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アイデアは図で考えろ!No.5

―私とボス― アイデアでビジネスを動かす(前編)

2022/06/06

電通クリエーティブ・ディレクターのアーロン・ズー氏が2021年10月に上梓した『アイデアは図で考えろ!』を起点に、有識者との対話を通してアイデア創出の可能性を問う本連載。

今回はアーロン氏が「恩師であり恩人」として慕う電通チーフ・クリエーティブ・オフィサー(CCO)の佐々木康晴氏と対談。事業開発におけるアイデアやクリエイティブの役割・価値を語り合いました。

アイデアは図で考えろ
(左から)アーロン・ズー氏、佐々木康晴氏

クリエイティブは9割のロジックと、1割のマジックで出来ている

アーロン:『アイデアは図で考えろ!』は電通が推進しているビジネストランスフォーメーション(BX)を念頭に置きながら、いかにクリエイティブでビジネスを変革していくのかをテーマとして扱っています。佐々木さんはCCOという立場で、まさしくクリエイティビティを軸にしたビジネス変革を先導されていると思います。個人的な話で恐縮ですが、私が外資系スタートアップ企業の社外顧問を務めていた頃に佐々木さんと出会い、電通入社後もたくさんアドバイスを頂いた恩師であり恩人なので、このような場でお話できることが光栄です。

佐々木:こちらこそ、ありがとうございます。アーロンさんは経歴がユニークですし、電通とは少し違った視座を持っているところが当時から面白いと思っていました。

アーロン:ありがとうございます。今回は「クリエイティブがどのようにビジネスを動かすのか?」についてお話ししたいのですが、従来のクリエイティブがデジタルなどの影響を受けながらどんどん変容していく中で、クリエイティブにとって大事なことはなんだと思いますか?

佐々木:そうですね。クリエイティブで本当に大事にすべきなのは、「その手があったか!」という、誰もが思いつかないようなアイデアを生み出すこと。それが僕らの矜持であり、存在意義だと思っています。世の中の人たちが驚いて、振り返って、触ってみたくなって、その体験を通じて大好きになって、ずっと一緒にいる。そのような作用を強い力で生み出すのがクリエイティブの価値で、その本質はデジタル領域だろうとビジネス創造領域だろうと変わらないと思います。

佐々木康晴

アーロン:私も常に「人と被ったら終わり」と思いながらアイデアを考えています(笑)。同時に、「その手があったか!」を生み出すために欠かせないのはロジックで、自分の中ではアイデアの9割がロジックで出来ていると思っているんです。

佐々木:なるほど。クリエイターに聞くと、おそらく「私はロジックではなくマジックで考えています」と答える人が多いと思います。でも今までの仕事を振り返ってみると、確かにクリエイターたちは頭の中でロジカルな計算を無意識に組み立てた上で、最後に誰も思い付かないひねりを加えているんですよね。

アーロン:そうなんです。9割のロジックの中に、アイデアのジャンプや先見性や感動といった1割のマジックを点在させる。それはどのクリエイターもやっていることだと思うんです。

佐々木:クリエイター本人もロジックをロジックだと思っていないところがあるので、クライアントにうまく説明できなくてアイデアが通らないというケースもありますよね。その意味でアーロンさんの本は、クリエイターがこれまで説明できていなかったロジックを図式化することで、他の人にアイデアを説明する時の手助けになりそうです。

ロジック、マジック

事業開発で直面する「ブラックスワン」は、マジックで乗り越えろ!

アーロン:私は新規事業開発専門のクリエイティブディレクターを務めていますが、事業開発においては3割がロジックで、残り7割は予期せぬ「ブラックスワン」と向き合わなければなりません。私はブラックスワンを「計画的偶発性」と呼んでいるのですが、どんなビジネスを作ろうとしても方向転換は必ず起きます。だからなおさら、経営者や事業開発責任者の方々と方向性を語っていく上で、3割のロジックやセオリーが重要なんです。

事業開発

佐々木:なるほど。偶発性は従来のクリエイティブにはなかった視点かもしれない。もちろん、クリエイティブも世に出してみないと分からないところはありますが、かなり計算して作られているのでそこまで偶発的ではありません。そんなクリエイターたちが、7割は何が起こるか分からない事業開発の場に来たら、最初は戸惑うかもしれませんね。

アーロン:まさに今、電通のBXではクリエイティブが事業開発の領域に近づいていると思うのですが、従来のクリエイティブが「X」に変わる中で目指している方向性はありますか?

アーロン・ズー

佐々木:クリエイティブによるビジネス変革は2段階あると思っています。すぐにできるのは、7割は何が起きるか分からない世界で経営者に寄り添い続けること。もともと経営者の悩みに寄り添ってその考えを言葉やビジュアルで可視化することはクリエイターが得意としている領域なので、ブラックスワンに対峙している経営者に寄り添うことはすぐにできると思います。

次の段階で目指すべきなのは、ブラックスワンに直面した時の経営者の判断を、その先にジャンプさせること。マジックで跳ねさせることがクリエイターの得意分野だとすると、ビジネス領域においても一歩先の非連続な未来を具現化して見せることもできると思うんです。

アーロン:電通のBXは、ロジック/ブラックスワン/マジックという3つの要素で構成されているということですね。

佐々木:ブラックスワンのモヤモヤをはっきりさせることで、予測不能な領域を7割から6割にする。その1割で、「そんなこと、想像していなかった!」というマジックを生み出す。それが、クリエイティブがいるからこその事業開発のあるべき姿だと思うんです。

電通の事業開発

クリエイターには「未来を妄想する力」がある

アーロン:クリエイターにとって、BX領域における新たな挑戦とはどのようなものになりますか?

佐々木:クリエイターはもともと、コミュニケーションの世界で誰も想像しなかったようなアウトプットを作ることをやってきました。なぜそれができるのかというと、クリエイターは世の中の人たちが何に悩んでいて、社会がどう話題にするのかを分かっているからです。ただ、従来の広告であればキャンペーンの期間中のアウトプットに限られますが、BXになると半年、1年、2年…とスパンが長くなります。そこはクリエイターにとっての新しいチャレンジですよね。

もちろん、クリエイターには「未来を妄想する力」があります。みんなはこうなってほしいと思っているかもしれないけど、いっそこんな未来のほうがもっと面白い、という妄想力に長けています。その力をBXに生かせれば、長期間のジャンプも作れると思っています。

アーロン:おっしゃるとおり、事業開発は本当にスパンが長いんですよね。そもそも新規事業の成功率は3割程度ですし、1年では成果が出なくて社内で肩身の狭い思いをすることもあります。BXに携わるクリエイターが同じような思いをしないように、しっかりサポートしていくことも大切ですよね。

佐々木:広告は半年単位で成果を出すような世界ですから、BXクリエイティブはアウトプットまでのプロセスや向き合い方自体を変えていかないといけませんね。短期ではなく数年間寄り添い続けることでどれだけの価値が生まれるのかを認めてもらえないと、クライアントの事業変革を実現することなんてできませんから。

(後編に続く)

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