとのかけ合わせまで体系的に網羅した本書は、キャラクターを使って何か新しいものをつくりたい方の力になってくれるはず。キャラクターの可能性を強く感じた取材でした。
今後こういう事例やテーマを取り上げてほしいなどのご要望がありましたら、下記お問い合わせページから月刊CX編集部にメッセージをお送りください。ご愛読いつもありがとうございます。